アンタレス・ロケットの打ち上げ失敗とソ連からやってきたロケットエンジン (2) 40年前に生産されたソ連製ロケットエンジンNK-33

○ソ連製ロケットエンジンNK-33
この原稿を執筆している11月18日現在、まだ失敗の原因は断定されていない。しかし、アンタレスの第1段に使われているAJ26というロケットエンジンが原因ではないか、と疑われている。
AJ26は、ソヴィエト連邦で開発、製造されたNK-33というエンジンを輸入し、アンタレス用に改修したものだ。アンタレスの第1段には、AJ26が2基装備されている。
NK-33が製造されたのは今から約40年ほども前のことだ。設計が、ではない。今回のアンタレスに使われていたNK-33が、40年前に製造されたものなのだ。
1960年代、ソ連は米国のアポロ計画に対抗し、人間を月に送り込むためにN1(エヌ・アジーン)と呼ばれる超巨大ロケットを開発したが、NK-33はその過程で生み出された。
N1開発の先頭にいたのは、ソ連宇宙開発の父とも呼ばれる人物のセルゲーイ・コロリョーフであった。N1開発がフルシチョーフ首相から許可されたのは1964年のことだったが、コロリョーフは1958年ごろから、すでに構想を暖めていたとされる。
N1は全長105m、最大直径17.0mと巨大で、打ち上げ時の質量は274tもあり、打ち上げには強力なロケットエンジンが必要であった。