「チームメイト」について知りたいことや今話題の「チームメイト」についての記事をチェック! (1/7)
厳しいコーチに代わってからチームは強くなったけど、試合前に腹痛を起こすようになった。怒鳴ったり選手を番号で呼ぶこともあるし、こんなチームにいさせたくない。近隣の弱いけど楽しんでいるチームに入れたい。本人も「怒鳴られるとチャレンジできない」と言っているのに、サッカー経験者の夫と実兄が反対する。我慢の先に何があるの?というご相談。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとに、お母さんにアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<息子が周りに酷いこと言われてるのに、「〇〇(息子)も言ってるからお互い様」と言うコーチに不信感を抱いてます問題<サッカーママからの相談>こんにちは。小学5年になる息子のことでご相談させていただきます。息子は幼稚園の頃から現在所属している少年団にいます。サッカーが大好きで誰とでも仲良くなれるそんな子でした。3年生になり、コーチが変わりました。それまで中学生を主に教えていたコーチということもあり全体的に強くなってきましたが、同時に厳しい(から)と仲間が辞めていく姿もありました。4年生になり、試合前に腹痛を起こすようになったので相談した際も「メンタルが弱い」と言われたのですが、本人の続けたいという意思もあり、前向きにとらえ頑張らせていました。4年の後半になると息子に対する要求がさらに高まり、怒鳴る姿が見られました。ひどいときには番号で呼び、私自身はもうこの指導者の元でサッカーをやってほしくないと思い、夫にも相談していました。近所にある別の少年団は、試合に勝ったことのない弱小と言われているチームですが、みんな優しく楽しくプレーをしています。息子にはこんなチームでやってほしいと考えていますが、「先々をみたとき今の指導者のほうが良い」と夫は反対しています。本人は「怒鳴られると自分のやりたいプレーにチャレンジできないから、自分のやりたいことがやれるチームなら行きたい」と話しています。ただ、サッカー経験のある夫や兄からは「やりたいことをやるには味方の強さも必要だから耐えるべきだ」と言われます。私にはサッカー経験がないし、感情的になっているだけなのかもしれません。でもあと1年半我慢した先に何があるのか私にはわかりません。現在はチームの平日練習は休み、スクールに週2日通い、週末の練習と試合には参加しています。このまま今のチームにいるのが正解なのでしょうか。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。メールの文章だけでの判断なので、理解が届かない部分があるかもしれませんがどうぞご理解ください。結論から申し上げますと、息子さんがしたいようにやらせてあげてください。その理由を二つほどお伝えします。■息子さんの判断が正解委縮させる指導者の下にはいない方が良いまず1つめ。息子さんが口にした「怒鳴られると自分のやりたいプレーにチャレンジできない」という主張は至極もっともです。サッカーに限らず、スポーツの指導者から怒鳴られたり、強い口調で叱られれば、子どもは委縮します。「失敗したらどうしよう」「コーチの言うとおりに出来なかったらまた怒鳴られて怖い」と震え上がります。そうなると「失敗しないようにしよう」と無難なプレーしか選択しなくなります。サッカーで無難なプレーというのは、例えば横パスやバックパス。それらと違うのが前線にフィードするパスですが、ゴールにつながる前線へのパスは、相手に厳しくマークされるため出す側も受ける側も難易度は高くなります。よって指導者の質が少しずつ上がってきた近年は、子どもたちにチャレンジしてもらうためにも指導者は怒鳴ったり、怒ったりしないことは当然のように言われています。ミスを恐れてバックパスばかりしていれば、技術は全く上がらないからです。そういったことを息子さんは知っているのかもしれません。サッカーが上手くなるには、難易度の高いプレーに挑戦しなくてはいけない。そのためにも、自分を委縮させるコーチのもとにはいないほうがいい。そのような判断です。息子さんがせっかく良い判断をしているのですから、お母さんだけでもまずは後押ししてあげてください。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■腹痛は心理的なプレッシャーがある環境への拒否反応2つめ。冒頭で申し上げたように、相談文のみでの判断なのでもしかしたら私の見立てが間違っているかもしれません。が、メールを読む限り、今現在担当してもらっているコーチは指導をよく学んでいないようです。怒鳴る指導がよくないのは明白ですが、子どもの心のありよう、つまり初歩的な児童心理を理解していないと思われます。例えば息子さんが試合前に腹痛を起こすようになった際「メンタルが弱い」と決めつけています。子どもがこのような症状をきたす場合は、心理的にプレッシャーがあるなど、その環境に拒否反応を示しています。そういったことは数年でも子どもに向き合っていれば、どこかで入れられる知識や情報です。いまどき、子ども側のメンタルの弱さに結び付けているようでは考え方が古すぎます。どうかアップデートしてもらいたいものです。本来ならば、指導者と保護者とで学び合ってお互いに成長できる機会を持っていただきたいですが、子ども側は待ったなし。息子さんがチームをかわりたいというのであれば、一日も早くそうさせてあげましょう。■やりたいプレーの実現に味方のレベルは影響するが、威圧に耐えてまで優先するものではない加えて、お父さんをいかにして説得するかが肝要です。お父さんのおっしゃる「やりたいことをやるには味方の強さも必要だから耐えるべき」は、なんとなくですが理解できます。サッカーはチームスポーツですから、パスを受ける側や出す側の技術レベルの一致はある程度必要だという見解でしょう。しかしながら高学年になると、徐々にそこまでの差はなくなってきます。暴力的な指導に耐えてまで大事に確保すべき環境とは私には思えません。暴力的な指導によって生まれるリスクのほうにより注目してもらいたいです。■やる気のメカニズムがある行動の先に良いことが予測されないとやる気は出ないある行動をとろうとするときに、その行動の先に快感(良い気分)が予測されるからこそ、私たち人間は「やる気」がわきます。例えば、一度机の上を片付けたら良い気分になった。達成感があるからです。この良い気分をつくっているのはドーパミンで、分泌するドーパミン神経の束は、報酬系、快感系ともいわれます。この「片付けをする=良い気分」のマッチングが繰り返されると、その結びつきは強化されます。サッカーであれば、こうやって練習したら上手くなるに違いないと思えばやる気が出ます。過去に「こうやったらできた」といった経験がもとになるのも同じ構造です。その際、その行動と快感を結びつける働きをするのが、左右の大脳半球の下側にある「線条体」という神経核だそうです。この線条体、他者に褒められたり認められると活発に動いて意欲をもたらしてくれます。逆に、怒鳴られたりすると線条体は動かなくなりやる気はつぶされてしまいます。以上の脳科学的根拠をもって、お父さんを説得する材料にしてください。その視点から、息子さん本人が言ったように怒鳴られずにのびのびと楽しくプレーできる環境を選択したほうがいいと考えます。■自分の気持ちを言語化できている息子さんはGood(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)息子さんは自分の気持ちをきちんと言語化出来ていて、さすが高学年だなと感心しました。このように彼が意欲的に取り組めていることと、やる気のメカニズムをぜひお父さんに伝えてください。ご夫婦がともに気持ちよく息子さんをサポートできることを祈っています。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。
2024年06月12日普段はみんなを盛り上げるような声も出せて、プレーでも周りから頼りにされる選手だけど、急にイライラ仕出しチームメイトに酷い言葉を投げかける選手。チームメイトもコーチも腫れ物に触るように接している。思春期だから?このような選手への接し方に悩む。というご相談をいただきました。今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上のあらゆる年代の子どもたちを指導してきた池上正さんが、海外視察で目にしたエピソードやご自身の体験を踏まえてアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<相手のラインを崩し、スペースを作って前に運ぶ動きコンビネーションを理解させるにはどうしたらいい?<お父さんコーチからの質問>池上さんのコラムなどをいつも拝見しており、日々の活動の参考とさせていただいております。今回は当少年団に所属するU-12の選手の件でアドバイスをいただきたく、ご連絡をいたしました。この選手は調子のいいときはみんなを盛り上げられるような声も出し、よく走り、点も決めてくれる、選手たちからは頼りにされる選手です。私たち指導者も非常に楽しみな選手なのですが、気分の浮き沈みが激しい選手です。(試合、練習関係なく元気だったにも関わらず急にイライラし始めたり、チームメイトに気に入らないことをされると急激に不機嫌になり、倫理に反するような行動、言葉を投げかけるなどがある)。直接の担当コーチはその選手の機嫌をとるような言葉をかけたり、チームの雰囲気が悪くなっていてもその選手を試合で使い続けるなど、腫れ物に触るような対応で私からすれば「そこまで気をつかわないといけないかな?」と思う対応をしています(効果については不明)。私がその学年に帯同した場合は、その選手が倫理的に問題がある行動の場合は本人とその件について話を個別でする(怒るのではなく、そのことがいい行動かどうかを考えさせるようにしています)などの対応をしています。また、試合や練習中にイライラしたり、不貞腐れ始めると一旦、冷静にさせるためにメンバーから外し、少しその選手1人の時間をつくるなどさまざま試しているのですが、効果があるのかどうかが不明です。一旦乱れ始めると周りの選手もとても気を遣っている姿があります。何とかしていい方向に持っていきたいのですが、どうすればよいでしょうか。年齢的にも思春期の入り口にいると考えられますし、難しい年齢であることも理解しています。私としてはサッカーを存分に楽しんでほしいですし、仲間たちからも調子のいいときは頼られているだけに残念でなりません。