【独女のたわごとvol.6】忘れられない香りと味…土曜日のコーヒー
というさっきよりもさらに短い言葉、でもどこか温かい言葉が聞こえてくる。
彼との関係は、恋人でも愛人でも、もちろん友人でもない。陳腐で簡潔な言葉で言い表すならセックスフレンドというのが、おそらく一番しっくりくるだろう。会うのは週に一度、月に二度の時もあれば数か月空くこともある。2人の間にルールはない。あるとしたら、2人がよく行く共通のバーに、彼が必ずいるであろう金曜の夜の零時頃、私が訪れること。彼は必ずその曜日のその時間にその店にいるけれど、私は気が向いたら行く。会いたいと思ったら行く。
そしてその後は、きまって彼の家で過ごし、土曜のお昼を一緒に過ごす。それがいつの間にかルールになっていた。
会いたければ金曜の夜にそのバーに行けばいい。ただそれだけのこと。決定権は私にあるように見えるかもしれないけれど、彼にはもうひとり女がいる。最初の頃は、彼女がいるのに何故自分との時間が必要なのかしつこく問い詰めたこともある。自分は本命なのか、浮気相手なのか、どういう立場にいるのか知ろうとした時期がある。けれど、いつの間にかどうでもよくなった。
そもそも答えなんて分かりきっていたから…。
「おいしい」。