2021年9月19日 12:30
【レビュー】他者の痛みと向き合った先に何があるのか『君は永遠にそいつらより若い』が投げかけるメッセージ
《text:西森路代》
津村記久子のデビュー作を原作に吉野竜平監督によって映画化された『君は永遠にそいつらより若い』が公開中である。本作は、就職も決まって後は卒論を残すのみという時期をすごしている大学生のホリガイ(佐久間由衣)を中心に描かれた物語だ。
ホリガイは飾り気がなく、まわりからは変人扱いされたり、今も処女であることを周りの男子学生から指摘されたりもしていて、それに対して「もっとカジュアルかつポップに言えないかな」「ポチョムキンとか」と言い返したりもしている。そんなホリガイがひょんなきっかけから一学年下のイノギ(奈緒)に出会って、様々なことが変化していく。
こうしたあらすじを読めば、ホリガイが自分の自意識と、どうつきあっていくかということを描いた作品だと思うかもしれない。大学生のモラトリム期間の葛藤の物語としても成立しうるのだが、この映画は、また別の面も持っていて、そこが筆者がこの映画に強く惹かれる所以でもある。
ホリガイは、児童福祉士として地元での就職が決まっているが、そこには、一言では言い表わせない理由があった。それは、高二のときにテレビを見ていて知ったある事件に起因していた。