これまでいろんな年代の選手に指導してきた池上さんなら、このような選手にどう接しますか?アドバイスをお願いいたします。<池上さんからのアドバイス>ご相談ありがとうございます。小学6年生は「前思春期」という時期ではありますが、この選手の行動を思春期が原因としてよいかどうかは意見が分かれるところでしょう。■ドイツで目にした、相手選手へのイラつきを鎮めさせる方法要因がどこであれ、このようにすぐキレてしまう癖は子どものうちに早く直したほうがいいでしょう。このような事象を、イングランドなどの指導者たちは「bad habit」(バッド・ハビット=悪癖)と呼び、見つけたら早々に修正するようです。昨夏に訪ねたドイツで、こんな場面に遭遇しました。小学生の試合を視察したときのことです。プレーしている中でとても上手いセンターバックの子がいました。危ない場面では必ず相手を止めていました。ボールを取られた相手はまた奪い返そうとしますが、そのCBはボール扱いが上手く視野もあるのでできません。相手は徐々にイライラして、激しくチャージし始めたのです。ファウルを取られてもおかしくないようなマークが続くなかで、そのCBはとうとうやり返しかけました。その瞬間、コーチが大きな声でその子の名前を呼びました。ベンチのほうに来るよう手招きし、やってきた子をくるりとコート側に向けさせると、その背中を抱きしめながら試合を見せました。しゃがんで頬を近づけ、指差ししながらアドバイスもしていました。10秒ちょっとの短い時間です。その子が落ち着いたと見極めたのでしょう。コーチは「さあ、行っておいで」というように背中をトントンとたたいて、コートに送り出しました。私は感心しました。なるほど。後ろから抱きしめるのかと。とてもいいものを見せてもらった気がしました。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■年齢にかかわらず良くない振舞いは指導者がきちんと伝えた方が良いさて、ご相談者様の話に戻りましょう。小学6年生であれば、自分のサッカーキャリアを思い描いたり、目標を持てる年齢です。より高みを目指せるよう、やってはいけないこと、良くない振舞いなどを指導者がきちんと伝えましょう。それは思春期だからとかではなく、対象が低学年でも同様に対処してください。■対応方法:1on1で個人的な話として伝えることでは、どうするか。前述したような話を1on1でしっかり伝えましょう。みんなの前で言うのではなく、その子と二人になれるところで、あくまで個人的に話します。そのような時間を確保してください。もちろんすぐには修正できないでしょう。その後、試合中や練習中に同じように感情的になったり、我を忘れる姿を見かけたら、呼び寄せます。そこで「今やっていてどう?」「今どんな感じ?」と話しかけます。それでその子には伝わるはずです。コーチの短い言葉が「今、君はどんな状態ですか?それで良いですか?」という問いだと、その子は受け止めるはずです。そこで気持ちが落ち着いたら、またコートに出ていけばいいのです。■話すときに気を付けること「絶対ダメ」など頭ごなしに否定しない選手と話すときにもっとも気をつけて欲しいのは、「絶対ダメ」などと頭ごなしに言わないことです。ありがちなのは「キレるなら試合に出さない」と罰則規定を作ることですが、それもよくありません。試合に出たいからキレないようにするのは、道理が違います。冒頭でお話ししたドイツのコーチのような姿を、日本では残念ながら見かけません。選手が感情を抑えられなくなると、「もう出ろ」と試合から外すことが多いようです。もしくはそのままプレーさせながら「落ち着け」と声を掛けます。なかにはコーチも同じように感情的になっている場合もあります。■腫れ物に触るような扱いは不要小学生年代に特別扱いしないこともしくは、逆に腫物に触るように遠慮がちに言うか、黙ってみていることもあります。ご相談者様が書かれている他のコーチの方々と同じです。このような態度は、その子にとっても、他の子どもたちにとっても決して良くありません。よくない扱いのツケはあとできます。小学生のときにチームの中心で活躍していた子どものなかには、上述したような扱いを受けてしまい、天狗のまま中学生になります。私はそんな子たちを数多く見てきました。そういう中学生を変えるのはとても大変です。よって、どんなに上手でも、チームの中心であっても、小学生時代に特別扱いしてはいけません。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■変化を促すために、撮影して本人に見せるのも一つの手(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)以前、すごいドリブラーに出会ったことがあります。そこで中学生とやらせました。すると1か月もすると、中学生のディフェンスを抜けなくなりました。小学生のうちにそういうことを体験させる必要があります。小学生のチームだと自分ひとりでやってしまい、フリーの子にパスしない子どもをよく見かけます。そんなときはこんな話をします。「フリーの子にパスしたら?そうすれば、みんな嬉しいよ。サッカーはチームでやるものだよ」そういった上手い子は、ミスした子を責めることもあります。そのときも「みんなでやるスポーツだ」と言い続けることが重要です。それがチームのスローガンになれば、パスしなかった子も変わっていきます。その子の様子をビデオで撮って見せるのもいいでしょう。胸でトラップするとき、手を広げてトラップしようと伝えるのですが、どうしてもできない中学生がいました。注意しても「僕は手を広げてる」と言い張ります。パスを出さずひとりでドリブルする子でした。手を広げないと審判からはハンドに見えることがあるので習得してほしい技術です。よってビデオに撮って見せました。観念したような様子でしたが「これは僕じゃない」と言いました。そんな子でも、少しずつ変わっていき、次第にパスができるようになりました。指導者によって選手は変わります。子どもを伸ばしてあげてください。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2024年05月10日人として健全に生きていくために必要な「自己肯定感」。『子ども・若者白書』(平成26年版/内閣府)によると、日本の若者(13歳~29歳)で、自分自身に満足していると答えた人の割合は45.8%と、半分以下にとどまっています。先ごろ、『サッカーがもっと楽しくなる40のヒント ~なぜカメはウサギに勝てたのか~』を出版した、チームビルディングでおなじみの福富信也さんは「自分との約束を守り続けること。それこそが自分自身を大切にしている姿だ」と発信し、自己肯定感につながるヒントを述べています。今回、横浜市港北区で活動する大豆戸FCジュニアユースの選手に対し、福富さんが「チームビルディング~サッカーがもっと楽しくなる40のヒント」をテーマに、ディスカッション形式のセミナーを行いました。サッカーをもっと楽しむために、心身ともに健やかに成長していくために、知っておきたい「自己肯定感の高め方」についてのヒントをお伝えします。記事の最後で今回のセミナーで使ったシートを紹介しますので、チェックしてみてください。(取材・文鈴木智之)セミナー終了後、参加した選手たちと福富さんで記念写真<<前編:スタメンorベンチ、チームレベル他人との比較ではなく自分自身に矢印を向けることがサッカーの成長にもつながるサカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■チームメイトとの雑談が大事な理由セミナー開催にあたり、選手たちは事前に本を読み、その上で大事だと思ったポイントとその理由、サッカーと日常生活のどんな場面で大事になるかを書き出してきました。(※使用したシートを記事の最後に紹介します)日々の自分の行動を振り返りながら、ダメな部分さえもチームメイトにさらけ出す。そして、チームメイトから率直なフィードバックやアドバイスを受ける。そんなグループディスカッションを行いました。悩みやダメなところを仲間に「自己開示」すること、それに対して仲間から率直な「フィードバック」を受けることはかなり勇気がいることです。そのときに心がけることとして「教えてくれてありがとうという気持ちを持ちましょう。言い方に気をつけて、前向きになれるような意見を言ってあげよう」と声をかけました。「チームスポーツにとって、自己開示とフィードバックはすごく大事です。そういうコミュニケーションが足りないチームはお互いを深く理解し合えません。良いチームはみんなで雑談レベルで自己開示とフィードバックをしていて、常に深いレベルで繋がっています。少しでもこの時間が、良い時間になればうれしいです」ディスカッションは大いに盛り上がり、福富さんが時間を延長するほど、活発な意見交換が行われていました。■自分自身を知ること、相手に知ってもらうために大事な4つのポイントディスカッションについて、福富さんは「ジョハリの窓」を参考に、4つのポイントを紹介します。それが「公開」「盲点」「秘密」「未知」という観点です。・自分も知っている、他人も気づいている。「公開」の部分。・自分は知らないけど、他人は気づいている。「盲点」の部分。・自分は知っているけど、他人は気づいていない。「秘密」の部分。・自分も知らない、他人も気づいていない。「未知」の部分。「『秘密』にしていることを仲間にさらけ出してみましょう。例えば、勇気をもって仲間に自分の弱みを伝えてしまうと気が楽になります。仲間からのサポートも受けやすくなります。そして、ディスカッションによって仲間からフィードバックやアドバイスをもらうと『盲点』が減って、新しい気づきや発見が生まれます。秘密にしていたことをさらけ出す(自己開示)、自分では気づかなかった盲点を指摘してもらう(フィードバック)。そうすると、『自分も知っている、他人も知っている』という『公開』の部分が増えていきます。チームメイトの深い部分までお互いに知っているのは大事なことです」サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは■「自分との約束を守る」ことが「自己肯定感」につながるさらに、自己肯定感を高めるためのポイントを教えてくれました。それが「自分との約束を守ること」です。「皆さんは自分との約束を守っていますか?みんな、友達との約束は守ると思います。守らないと、友達に迷惑をかけてしまうからです。でも『今日からこれをやるぞ』など、自分と交わした約束を破る人はとても多いんです。誰にも迷惑がかからないからいいやと思っているかもしれないけど、自分に迷惑がかかっています」さらに、こう続けます。