松田直樹さんの想いを引き継ぎ、J1初挑戦の松本山雅FCをけん引する田中隼磨
指揮官の青写真をピッチ上で体現する役目も担う田中は、マリノス戦後にこう語っている。
「この程度じゃマツさんは褒めてくれない。もっと、もっと熱いプレーをして認めてもらわないと」。
誰よりもサッカーを愛し、究極の負けず嫌いを自任していた松田さん。パソコン内には、声を大にしてこう宣言している音声データが残っている。
「サッカーが大好きというヤツには、絶対に負けたくないんですよ」。
どちらがサッカーを好きなのか――。競い合う機会は永遠に訪れなくなったが、だからこそ田中は1分1秒を無駄にすることなく突っ走ると心に誓っている。
「僕自身もサッカーに対する思いは強い。すべてをピッチの上で表現していきたい」。
時の流れとともに、松田さんの薫陶(くんとう)を直接受けた松本山雅FCの選手は3人となった。それでも彼らと、そして田中を介して故人の魂は引き継がれる。2015年3月7日。豊田スタジアムで午後2時にキックオフを迎える古巣グランパス戦から、田中と松本山雅FCの新たな歴史が幕を開ける。
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○筆者プロフィール: 藤江直人(ふじえ なおと)
日本代表やJリーグなどのサッカーをメインとして、各種スポーツを鋭意取材中のフリーランスのノンフィクションライター。