TIFFインタビュー 『海炭市叙景』南果歩×谷村美月×竹原ピストル×熊切和嘉
谷村:説明するのが難しいんですが…(苦笑)。これまで私が参加してきた作品では、相手の役者さんがいようが映っていまいが、目線だけで芝居をする――つまり、お芝居の中でお芝居をしているような、そこに“ある”と見せかけるようなことが多かったんです。そういう中で熊切監督は、どれだけ時間がかかっても、そこに必要なもの、あるべきものを実際に用意する。逆に“素直にリアクションする”ということを難しく感じる現場でした(笑)。でも、そこで実際に朝日を見て「あぁ、人は実際に朝日を見たら、こういう反応をするんだな」というのを知ることができた。それは役者としてだけではなく、谷村美月としても。そういう状況にならないと自分は分からない、そういう発見がたくさんありました。
――南さん、竹原さんにも改めて作品中、もしくは撮影で印象に残っている部分や全てを終えての思いなどを教えていただけますか?
南:映画の中の何てことない電車の乗客の表情や、坂道を上がっていくうしろ姿…そういう日常のひとコマが随所にあるんですが、それがすごく好きです。
同じ街に住んでいて、顔見知りだったりそうでなかったり、道ですれ違ったり。人生は交差しているようで、実は人とはなかなか交じり合えない、そんな真理が何気ないショットに出てくるんです。