「約束を守らない人は嫌いですよね?それと同じで、自分との約束を破っていると、そんな自分のことをだんだん嫌いになっていくんです」自分との約束を守ることで、自分との信頼関係ができます。自分自身と良い関係性を築くことこそが「自己肯定感」につながっていくのだとも思います。■自分がコントロールできることにのみ意識を向ける福富さんは「スタメンや勝利、天気など、自分でどうにかできないものではなく、自分ができることに目を向けましょう」と言葉に力を込めます。「努力して、スタメンになる可能性を上げることまではできますが、最終的には監督が決めることであって君たちの仕事ではない。試合の勝ち負けについても同じ。どれだけいい試合をしても勝てない日はあります。それでモチベーションを上げたり下げたりするのはもったいない。限りあるエネルギーだから、自分がコントロールできることにのみをパワーを使いましょう」■チームメイトと話し合うことで今まで知らなかった自分の良いところに気づくことができたグループワークをする選手たちセミナー後、選手たちに話を聞くと、次のような感想が飛び出しました。「チームメイトと話し合って、自分のいいところや知らなかった自分に気づくことができました。これから自分がどうしていくのかを考えるきっかけになったので、すごく良かったです」「日常とサッカーがつながっていることを知りました。しっかり日常から変えていって、サッカーの試合でもいいプレーができたらなと思います。試合中、流れが悪いときに、ポジティブな声掛けをして、チームを助けていきたいです」「自分に必要なことを、深く考えることが大事だと気づくことができました。いままで、自分について深く考えたことはなかったのですが、自分と向き合うことが大事なのだと思いました」自分を知り、自分との約束を守ること。その結果、信頼できる自分になり、自信が生まれ、自己肯定感も高まっていきます。そうすると何事も積極的に、前向きに取り組むことができるようになるでしょう。大豆戸FCの選手たちは、今回のセミナーでたくさんの気づきを得たようでした。▼今回のセミナーで使ったシートはこちら行動目標が設定できるチームミーティング準備シートサッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは
2024年01月12日チーム内に存在するヒエラルキー。みんなレベル差はないのに、同じミスでも優しく言い返せない息子だけチームメイトに怒られる。コーチからも息子のせいにされた。サッカー経験者の父から見ると息子の方が周りよりセンスもあるし基礎技術も高いのに、日に日に自信をなくしている息子が不憫。他の親は、自分の子がターゲットにならないので何も言わない。6年生だけど無理やりでも辞めさせるべき?とのご相談。スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見やご自身の体験をもとに、悩めるお父さんにアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<息子に意地悪する子に注意したらコーチに叱られた、わが子をいじめる子に親が問いただすのはダメなのか問題<サッカーパパからのご相談>小学6年生の息子は町のサッカークラブに所属しています。チームはそこまで強くないのですが、最後の大会になりチーム内のヒエラルキーが強くなり、真面目で優しく言い返せない息子はチームメイトにいつも怒られています。長年サッカーを経験してきた私からすると、みんな対してレベルの差はなく、基本技術はむしろ息子の方がうまかったりします。ですが、同じようなミスを犯しても息子ばかりチームメイトに怒られ、挙げ句の果てにコーチまでも息子のせいにます。「いつ辞めても良いよ」と伝えていますが、悔しいから続けると健気に言っています。しかし、練習や試合では日に日に自信をなくして、ゴルフでのイップスのように簡単なキックもミスしてしまい、状況は悪化してきているように思えます。無理にでも辞めさせたい気持ちと、コーチに話をすべきか、相手の親に話すべきか悩んでます。親から見ても息子は良いセンスを持っていてサッカーも好きなのに、かわいそうでなりません。私の経験のもとに息子が決してみんなより劣っていないことを伝えても信じてもらえず、「俺なんか下手だから」と、周りに言われるのは仕方がないと無理やり納得している様子です。他の親も、自分の子がターゲットにならないのでいじめられ役がいてラッキーぐらいにしか思っていないみたいです。無理やり辞めさせた方が良いのでしょうか? なまじ我慢強いため心配です。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。ご相談メールの説明だけなので、どこまで踏み込んでお話すればいいのか迷いますが、私の個人的な見解としてお聞きください。最後にお書きになった「無理やり辞めさせた方が良いのでしょうか?」が相談文で唯一の質問なので、まず最初にそれに対してお答えします。■小6なら自分で様々な判断がつく年齢、最終的には本人に決めさせよう結論から言えば、暴力指導や精神を病むような苛烈なパワーハラスメントがない限り、親が無理やり辞めさせてはいけません。最終的には本人に決めさせてください。ただし小学6年生といえば、自分でさまざまな判断がつく年齢です。身を置くサッカー環境が自分にとって良いものかどうか。そこに向き合う手助けをしてあげてください。例えば、以下のように話してはどうでしょうか。「サッカーをしていて楽しいかな?」と尋ねてあげてください。楽しく前向きにサッカーができる状況でなければ、上達もしません。息子さんに「いつ辞めてもいいよ」と声掛けしているのは良いことですが、彼の気持ちや考えをさらにじっくり聞いてあげましょう。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■息子さんの自己肯定感の低さは問題親子ともに価値観の転換が必要かもそのうえで、お父さんはどう思うのか意見を伝えてください。ご相談文を読むと、息子さんがチームメイトから怒られているけれど「息子のほうがうまかったりする」とあります。加えて「息子は良いセンスを持っていてサッカーも好きなのに、かわいそう」とも書かれています。しかし、うまくなかったり、センスがなければ仲間を怒っていいわけではありません。そう考えると「俺なんか下手だから」「周りに言われるのは仕方がない」と話す息子さんの自己肯定感の低さが、私はとても気になります。息子さんがそういったとき、お父さんは「そんなことはないよ。おまえは長年サッカーを経験してきたパパからすると、みんな大してレベルの差はなく、基本技術はむしろおまえのほうがうまいよ」と言って励ましているのではないでしょうか。もし間違っていたらごめんなさい。ただ、この分脈でいくと、そんなふうにお父さんが答えている姿が目に浮かぶのです。もしそうであれば、父子ともに、価値観の転換が必要と考えます。■このようなとき、親が絶対にやってはいけないこと「俺なんか下手だから」子どもにそう言われたら、以下のような要素の話をしたほうがいいと思います。「上手い下手は関係ないよ。ミスは誰だってするだろう。サッカーはミスするスポーツだよ。みんなで助け合ってプレーするのがサッカーだろう」と。ぜひ視点を変えてください。次に、絶対やってはいけないことを伝えます。それは、息子さんに文句を言うチームメイトの親にお父さんが話をすることです。相手の「親に話すべきか」とありますが、話すべきではありません。言ってみれば、子どものいさかいです。しかも、サッカーというスポーツの場に起きていることです。息子さんに自分の力で解決するにはどうすればいいかな?と尋ねて、考えさせてください。そこで彼が「我慢するしかない」と言えば、そこでお父さんの意見を言ってください。スポーツマンシップに欠けているのは仲間なのだとコーチに自分で訴えることもできるはずです。■中学、高校になっても子どもの困難に親が対応するのか(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)加えて、息子さんに「かわいそう」と同情するのは一瞬にしてください。親からすれば、大事なわが子がそんなふうに傷つけられているさまを見るのは辛いことでしょう。が「かわいそう」だけでは、息子さんの成長につながりません。今後、中学生、高校生になって、大人になる段階で大なり小なりさまざまな困難が待ち受けています。かわいそうだからと、親がその都度わが子を傷つけているかもしれないと、それを正すよう他者に申し入れをし続けますか?この連載でも何度か書いていますが、親は何かに悩んでいる子どもに「それは辛いね」「嫌だね」と共感してあげるべきです。ただ、共感しても、子どもに「同化」してはいけません。親が子どもと同じだけ傷つき、右往左往してしまうと、子どもはその苦難を糧に成長できません。■仲間に反論したい気持ちがあるなら親がリミッターを外してあげてご相談分の最後に「なまじ我慢強いため心配です」とあります。ここについても、ぜひ見方を変えてください。この分脈で言うと、息子さんの「我慢強さ」は理不尽なことに対する「耐性」ではないでしょうか。考えることをやめている。諦めているのではないか――そうとらえられないでしょうか。それは、息子さんのやさしい性格によるものなのかもしれません。それによって、自分の感情や主張を表に出せない、言語化できないのかもしれません。文句を言われたら言い返したい。でも、下手のくせにと言われるかもしれない。下手なやつは文句を言ってはいけない――そう考えているのかもしれません。そのあたりの話を聞いてあげてください。話を聞いた結果そうであれば、そのリミッターを外すよう働きかけましょう。それは、自信を持て、とか、おまえは下手じゃないとかではなく、前述したように「サッカーはミスするスポーツだよ。みんなで助け合ってプレーするのがサッカーだと思わないか?」と問いかけてください。それでも、状況が変わらなければ、息子さんに「コーチに一緒に話してみるか?」と聞いてみてください。夏休みを超えれば、あっという間に中学生。次のチームになります。そこまで今のチームで楽しくサッカーができるのかどうか。何よりも楽しくサッカーができる環境が一番ではないかということを、息子さんに考えてもらいましょう。サッカーが楽しい。ジュニア期はそれこそが、一番の価値だと私は思います。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『高学歴親という病』(講談社α新書)。
