【おいしい映画】珈琲の香りが頑張る女性を優しく包み込む…『さいはてにて』
と思わせてくれます。
一方、子どもとの時間を犠牲にしながらも“子どものために”と懸命にキャバクラで働く絵里子が、自分の仕事に疑問を持ち、このままでいいのかと葛藤しながら「自分は他にできることがない」と自分の可能性を自ら閉ざしてしまう姿も、どこか共感できる部分があるものです。
――仕事、子育て。
女として、母として。
女性の抱えるもの、守るもの、悩むもののなんて多いこと!!
そう思わずにはいられません。
価値観やすべてが異なる2人が、ある事件をきっかけに、絵里子が岬にコーヒーを淹れることで互いを理解しあい友情を育んでいくシーンも印象的です。いつも誰かのために豆を煎っていた岬が、自分のために作ってくれたコーヒーを飲むこと。「ゆっくり、そっと、ていねいに」と岬に教わりながら心を込めてコーヒーを淹れる絵里子。
静かに流れ落ちる珈琲が、何か大切なことを教えてくれているようです。
この作品は、村上淳さんや永瀬正敏さんなどの男性陣も出演していますが、画面に映るのはほとんど女性キャストで、監督も台湾の女性監督チアン・ショウチョンさん。音楽も最小限に抑え、音や台詞のない空間から物語が紡ぎだされています。