2014年10月8日 12:00
記憶の脳科学 (1) 低下したワーキングメモリ(脳のメモ帳)の機能は強化できるのか?
脳科学は今、もの凄い勢いで進んでいる。アメリカの著名な脳科学者が約20年前に「脳科学は物理学で言えば15~16世紀。まだまだ初歩的な段階」と言っていたのに、「これまで科学で答えられなかった領域に今、どんどん突っ込んでいる。非常に面白い段階」とジャーナリストの立花隆氏は興奮を隠さない。
脳科学の中で今もっともホットな分野である「記憶」について、第一線の科学者らが最新の研究成果を一般向けに話す第17回自然科学研究機構シンポジウム「記憶の脳科学~私たちはどのようにして覚え忘れていくのか」が9月23日、東京で開催された。その内容を数回に分けて紹介しよう。
○行動しながら記憶する - ワーキングメモリの容量は3つ!?
多くの人が日常生活で不便を感じ、役立てられることがあるのでは? と感じたのが大阪大学・苧阪(おさか)満里子教授の「ワーキングメモリ:脳のメモ帳」の講演だ。
記憶というと「暗記能力」を思い浮かべがちだが、日常生活で暗記に集中する場面はそれほど多くない。
それよりもスーパーに買い物に向かいながら夕飯の材料を覚えておく、など何かをしながら短時間だけ記憶することのほうがずっと多い、と苧阪教授はいう。