2023年07月19日最初は下手で仲間にも雑魚と言われていたのに、それをばねに努力して成長。1番上手だった子とも今や立場が逆転。チームメイトに意見できるようになり、1番上手かった子にも指摘したら泣いてしまい、その子の親がうちの息子が悪いように言う。チームのためになることを子ども同士で話すのってダメなの?とのご相談です。子ども同士のいさかい、悩んでいる保護者も多いのでは?スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんに5つのアドバイスを授けます。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<強豪クラブに移籍してすぐにケガ。ひと月離脱の息子の力になりたい問題<サッカーママからのご相談>9歳の息子は地域の少年団のチームで1年生からサッカーをしています。最初は夫の希望で半ば無理矢理始めたサッカーですが本人もとてものめり込み、チーム外のスクールにもいくつか通い本人も自主練をこつこつと頑張りここ1年で目に見えて技術面が成長しました。最初はチームの戦力外で、元々上手な子にプレーのことで散々下手くそだの雑魚だの言われても、何も言い返せず悔しい思いを沢山してきました。それをバネに努力した息子を大変たのもしく誇らしく思っています。技術面や知識面が成長したことでチーム内に気になることも増えてきたようで、チームメイトのプレーに対してあれはこういう風にした方がよかった、と意見することも増えました。息子はとても真面目で気になることを流せないタイプなので時に言い方が強くなることもあります。入部直後1番上手で息子にあれこれと強く言ってきていたチームメイトは逆の立場となり、今は息子に何が言われると泣いてしまうようになりました。泣いた後すぐに親御さんは彼のそばに寄り彼の言い分だけを聞いています。彼の親御さんは「またそんなこと言われたの?ほんとに腹が立つね、言い返しなさい」と言ってまるで息子が間違っているような口ぶりで彼をフォローしていました。息子に話を聞いてみると あの時ああやったほうがチームのためになると思ったから言った。あいつが下手くそとか悪いとか言ってるんじゃないのに何で泣くのか分からない。 とのことでした。私はひとまず、言い方やタイミングを考えなさいとは伝えたものの、また同じようなことがあったときに息子だけが悪者にされる気がしてなりません。何も言うなと言うのは違う気もします。チームのためになると思うことを子ども同士で話すことは、ダメなことなのでしょうか。よく分からなくなってしまいました。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。9歳ということは、3年生か4年生ですね。この年代になると、急に親や教師、コーチの言うことを聞かなくなります。児童心理学でいうところの「ギャングエイジ」です。自我が芽生えてきて、自己主張や衝動性が強く出るなどして、対応する大人からすれば大変ではありますが、子どもの成長発達の観点からみれば非常に重要な時期でもあります。■子ども同士のぶつかり合いは、こころの成長に必要なこと「いい子」でいさせようと押さえつけてはいけませんが、小学1~2年生の低学年時代では難しかった自制心や他者を思いやる気持ちを少しずつ育む必要があります。そのためには、時に仲間と言い合いをしたり、けんかすることも必要なことです。それなのに昨今は、大人たちが子ども同士がぶつかることを良しとしません。すぐに大人が仲介に入り、予定調和的に仲直りさせることが多いようです。子どものこころの成長に不可欠な「いさかい」を前もって大人が止めます。理由は「いじめに発展したら困る」とか「何かトラブルになったら困る」と一見すると子どものためのように映りますが、単に大人が子どもの成長を待てないだけ。結果的に、子どもが成長する機会を大人が奪っているのです。そこで、お母さんにアドバイスを五つ送らせてください。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■親が解決する問題ではないと認識することひとつめ。まずは「これは親である私が解決する問題ではない」と認識しなくてはいけません。いさかいはサッカーコートの中で起きているのだから、これはコーチと子どもたちの問題です。「息子だけが悪者にされるのでは?」と心配したり、「チームのためになると思うことを子ども同士で話しちゃだめなの?」とお母さんがいきり立つ必要はありません。コーチと子どもたちが解決する問題なのですから、放っておけばいいのです。息子さんに意見され泣いた子どものそばに寄って行って「腹が立つね、言い返しなさい」と煽る親に対して、お母さんは不快に感じたはずです。子どものケンカに口を出しても、良いことは何一つありません。そこを理解できるのならば、万が一泣いた子の親に何か言われたとしても「子ども同士のことですし、サッカーの時間はコーチと子どものものなので私は口をはさむのは遠慮します」と言えばいいことです。とにかく泰然自若としていれば良いのです。何度も起きるようならコーチも手当するはずです。それをしないのなら、しない理由があるかもしれません。とにかく任せることです。■この問題に関与するのをやめること二つめ。息子さんにこのことを根掘り葉掘り聞くなどして、この問題に関与するのはやめましょう。ご相談文から、お母さんのほうからやや積極的にかかわっているように見受けられます。冒頭にある「最初は夫の希望で半ば無理矢理始めたサッカーだが、チーム外のスクールにも通い本人も自主練をこつこつと頑張りここ1年で目に見えて技術面が成長」と非常に熱っぽく書かれているのがとても気になります。まだ9歳です。子どものサッカーに入れ込み過ぎてはいませんか?まだ9歳ですから、仲間に誤解を与えたりやいさかいを招くこともあるでしょう。しかしながら、そこから得る学びや成長は大きいはずです。言い方とかタイミングなど細かいコミュニケーションスキルはこれから磨かれます。なにしろシュートを打たなければゴールが生まれないように、コミュニケート(意思を伝達)しなければスキルは向上しません。ただ、上述したように接近しすぎるきらいがあります。彼を伸ばしたいなら、両親ともにもう少し距離を置きましょう。■我が子の話に耳を傾けよう三つめ。親御さんがやったほうがいいことは、彼が仲間とのコミュニケーションで悩んで何か言ってきたら話を聴いてあげることです。ただただ、傾聴する。決して「ああすればいい」「こうすればいい」と指示命令しないほうがいい。お母さんに話すことで、問題が整理されたり、客観的に考えられたりすることもあります。その際、例えば「何で泣くのか分からない」と言った主旨のことを再び言ったり、その話が出てきたら、「分からない、で終わらずに、もう一度考えたらどうかな?」と問いかけましょう。そこで、「その子は自分が責められたような気がしたんじゃないかなあ?君はどう思う?」などとお母さんの意見を言ってもよいでしょう。ここで息子さんが学ぶべきは「他者の気持ちを汲む力」です。それを汲めたとしたら、「じゃあ、次は『君を責めているんじゃない。ミスは誰でもあるから』とか前置きしてから言ってみるね」などと解決策に気づくかもしれません。■子どもが成長するために自分はどうすればいいか、という思考にするこのように、起きたことすべてに対し「息子が成長するには、私はどうすればよいか?」というマインドセットにしておくこと。これが四つめです。子どものピンチは成長のチャンスであることが少なくありません。そのように考えると、息子さんを落ち着いて観察できるかと思います。■こころが乱れているときは動かないこと(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)最後の五つめは、焦って動かないこと。相談文の最後に「よく分からなくなってしまいました」と書かれているように、お母さんは現在大変不安になり、なおかつ混乱しているようです。こころが乱れているとき、要するに感情的になっているときは、絶対に動いてはいけません。まずは様子を見ること。私も、長男も、長女も、いろんなことがありました。しかし、「ま、ちょっと様子を見るか」と眺めていると、ほとんどの場合いつの間にか解決しました。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『高学歴親という病』(講談社α新書)。
2023年02月22日チームで一番下手で仲間に「辞めたら」と言われるけど、落ち込む割にメンタルが強く口も達者なので必要以上に言い返す息子。言い返すことで仲間からの風当たりが強くなり、サッカー以前の所でもめていることに思い悩む日々。親として何ができる?とのご相談をいただきました。スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの子育てと取材で得た知見をもとに、今お母さんに必要なことをお伝えします。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<試合に呼ばれない息子にイライラして当たってしまいます問題<サッカーママからのご相談>いつも読ませて頂いて、勉強させてもらっています。ありがとうございます。小学3年生の息子のことで相談です。息子は5歳からクラブチームでサッカーをしています。素人の親からみても、息子はチームで一番下手だと思います。なので、仲間から「下手くそ」「もう辞めたら」など、言われるそうです(息子談) 親からすれは腸が煮えくり返り、一言言ってやらねば気がすまない!と思ってはいるのですが、そこは私も島沢さんの長年の読者ですので、今までの連載を読んで、どうするかは息子が決めるのだ。余計なことはしない!とスルーしてきました。ただ、息子は落ち込む割にメンタルが強く、しかも口も達者なので必要以上に言い返しているようなのです。「辞めれば?」と言われたのに対して「お前にそんなことを言われる筋合いはない。嫌ならお前が辞めろ」と言い放ち、「下手くそ」に対して「じゃあ、お前はそんなに上手いのか?どこが?」と返したと......。親からしてもちょっと言い過ぎだと思います。息子からしか聞いていないのでどこまで本当なのかはわかりませんが、息子が言い返すことで増々仲間の当たりが強くなってる様子です。 一番下手なヤツからこんな嫌な感じに言い返されたら、かなりイラッとしますよね......。チームメイトの気持ちもわかります。うーんしかし、サッカーとは違うところで揉めている気がして何だかな......。と思い悩む日々です。練習の度に息子は強く当たられるし、息子は息子で嫌なヤツだしで「必要なら母さんがコーチに相談することもできるけど!?(ていうか、言いたい!と思っています)」と意気込むも、「オレは大丈夫。