【シネマモード】肝の据わった金髪美人妻に脱帽!? ゴージャスな人生から転落まで
もともと、数少ない生粋のアメリカン・ドリーム体現者を記録するドキュメンタリーとして企画された本作。運命のいたずらによって、小説家すら思いつかないような転落劇を間近に映し出す貴重な記録映画になりました。もともとは、桁外れな金銭感覚や、贅沢三昧の日々、成金趣味などを通して描かれる、あまりにゴージャスすぎる成功者の物語を、観客たちはちょっと冷ややかな、羨望と軽蔑が入り混じったような目で見つめるはずだったのでしょう。観客たちの感情を後押しする鍵となる予定だったのが、タイトルにもある“ベルサイユ”。フランスにあるベルサイユ宮殿を模したという全米一大きな個人住宅になるはずだった新居のことです。それが、皮肉にも転落の大きさを象徴するものとなりました。
もしそれが完成し、2人がそこで富にまみれて暮らす様子が映し出されていたとしたら、いまほど面白い作品になったかどうか。「他人の不幸は蜜の味」だからという意味ではありません。
苦境にあるときほど、人間の本性が見えるものだから。何と言っても “財政危機”をきっかけに露呈しはじめたシーゲル夫婦の素顔、本性というのが、この作品を味わい深いものにしているのです。