くらし情報『【どちらを観る?】奇才×ファンタジー『ラブリーボーン』&『Dr.パルナサスの鏡』』

【どちらを観る?】奇才×ファンタジー『ラブリーボーン』&『Dr.パルナサスの鏡』

一方、『Dr.パルナサスの鏡』は、映像至上主義を嬉々として潔く貫いた趣き。砂糖菓子のようにラブリーなギリアム監督入魂の色彩世界で語られるのは、不死の魂と引き換えに、自分の娘を悪魔に差し出す契約を結んでしまった男・パルナサス博士のドタバタ劇。抜き差しならない状況に陥った博士の物語に、やはり抜き差しならない事情を抱えた謎の男・トニーの物語が絡んでくる。トニー役のヒース・レジャーが撮影中に急死し、同役をジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの3人が引き継いだのはいまや周知の事実だが、それを成立させているのがギリアム流映像至上主義の極みとも言うべき必殺アイテム、魔法の鏡。通り抜けることで自らの欲望の世界を体験できる魔法の鏡“イマジナリウム”が物語の中心にどんと据えられ、一連の騒動を一層ダイナミックに、さらにはドラマティックに色づかせるのと同時に、ヒースがジョニーに、はたまたジュードやコリンに変化するマジックに説得力を持たせながら映画の力を見せつけている。ショッキングなストーリーが生んだファンタジー映像を楽しむか、めくるめくファンタジー映像が生んだドラマティックなストーリーを楽しむか。

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