何も言わなくていい。」とのことで、今のところ見守るしかありません。「言い返さない、という方法はないの?」と聞くと、「何?じゃ、オレは言われても我慢しないといけないの?」と返ってくる始末。本人には言いませんが、だって下手なのは本当なんだからそりゃ多少は言われるでしょう、と内心思っております。「言い方、伝え方の問題だよ」と説明するも聞かず、 口では私も敵わず 「ケンカするならコーチの前に行って言い合いを見てもらいなさい!気持ちのいいケンカをしなさい!」とよくわからないことを言ってしまいました。ここまでになると仲間との関係修復は難しいのでは、と思います。辞める?と息子に聞きましたが、辞めないとの返事でした。 息子はこのままでいいのでしょうか......。仲間とサッカーを楽しんでほしいのですが、それ以前の問題に悩んでいます。私に何かできることはありますか?<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。いつも読ませていただいて......とお礼まで書いてあって嬉しい限りです。息子さんが仲間からからかわれても「どうするかは息子が決めるのだ。余計なことはしない!」と決めて見守ってこられたと書かれています。立派です。さすが、わたくしめの読者!誇らしく思います。そして、そして、息子さんもとても立派!下手くそ、辞めろなどといじめられても負けていません。「お前にそんなことを言われる筋合いはない。嫌ならお前が辞めろ」と言い放つなんて、惚れ惚れします。もしも私がお母さんだったら、「息子よ、よく言った!その通り!」と褒めちぎります。■9歳ぐらいだと人の気持ちに配慮できない子もいる今の子ども社会で、いじめは大きな問題です。いじめる側が悪いのは当然ですが、息子さんの9歳くらいの年齢はまだ人の気持ちに配慮するといったことができない子どももいたりします。心身の発達や、家庭環境などによって子どものありようがまだまだバラバラな世代です。そこを鑑みて、いじめられたとしても親のほうは「気にすることないよ」と励ましてあげればOKなわけで、この息子さんの場合は自分で跳ね返す力をもっているわけです。サッカーも続けているのであれば、今のところ彼に何の問題もありません。それなのに......。なぜ突然、母さんがコーチに相談するとか、言い返さない方法はないのか?などと「余計なことをしたいモード」になってしまったのでしょうか。その点について考えてみましょう。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■心配からの質問も、状況によっては「チームを辞めてほしい」と伝わる場合もそもそも息子さんの「オレは言われても我慢しないといけないの?」という反論は正しいと私は思います。言い返さない方法はないかというのは「言い返すな」という指示命令にも聞こえます。「下手なのは本当なんだからそりゃ多少は言われるでしょう、と内心思っている」は、息子さんに失礼ですね。本人には言いませんがと書かれていますが、子どもは鋭いイキモノです。お母さんがサッカーをしている自分をどう思っているのかはわかっているはずです。前述したように「下手なんだから言われて当然」と考えたり、いじめに抗っている息子さんに対し「言い方、伝え方の問題だ」と責めてみたり、自分は大丈夫だと息子さんは伝えているのにクラブを辞めるか?と尋ねています。本人が辞めたいと言っていない状況でそれを質問されると、子どものほうは「お母さんは僕に辞めてほしいと思っている」と伝わる場合もあります。■子どもより親の方が不安定になっているさらに言えば「一番下手なヤツからこんな嫌な感じに言い返されたら、かなりイラッとする。チームメイトの気持ちもわかる」のくだりは、お母さんの本音でしょうか?お母さんは、息子さんが自分より下手な子をいじめて、その子に言い返されたと言ってきたら「だよね。イラつくよねえ」と同意しますか?ご相談文でしか様子がわからないので私の見解がすべて正しいとは思いません。が、その前提で申し上げると、いじめられている息子さんよりも、むしろお母さんのほうが不安定になっているように受け取れます。弁の立つ息子さんは、懸命に抗いながらサッカーを続けています。ところが、お母さんのほうが仲間の暴言や扱いに耐えられないのではないですか?サッカーが下手な息子。文句を言われるわが子。文句を言われたら言い返す息子。そんな息子さんの姿を見たくないのではないでしょうか。それゆえに、息子さんに対しメールで毒を吐かれたのかなと勝手に解釈しました。■今親ができる3つのこと(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)最後に三つほどアドバイスします。「私に何かできることはありますか?」とありますが、この件についてお母さんは現段階で何もすることはありません。まずは、お母さんは手を引くことです。仲間とのあれこれについて根掘り葉掘り尋ねたりしないこと。コーチの前でケンカしろといったわけのわからない(お母さん自身もそう言ってますが)指示もやめましょう。二つめ。いじめに対し抗っているお子さんをもっと評価しましょう。息子さんに「負けずに言い返すなんてすごいね。お母さんにはできないわあ」くらい言ってあげてもいいように思います。サッカーで否定され続けているのに、家に帰っても親から「言い過ぎだ」などと否定されては、いくら抗う力のある子でも心が折れてしまうかもしれません。「君は何も悪くないよ。何かお母さんにできることがあれば言ってね。もしチームを替わりたくなったり、何かあれば言ってね」などと言っておくこと。あとは、サッカーの練習や試合から帰ってきたら「楽しかった?」と聞いてあげてください。三つめ。仲間とサッカーを楽しんでほしいと書かれていますが、息子さんがサッカーは楽しくないと言ったのでしょうか?できれば、一度「私のほうが息子にサッカーをやめてほしいのではないか」と自問自答してみましょう。まずはお母さんが「余計なことをしたいモード」から解放されることが先決です。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)。
2023年01月16日自分で準備をしない、自分からやりたいと言って始めたのにやる気が感じられない、上手くなりたいという割には自主練をしない......。など、子どものサッカーの悩みでよく聞かれることです。それ以外にも、サッカーと勉強の両立など保護者の皆さんがひそかに悩んでいることもあるのではないでしょうか。先日サカイクでは、お子さんの「サッカー以外」の悩みについてツイッターでアンケートを実施いたしました。その結果をご紹介いたします。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!一位はやはり「ゲーム・ネットに夢中、長時間のゲーム」(37.1%)でした。小学生がゲームに熱中するのは今に始まったことではありませんが、最近は家庭や学校でもパソコン、タブレットに触れる機会があったり、親御さんのスマートフォンを使ってゲームやインターネットをする子も増えているようで、長時間使用が気になる保護者が多いという結果になりました。次いで多かったのは、「勉強との両立」(30.6%)。サッカーが好きで夢中になるのはいいことですが、勉強もしっかり取り組んで欲しいという親心の表れでしょう。お子さんが将来どんな道に進むにしても、学問を修めることや探求心をもって主体的に学びを深める経験は役に立つものです。保護者の皆さんも人生の先輩として、ご自身の経験から子どもたちにはサッカーも大事だけれども、勉強との両立もしてほしいと願うのは当然のことかと思われます。「チームメイト、友達関係」(14.5%)も、チームによっては保護者の悩みになります。サカイクで保護者の方にお話を伺う際も、上手い子が下手な子をバカにした言動を取る、「下手だな」など直接言われる、レギュラーと補欠に溝がある、学校でも同級生なので普段からサッカーが上手い子たちに萎縮している、といったこと等があると聞きます。子どもは直接的な表現をすることもあり、ときに残酷です。そのような言動に子どもが傷ついていたり、自信を無くしていることに悩んでいらっしゃるということだと思われます。ほかにも保護者の方にお話を伺うとこのような声を聞きます。・家にいるとゲームばかり・ネットで友達とひっきりなしにやり取りしている・タブレットとパソコンの2台を駆使してチャットしながらゲーム実況を見るなど、器用だなと感心する反面、依存しないか心配でもある・勉強との両立が不安・サッカーに夢中すぎて勉強に興味が向かないのが悩み・チームメイトに萎縮しており、学校でもその子たちに気を使っている・おとなしい性格で、コミュニケーション能力が高くないいかがでしょうか。普段学校の保護者やチームの保護者と話す際にも話題になることがあるかもしれませんが、よそのご家庭でも同じような悩みがあるんだと少し安心した方もいるかと思います。今回一番多かった「ゲーム・ネットに夢中、長時間のゲーム」については、ゲームやインターネットに依存してしまうことや、リアルな対人コミュニケーションが苦手になってしまうのでは、という心配がある一方で、本人が楽しんで通っていて、デジタルから離れる場所である「サッカー」があってよかった、という声も少なくありません。サッカーというスポーツの良さを改めて感じていらっしゃる親御さんもいるようです。ただし、サッカーをやりすぎると満足して向上心がわかなくなったり、燃え尽きてしまうこともありますので、「またサッカーをしたい」といった余白を残してあげることが子どもが楽しんでサッカーに行くために大事なことです。サッカーが大好きな子どもたちの中には、満足するまで練習したい子も多いと思いますが、その辺は親御さんがブレーキをかけてあげるようにしましょう。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2022年11月07日子どもがサッカーを始めると、練習や試合の送迎で車の出番が多くなります。子どもだけでなく、チームメイトを乗せたり、ボールやマーカーなど試合会場に着いてから練習で使う道具の運搬など、これまでとは違う車の使い方になります。そろそろ買い替え時期となると、そんな用途ありきで検討するご家庭も多いのではないでしょうか。そこで、中古車情報メディア『カーセンサー』の西村泰宏編集長に、サッカーをする子がいる家庭におすすめな車の選び方を伺いました。(取材・文:小林博子)子どもがサッカーを始めると、車で送迎する機会が増えることも。(写真は少年サッカーのイメージ)■荷物多め&車内が汚れる!