【シネマモード】今年のアカデミー賞を騒がせた、女王の“ドレス”とは?
女心を忘れないけど、仕事は男勝りという人が初の女性オスカー監督になったというあたりに、いまという時代を感じます。しかも、ヘアスタイル、アクセサリーで大仰に飾り立てるのではなく、内面からあふれ出るパワーや自信を、大粒ダイヤにも勝るアクセサリーにして、堂々たる佇まいでレッドカーペットや会場を闊歩。私は授賞前からあなたの頭上に、王冠が見えていましたよ。
ビグロー監督は、年相応(58歳)にシワもありますが、若々しく完璧と思われる容姿を持つ女優たちの間にいても、美しさにおいて全く引けをとっていませんでした。というか、個人的には、年輪を重ねた人間的なふくよかさ、滲み出る知性、慈愛溢れる母性に他の誰よりも魅了されました。外見もすこぶる素敵なのですが、それと同時に彼女が作品にこめた情熱や信念、そこから映し出される人間性のすべてが彼女の魅力と呼応して、あの日、輝きとして現われたよう。わかってはいたけれど、人の美しさは、着ている服だけの問題じゃないなと改めて感じる授賞式となりました。つまり、今年のレッドカーペットで、最もうっとりさせられたのは、どのブランドのドレスでも、どのデザイナーのドレスでもなく、キャスリン・ビグローが纏っていた“自信とパワー”という名のドレスだったというわけです。