【インタビュー】<前篇>野田洋次郎は 「演じる」のではなく「生きる」ことを選んだ
20代前半から半ばにかけてといまの最大の違いは「自信」。自分なりに外の世界に目を向けることができるようになってきた時期とオファーが良いタイミングで重なった。
「若い頃は“とがってた”というのはあると思います(笑)。とがってないと守れない何かがある気がしていました。この世界、染まっていくのは簡単です。ひとつのセオリーやルーティン、誰が作ったかも分からないレールに勝手に乗せられそうになることもあって、それに必死で抗う気持ちもあった。『自分は自分だ』という思いで自分の“純度”を守ろうとしていた部分もあったし、それはよかったといまでも思ってるけど、一方で以前のように力をこめずとも、自分がやればそれは自分色になるんだというある種の自信がこの10年ほどで身についたのかなと思います。もう少し広い視野で周りのことも自分のことも見られるようになって『面白いならやってみようか』と外に向けて毛穴を開いていた時期にちょうど、お話をいただけたのも大きかったですね」。
もちろん、提示された物語、そして主人公への共感も引き受けた大きな理由のひとつ。松永大司監督が漫画の神様・手塚治虫が死の直前まで綴っていた日記の最後のページに“トイレのピエタ”とあったのをドキュメンタリー番組で見て、アイディアを膨らませていった。