子どもがサッカーを始めた家庭の車事情まずは、これからサッカーを本格的にする子どもがいるという方にもわかりやすいよう、サッカーファミリーの一般的なカーライフをご紹介します。中にはチームでバスを持っているクラブもあるかもしれませんが、親の車出しがあるチームは少なくありません。サッカー少年たちの荷物は、ボールと着替えを入れた大きなバックパックというケースがほとんどです。子ども1人だけを乗せるならそのバックパック程度ではありますが、試合の送迎などでチームの子どもたちを乗せる場合、それぞれがバックパックを持っていますので、荷物だけでかなりのスペースを割くことに。さらに、「試合当番」があるチームの場合は、日除けのタープや折りたためるベンチ、夏は大きなドリンクジャグなどを運ぶこともあり、荷物だけでなかなかの量になります。そして、車内が汚れがちなのも特徴です。子どもたちは泥や砂埃などで通常よりもシートや床を汚しがちですし、小学生年代だと車酔いする子も少なくないので、車酔いをする子がいる場合は車内で嘔吐されてしまうことも......。車は何人乗りが最適で、どれくらいのスペースがあれば十分か、そして汚れに強い内装は?など、考えなくてはならない項目は多岐にわたります。子どもがやりたいと言って始めたサッカーですが、大会出場などが増えるにつれ、このように車選びにも影響がでることがあるのです。■選択肢は「ミニバン」だけ?答えはNO!そんなことを考慮すると、とにかく大きくて、荷物をたくさん積めて、汚されてもいい内装の車にするのが正解なのかと思いがち。そこで候補にあがるのはミニバンやワゴンですが、車好きな親御さんの中には「いかにもファミリーカーという印象の車は嫌だ」と思う方も多いようです。そんなニーズに応えるべく、カーセンサーの西村編集長が車選びで考えるべきことをサッカーファミリーバージョンで考えた、4つの観点を教えてくれました。人と荷物をたくさん乗せるなら、アルファードのようなミニバンしか選択肢にないの!?とあきらめなくても大丈夫です(写真提供:カーセンサー)■その1.乗る年数とサッカー以外の用途は何か?まず、お子さんの年齢によって、何年間サッカー向けの車が必要かをまずは考えてみましょう。と西村さんは言います。その間、送迎は週何回あるのか、遠征などで何人も乗せる回数は年何回あるのかなども想定してみることが大事だそう。遠征で大人数を乗せるのが年数回の場合は、その時だけレンタカーを活用するのも手段のひとつ。「わざわざそれだけのために大きなミニバンを購入する必要はないのかもしれません」と西村さん。また、サッカー以外の用途についても考えてみて欲しいと西村さんは言います。特に小学生の保護者世代のご家族に多いのが、キャンプなどのアウトドアレジャーも積極的にしたいというケース。この場合も荷室が広い車を選びたくなるはずです。「サッカーのためだけ」ではない基準が増えます。車を買うときはどうしても「今の生活」に目を向けがちですが、少し先の未来を見据えることで、よりクリアに考えることができ、よい選択ができるはずです。とアドバイスをくれました。■その2.リセールバリューを重視するのか車を購入する際に「リセールバリュー(再販価値)」を考慮するかを考えるのはあたり前になっていますが、サッカーファミリーの場合は、前述したように必要な大きさや汚れの程度が通常と異なる特別な期間になることもあるので、一般的な概念とは切り離して考えてみてください。と西村さんは言います。その結果、もしかしたら「次の1台は乗り潰す(=リセールバリューは考慮しない)」という選び方になるかもしれません。その場合は、前述した「その1.」で想定した年数の間に乗れる、リーズナブルな中古車を探すという選択肢が新たに生まれますし、その年数はサッカー送迎仕様で選ぶと割り切ることができるでしょう。ちなみに、日本製のアルファード(トヨタ)やヴェルファイア(トヨタ)など大型のVIP系ミニバンやハイエース(トヨタ)などの商用車は海外での人気が高く、10万キロを超える走行距離があっても売れやすい傾向にあるのだそう。リセールを考える場合は、少々値段が高くてもこれらの海外で人気がある車を選ぶのも手です。■その3.荷物は外付けという選択肢もサッカーの荷物のことを考えると、荷室の広さを重視しがちですが、実は「外付け」という選択肢があることも知っておくと、選択の幅が広がると西村さんは教えてくれました。具体的には、車体の上に取り付ける「ルーフキャリア」などです。スノーボードやサーフィンをする人たちも良く使用していますね。外付けで荷物を積めると思うと、荷室の大きさだけに固執せずとも、必要なスペースを確保できるかもしれません。■その4.車酔い・汚れ対策は内装にこだわるより、カーシートに別売りのカバーを西村さん曰く、車内が汚れるという懸念点から、シートの材質にこだわりたいと思う方が多いかもしれませんが、欲しい車との掛け合わせでピッタリのものを見つけることは困難なためあまりおすすめではないのだそう。それよりもサッカーをする子どもがいるご家庭におすすめなのは、シートカバーを使うことなのだとか。最近では、さまざまなタイプのシートカバーが1つ1万円以下で購入できます。ひと昔前の概念だとやぼったいイメージがあるかもしれないシートカバーですが、アウトドアブームの昨今は、キャンパーやサーファー向けの汚れや水に強くておしゃれなデザインのものもたくさん販売されています。汚されたら取り外して丸洗いできますし、たとえお子さんが嘔吐したら破棄して新調しても大きな出費にはなりません。リセールバリューを考える上でも、シートカバーで覆うことで車内をきれいに保つことは有効な手段です。子どものサッカーの送迎が発生する時期は、車以外にも生活の様々なことが影響してくると思いますが、「サッカーだけ」にとらわれず、親子が快適かつに過ごせて良い思い出をたくさん作れるような車選びをしていただくための参考にしてください。
2022年04月05日Jクラブの育成組織に所属する息子。何度も悔しい思いをしてようやく周りと同じ土俵に立てたと思っていたけど、常に二軍で試合に出られず、チームメイトからも見下されている。自信をなくしプレーの成長も見られないし、このまま続けてもジュニアユースに上がれそうにないので親の自分が辛いし悔しくて、ダメ出ししたり口うるさくしてしまう。このまま続けさせていい?息子の自信を取り戻すにはどうしたら?というお悩みをいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんに3つのアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<出場機会がない息子。友達といたいから移籍したくない問題<サッカーママからのご相談>初めましてこんにちは。チーム及び息子のチームメイトについての悩みを相談させてください。息子は5年生で現在、Jクラブの育成組織で活動しています。4年時のセレクションで合格し活動を始めました。そこに至るまでに何度となく悔しい思いをしてようやく、周りと同じ土俵に立てたと思っていました。しかし、ここ最近試合に出れずベンチスタートばかりです。スピードがない、体が小さい、ウエイトがない、などを理由に常に二軍でチームメイトからも見下されています。試合に出ても辛そうな自信のないプレーばかりで、得意だったドリブルもしなくなりました。萎縮してパスも弱い、チームメイトの言いなりでここ1年半いい所がなくなってしまいました。自分で考えてプレーしても見下されチームメイトに文句を言われ、やりたいプレーもさせてもらえていません。1年半前から成長が見られなくなってしまいました。練習風景は見れないので分かりませんが、みんな、上の学年に選ばれるためにやる、選ばれたやつが上手くて偉いという感じになっています。本人はこのまま続けたいと言っていますが、この先続けてもジュニアユースには上がれそうにないと私が思ってしまい、辛くもなり、悔しくもなり練習をもっとやらせたくなったり、口うるさくダメ出しや出来ないことを言ってしまいます。プレーしているのは親ではなく子どもという事は頭では理解していても、どうしても現実を目の当たりにすると、悔しさが込み上げてきてしまいます。このまま、続けることに意味はあるのでしょうか?バカにされて見下され、自信をなくし自分の思うプレーができない息子に、どのような声かけをしたらいいのか......。自信を取り戻して練習や試合に挑めるようにするにはどうしたらいいのでしょうか。アドバイスを頂けると嬉しく思います。 よろしくお願い致します。<島沢さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。JクラブのU‐12チームでプレーされているとのこと。この年代の中である意味最も高いレベルでプレーしているので、お母さんが期待していることが相談文でみてとれます。■このままだと子どもがつぶれる短いメール文からすべてを理解するのは難しいのですが、ひとつだけ断言できることがあります。少し厳しい言い方になりますが、お母さんがこのままだと間違いなく息子さんはつぶれてしまうと思います。それはサッカー選手としてだけでなく、人としても、です。できることなら、今の接し方や態度、そして息子さんのサッカーに対するお母さんの考え方を変えてほしいと願います。どんな言葉を投げつけているか、お子さんがどんな表情でお母さんの言葉を聞いているか、容易に想像がつきます。なぜなら、多くの取材でそんな親子をたくさん見てきたからです。■自分のネガティブな部分を客観視できているのは救い一方で、もうひとつ断言できることがあります。「お母さんは十分やり直しができますよ」ということです。なぜなら、この相談で、ご自分の状況を正直に報告されているからです。子育てのやり直しがなかなかできない親御さんは、他者に自分の状況を伝えるとき、ご自分のネガティブな部分やありようを隠そうとします。きれいな言葉や観念的な言葉で形容しがちです。ご相談文にこうあります。「本人はこのまま続けたいと言っていますが、この先続けてもジュニアユースには上がれそうにないと私が思ってしまい、辛くもなり、悔しくもなり練習をもっとやらせたくなったり、口うるさくダメ出しや出来ないことを言ってしまいます」お母さんはご自分の態度や言葉を心から後悔されているようです。プレーしているのは親ではなく子どもであること。それを頭で理解していても、悔しさが込み上げてしまう。そのように、ご自分を客観的にみることが「まだ」できています。こうやって客観視できている今、どうか一日も早く子育てを転換しませんか?■親の押し付けになっていないか、いま一度気持ちを整理しようそこで、お母さんに三つのアドバイスをさせてください。ひとつめ。まず、息子さんのサッカーをご自分がなぜ応援しているのか?