【シネマモード】仏映画ファッションから学ぶ“男と女”の胸の内…『ある過去の行方』
元妻には、すでに恋人サミールがいて、彼の息子とも一緒に暮らし始めています。ところが、マリー=アンヌの娘から聞かされたのは、意外な事実。恋人同士が暮らすには、あまりに重苦しい雰囲気を持つその家で、さらなる事実が次々と明らかにされて…というサスペンスフルな作品です。事件や犯罪ではなく、“モラル”をテーマにしたサスペンス。より、私たちにとって身近なテーマと言えるでしょう。
重苦しい雰囲気の原因は、徐々に明かされていく事実にもよるのですが、そこには長年にわたり蓄積されてきた“生活苦”のようなものも伺えます。マリー=アンヌを演じるのは、ベレニス・ベジョ。『アーティスト』で見せた、輝くような笑顔とスター性を封印し、やるせない“事実”と“現実”に疲れ果てながらも、過去を未来に変えて行こうとする強い女を体現し、2013年カンヌ国際映画祭「主演女優賞」を受賞しています。
ここで彼女が見せるのは、ファッションを楽しまない女。その心の余裕がない女とも言えるかもしれません。とりあえず、そこにあるものを掴んで着てみましたという感じ。パリジェンヌの、さり気ないファッションには定評がありますが、さり気なさや無造作を装うには大いなる計算が必要なのはご存じの通り。