ここを正直にご自分に問い直してみましょう。以下のどれが、お母さんの気持ちに一番近いですか?1.プロになってほしいから何が何でも頑張ってほしい2.結果を出して、サッカーで人生を切り開いてほしい3.サッカーを楽しみながら、いろいろなことを学んで、人生の糧にしてほしいもし、1か2であれば、お母さんの「こうなってほしい」という希望は、子どもからすれば親の押し付けです。したがって、少しずつ、お母さんがサッカーを応援する理由を3に近づけてください。私がなぜそんなことをお母さんに要求するのか。それは、ごくごく一部を除いてサッカーの場合、親御さんがわが子に対し1や2の気持ちが強い家庭は子どもの成長を止めてしまうからです。自主練をさせたり、試合のビデオを観てダメ出ししたり、厳しい言葉で子どもを鼓舞するご家庭は非常に多いです。親御さんはそうすることを親としてのサポートだと勘違いしています。お母さんも似たことをなさっていると思います。ただ、お母さんは、自分がそうしてしまうことを、現時点ですでに後悔しています。いいプレーができなかったり、試合に出られない息子さんを、ご自身が情けなく感じたり、歯がゆく感じて腹を立てている。息子さんに当たっているだけだということを理解しています。ぜひ、今一度「サッカーを楽しみながら、いろいろなことを学んで、人生の糧にする」という目的を親子で確認してください。そしてこれまでの怒ったりしてきたことを、できれば謝りましょう。それだけでも、息子さんは気が楽になるはずです。■今のうちに子離れしないと、後々子どもの心が壊れる可能性があるふたつめは、子離れすること。今のお母さんは、息子さんのサッカーに依存しているように映ります。親が乗っかれば、小さな体とこころはじきに壊れてしまいます。チームでサッカーを続けたいというなら、続けさせてあげてください。さまざまな岐路を親が命令し決めてしまうと、子どもはその先うまくいかないことがあると「お母さんがやめろって言ったじゃん」と必ず言います。やさしくて言わない子もいますが、大きくなったらトラウマのように蘇ります。小さいときに世話を焼き過ぎたことがすべからくうまくいかず、大人になったわが子に「僕の人生を返せ!」と泣かれたり、暴力をふるわれた親御さんを私は取材で何人も会ってきました。まるで脅しているようで嫌な気持ちになるかもしれませんが、今ならやり直しできます。■子どもにどんな声掛けをしたらいいか(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)三つめ。子離れするための策を伝えます。「自信をなくし自分の思うプレーができない息子に、どのような声かけをしたらいいのか?」とあります。が、親の声掛けでサッカーが上手くなるなら、私も教えてほしいです。サッカーのことは何も言わないこと。過去のことを謝って「もう何も言わないように努力するね」と約束をしましょう。練習や試合から帰ってきたら、「今日、楽しかった?」と尋ねてください。笑顔で、美味しいごはんをつくって、早寝早起きをさせましょう。家庭が安全基地になりさえすれば、息子さんは勝手にサッカーで成長します。そのあたりのことは、私のこの連載を最初から読んでいけばよく理解できるはずです。そして、本を読むなどして子育てのことをもっと勉強しましょう。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2021年07月21日男子新体操をテーマにした青春感動ストーリーの舞台『タンブリング』が11日、大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WW ホールで開幕。開幕を前に行われたゲネプロでも、このステージにかける出演者たちの熱い思いがあふれた。2010年4月期にTBS系で放送された青春ドラマ『タンブリング』。知られざる “男子新体操”の魅力を描き、俳優陣が吹き替え一切なしで男子新体操に挑む姿も多くの視聴者を感動させた。その後、同年9月にドラマの主要キャストだった大東駿介主演で舞台化。翌年のvol.2では若手実力派俳優の菅田将暉を起用し話題に。vol.3では柳下大、vol.4では中尾明慶、FINALでは松下優也を主演に据え、千葉雄大や志尊淳など話題のキャストを起用。いずれも観客を魅了し、エンターテインメント業界をけん引する、多くの人気俳優を輩出してきた。10周年のメモリアルイヤーだった2020年に復活公演が予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大のため断念。その悔しい想いを力に変え、本日、念願の開幕を迎える。主演は、いま人気の高野洸と西銘駿。『タンブリング』史上初となるW主演で、“男子新体操”の夢を追いかける幼馴染を演じる。2016年、リオオリンピックの閉会式での男子新体操の鮮やかなパフォーマンスに、一瞬で心を奪われた中学3年生の野村朔太郎(高野洸)と北島晴彦(西銘駿)。幼稚園からの幼馴染で、いつもとなりにいた 2 人は、“男子新体操”というマイナースポーツで世界に羽ばたくことを誓い合った。しかし、異なる高校に進学しライバル同士となった朔太郎と晴彦。2 人が大舞台を夢見るきっかけとなった新体操が、その絆を引き裂くことに…。さらに 2 人を取り巻く仲間たちもまた、皆それぞれに夢と悩みを抱えており…。高野演じる朔太郎が通う航南高校男子新体操部のチームメイトとして、元木聖也、蒼木陣、廣野凌大、梶原颯、綱啓永。西銘演じる晴彦が進学した悠徳高校のチームメイトとして、長妻怜央、納谷健、北乃颯希、西野太盛、バーンズ勇気が出演。今最高にアツイ若手俳優陣らが躍動する。もちろん、男子新体操団体のダイナミックな動きと華麗なダンス、そして胸を熱くさせる青春ストーリーも見どころ。舞台ならではの魅力がつまった作品だ。また、6月11日の公演のライブ配信も決定。6月12日と6月13日は無観客公演でライブ配信のみとなるが、12日は航南高校をメインに、13日は悠徳高校をメインとした異なる映像で届ける。東京公演は6月17日~24日にTBS赤坂ACTシアターにて上演される。出演者のコメントは以下の通り。■高野洸ついに初日の幕が開けるということでドキドキしています。2020年、通し稽古までいっていたので、一年越しで、今度こそ開幕です。不安もありましたけど、稽古を重ねるごとに解消されていって、仲間と新体操をやれる喜びを日々感じています。そんな気持ちも舞台上で輝くと思いますので、劇場で見ていただける方も、配信で見てくださる方も楽しみにしていただきたいです。キャストのパワーと新体操の力で、きっと勇気づけられる作品になっていると思います!■西銘駿遂に、舞台「タンブリング」の幕が上がります。エンタメ要素が豊富な分、不安やプレッシャーなどはありますが、自分を信じてお芝居したいと思っています! 一年前の中止を経て、無事公演できる喜びや、残念ながら今回一緒に出られないキャストもいますが、全員の想いを乗せて、チーム一丸となって最高の舞台をお届けできるよう頑張ります。皆さんにとって一生忘れられない作品にします!■元木聖也ついにタンブリングが帰ってきました! 去年はたくさん練習してみんなで汗を流して頑張ったのに開幕できなくて本当に悔しかったです。でも今年「タンブリング」が皆さんの前でできて、新体操ができて本当にうれしく思います! 2013 年にやったタンブリング Vol.4 のあの時の熱い感覚がまたメラメラと燃えてきています。今回の新体操は Vol.4 より進化していると思います! たくさんの方に見てもらいたいです!千秋楽まで全員で怪我なく楽しく駆け抜けていきます! 応援よろしくお願いします!■納谷健先日、写真で見る自分の腕が太くなっていたことに驚きました。中止を経て、今日まで 1 年半以上新体操に触れ、「タンブリング」を意識し、本番を迎える前に身体的な変化も感じてとても心強い気持ちになりました。「タンブリング」へ時間を掛けたその想いも感じ取っていただけたらうれしいです。■北乃颯希舞台「タンブリング」いよいよ初日を迎える事ができました。ここまで本当に長い道のりやった。それは僕達も皆様もずっと思っていた事やと思います!悠徳、航南の 2 校で存分に青春するぜ。男子新体操の素晴らしさ、面白さを是非体感してください!!■廣野凌大大人になってからこんなに青春ができていることに本当に感謝しています。僕達も全力で取り組んで作品を作ってきましたので、ぜひ皆様に勇気を与えられるように自分自身も千秋楽まで尽力したいです!■西野太盛いよいよ、ようやく初日を迎える事が出来ます。本当にうれしいです。始まってしまえば初日から千秋楽まで、凄い速さで過ぎていくのかなと今から少し寂しくもありますし、ようやく立てるんだと気合いも入ります。毎日の一瞬一瞬、景色を噛み締めて目に焼き付けていきたい。長い間溜めてきたパワーや気持ちを全開で頑張ります!■梶原颯ようやくここまで来れたんだなと今はホッとしています。昨年の「タンブリング」中止から1年越しで公演が決まり、とてもうれしかったです。そしてずっとこの日のために頑張ってきました! 昨年観せられるはずだった「タンブリング」よりも、もっとパワーアップしています。安心はしましたがまだこれからがスタートです。誰一人欠けることなく絶対に千秋楽まで駆け抜けたいと思います。応援よろしくお願いします。■バーンズ勇気ついに! ついに!!この日が来ました。やっと皆さまにこの作品をお届け出来る事を本当に幸せに思います。キャスト、スタッフ全員一丸となって大千秋楽まで頑張っていきますので応援よろしくお願いします!■綱啓永凄くワクワクしています。最初は正直不安しかなかったです。新体操はもちろんアクロバットもやった事がない僕からしたら未知の世界でした。大変でしたが、新体操練習・稽古を重ねるにつれて深まっていくカンパニーの絆が凄く熱くて、毎日が刺激的で、本当に濃い時間を過ごしました。キャスト・スタッフ全員で魂込めて創り上げた舞台「タンブリング」是非楽しんでください。■蒼木陣8年前に舞台の「タンブリング」を観劇して以来ずっと目標となっていたこの作品に出演できること、そしてこうして無事に初日を迎えられたことを心からうれしく思います。この作品の為に取り組んできた生の新体操が皆様の心に残り続けるよう、千秋楽までチーム一丸となり作品と向き合っていきたいです。■長妻怜央いやぁーーー、、、来てしまいました。本当に本番が来てしまいました!!初めはタンブリングのマットに慣れるのにも時間がかかっていたのに今ではマットともお友達になることができました!!何回も滑ったり転んだりラジバンダリしましたが、ようやく新体操の形になったと思います!! とにかくやれることは全部やって、しっかり寝て本番に向かいたいと思います!
2021年06月11日中学時代にトレセン歴のような輝かしい経歴がない選手がほとんどなのに、高校時代に個性を磨きあげ、セレッソ大阪のDF松田陸選手、松田力選手を筆頭にこれまで28人ものJリーガーを輩出している立正大学淞南高校の南健司監督。前回は現在発売中の南監督の著書「常に自分に問え! チームの為に何が出来るか 立正大淞南高校の個とチームの磨き方」から一部を抜粋し、前向きな志向の重要性について紹介しました。後編となる今回は、立正大淞南がサッカーで大事にしている要素について紹介します。(構成・文:森田将義)立正大淞南高校サッカー部(C)森田将義<<前編:「トレセン歴なし」がほとんどなのに約30人がJリーガーに!全国常連の強豪サッカー部監督に聞く「個とチームの磨き方」■誰にも負けない武器が一つでもあれば、選手は成長できる淞南に来る選手の多くは欠点が多くても、何か一つ誰にも負けない武器を持った選手ばかりです。長所が一つでもあれば選手は成長できると考えています。突出した武器があるから、他の部分も伸びていくのです。多くの人が、「満遍なく卒なく無難にこなせる」のも才能だと気付いていません。過去にいた選手に、中学の指導者が「ストロングポイントがないから淞南には向いていない。身体能力や体格に優れておらず、パスが正確なだけ」と評する選手がいましたが、確実にパスが繋げるのも武器なのです。日本は足が速い選手や身長の高い選手を、長所を持った選手として持て囃しますが、私の定義は違います。ピッチに立つ11分の1として、チームが勝つためのプレーができる選手が、長所を持った選手なのです。いくら足が速くても、試合で有効でなければ、長所ではありません。横パスしかできなくても、どんな状況でも落ち着いて正確にパスができるのなら、立派な長所です。■長所があれば弱点を「ごまかす」こともできる長所さえ持っていれば、短所もカバーできます。選手には、ごまかす力も大事だと常に伝えています。私は大学時代、技術がない選手でしたが、チームメイトはサッカーが私に下手なイメージを持っていないそうです。とにかくヘディングが強くて、スライディングで突破を止めまくれるのに、左足でインサイドキックができなかった。相手に寄せられると慌ててパスができなくなるため、ボールを奪ったらすぐロングボールを蹴って、自ら「ナイスボール!」と叫ぶような選手でした。プレッシャーに負ける姿を見せたら、相手に狙われるとも考えていました。私はロングキックが長所だったため、公式戦の緊張感のある舞台でも、弱点を誤魔化せたので、チームメイトに下手な印象を持たれていないのです。ロングボールという武器を持っていれば、ロングキックを蹴るふりをして蹴らないというキックフェイントもできます。武器が一つあれば、二つの武器を手にしているのと同じと言えるでしょう。■不平不満しか言わない指導者は選手の良い部分を見つけられない私は良い所探しの天才だと自負しています。学校に対しての不満を一切言わないのも、良い所をたくさん知っているからです。淞南が実施しているサッカースクールでは、選手が子どもに指導するのですが、子どもへの説明が上手い選手がいます。プレーが下手であっても、指導力という良い所を持った選手なので、私は認めています。不平不満しか言わない指導者は良い部分が見つけられない性格であるため、きっと選手の良い部分も見つけられず凄い選手を育てられません。良い所探しができる性格なのかは、良い指導者と言えるかどうかの条件でしょう。他の仕事でも同じで、「最近の若い奴は」と不満を口にする年配の人は、入社したての頃は会社の上層部の批判をしていたはずです。■サッカーは全てのプレーに本質があるサッカーは攻守の切り替えが速く考える時間がなさすぎるスポーツですが、野球は次のプレーでどうすれば良いかを考える時間があるため、分析が好きな日本人に合ったスポーツだと思います。それなのに多くの指導者はサッカーの分析をたくさんするうちに難しく考えすぎてしまい、本質を見失った練習メニューや指導法が溢れている気がします。淞南のグラウンド横の掲示板には、私が就任した当初に記したサッカーの基本をまとめて張り出しています。淞南サッカー部ではAチームの選手として不可欠な10の絶対条件を掲げています。掲示板に張り出されているサッカーの基本10か条(C)森田将義1.攻守の切り替えが速く、予測を持って連続で激しく動ける(基本動作)2.ヘディングが強い(技術)3.ロングキックができる(技術)4.トラップの前にステップフェイントがあり、キックフェイントで突破できる(技術)5.攻守に渡りゴール前で頭から飛び込める(基本)6.ロングスローが投げられる(技術)7.精神的に戦える(精神面)8.全国で勝てる自主練習ができる(想像力)9.基本練習を実践的に自ら難しくできる(想像力+責任感)10.素直である(一流選手たる条件)こうした掲示物を見ると、サッカーの基本は大きく変わっていないのだと思います。サッカーは進化していると口にする指導者がいますが、ボールを出したら周りを見る意識や、チャレンジ&カバー、ラインの押し上げは大昔から変わらないサッカーの本質です。サッカーの本質が大事と表現しますが、全てが本質なのです。本質を強調しなければいけないのは、本質を抑えていない指導者が増えているからではないでしょうか。■1つの技術だけでなくサッカーに必要な要素をすべて教えることドリブルスクールのように一つの技術を切り取って教えるのも間違っているように思います。他のスポーツでは一つの技術に特化したスクールがあるなんて話は聞きません。同じ野球でも野手とは別種目に近いピッチャーですら、専門のスクールはないのにサッカーにだけ存在するのは不思議です。ラーメン屋に例えるなら、スープにこだわりながらも麺はスーパーで売られているのを使っているような店は繁盛しないのと同じだと言えるでしょう。チャーシューなどの具材だけではなく、器までこだわる店には敵いません。1つの技術だけでなく、サッカーに必要な要素を全て教えなければ、良い選手に育たないのです。テクニカルなチームが、なぜドリブルの練習をたくさんしているのか意図すらも理解できず、型だけを真似している指導者が多いように思います。■必要な技術はどの年代でも同じ野球の練習法は日本全国どこに行っても大きく変わりません。それ以上の練習方法がないと行きついているから、30年前も今も同じ練習をしているのです。日本サッカーはまだ行きついていないから違いや流行り廃りがあると考えています。ジュニア年代に応じた練習メニューが提唱されたりもしますが、必要な技術はどの年代でも同じです。教えるべき技術を幼少の頃から、きちんと徹底して指導すべきです。※この記事は「常に自分に問え! チームの為に何が出来るか 立正大淞南高校の個とチームの磨き方」(竹書房・刊)より抜粋したものです。南健司監督
2021年05月19日全国選手権出場18回、インターハイ出場13回。今や全国屈指のサッカー強豪校として知られる島根県の立正大学淞南高校です。在籍する選手は中学時代にトレセン歴のような輝かしい経歴がない選手がほとんどですが、個性を磨きあげ、セレッソ大阪のDF松田陸選手、松田力選手を筆頭にこれまで28人ものJリーガーを輩出しています。チームを率いる南健司監督の独自の哲学には高校サッカーだけでなく、サカイクの読者であるジュニア年代の親御さんや指導者にも役立つヒントがたくさんあります。今回は現在発売中の南監督の著書「常に自分に問え! チームの為に何が出来るか 立正大淞南高校の個とチームの磨き方」から一部を抜粋し、紹介していきます。(構成・文:森田将義)立正大淞南高校サッカー部(C)森田将義■ハーフタイムは、チームメイトへの指摘は禁止ようにしています。育成年代では、自分にとって都合の良い話ばかりをして、チームがネガティブな雰囲気になる話し合いが珍しくありません。例えば、FWがチームメイトに対し、「俺がパスコースを制限しているんだから、もっとインターセプトを狙ってよ」と不満混じりに要求するケースです。こうした場合、淞南では「俺は前から奪いに行く」と自分のやりたいことしか話さないようにしています。周りの選手に対しての指摘は、禁止です。そうすれば、中盤の選手は「俺はこぼれ球を狙う」、DFの選手は「絶対に空中戦で競り勝つ」とポジティブな発言が続き、チームの雰囲気は良くなるでしょう。■チームの雰囲気は勝つ力につながる試合中でも、前線の選手がボールを失った際に「もっとフォローを速くして」と周りの選手に伝えると、周りの選手は「すぐに奪われるからフォローに行けない」と考え、チームの雰囲気が悪くなります。しかし、「次はもっとキープできるように頑張る!」と話せば、周りの選手は助けるために素早くフォローに走ろうと前向きに次のプレーを頑張れるでしょう。高校生は放っておくと、そこまで考えて発言しないので、最初のきっかけとして大人がきちんと声掛けの方向性を示すべきだと考えています。野球で例えるなら二回も三振した、エラーをしたなど反省は自分一人ですべきです。チームメイトに対しては「次は必ずホームランを打つから!」と前向きな言葉を発し、チームの雰囲気を良くすれば、試合で勝つ力になるのです。特に、インターハイや選手権のような短期決戦には大切な考えで、大会期間中はチームを良くするための行動、発言、表情をすべきで、負のオーラは一切出さないよう伝えています。■発想のきっかけは中山雅史選手の姿勢こうした発想の原点は元日本代表の中山雅史選手(現・アスルクラロ沼津)のダイビングヘッドとスライディングです。身体を投げ出しても届かないクロスに対しても、中山選手は必ず「ナイスボール!」と伝えます。ダイビングヘッドやスライディングでも届かないボールはパスミスですが、それでも前向きな言葉を掛けられたチームメイトは「次は必ず良いボールを出します!」と次のプレーの活力になるのです。■前向きな思考は社会に出てからの人付き合いを豊かにする梅木翼(レノファ山口FC)は高校時代から、常にそうした前向きなプレーができる選手でした。チームが上手く行かない時に守備から試合に入ろうと考え、届きもしないスライディングを繰り返し、チームを盛り上げていました。ボールに届かず、セカンドボールが拾われても、「こぼれ球に反応しろよ」とチームメイトに愚痴を零すのではなく、「悪い!俺が寄せきれなかった」と口にしていました。そうした前向きな言動を続けるから周りが発奮し、チームの雰囲気が良くなるのです。前向きな思考は高校を卒業して社会に出てから求められる要素だと考えています。同級生だから、同じ部に所属しているからとの理由でなんとなく人付き合いをする高校生までとは違い、大学生や社会人になる19歳以降は違和感を覚えれば人付きをする必要はなくなります。自分が上手く行かない時に不貞腐れていても、周りが「元気出せよ」と励ましてくれていた18歳までとは違い、無視されるようになるのです。年を重ねるごとに自分と合わない人に合わせる時間は勿体ないと考えるようになり、気の合う人、心が通じ合える人との時間を大事にするようになります。一緒にいて、暗い気持ちになる人だと人付き合いがなくなってしまうのです。■苦しい状況が続いても人前では前向きに振舞うのも一流の条件プロスポーツ選手にも当てはまる考えです。Jクラブの収入は、ファンやサポーターの方からの入場料が多くを占めています。チームを応援する人だけでなく、"あの選手を応援したい"と思う人たちが足を運んでくださるから、選手はサッカーで生活ができるのです。ネガティブな言動する選手であっては、応援する人が増えません。チームが勝てず苦しい状況が続いたとしても、人前では常に明るく前向きに振舞えるのが、一流のプロスポーツ選手の条件だと考えています。<後編へ続く>※この記事は「常に自分に問え! チームの為に何が出来るか 立正大淞南高校の個とチームの磨き方」(竹書房・刊)より抜粋したものです。南健司監督
2021年05月10日最後のトップリーグ王者を決める戦いが、今週末より本格化する。『ジャパンラグビー トップリーグ2021』プレーオフトーナメントが2回戦に突入。レッド・ホワイト両カンファンレンスの上位勢も、ノックアウト方式のトーナメントに参戦するのだ。2回戦屈指の好カードに4月24日(土)・江戸川区陸上競技場でキックオフを迎えるクボタスピアーズ×ヤマハ発動機ジュビロを挙げるファンも多いだろう。初のトップ4、その先にある日本一も目論むクボタは開幕5連勝をマークするも、第6節はサントリーサンゴリアスに試合終了間際逆転トライを許し26-33、第7節・トヨタ自動車ヴェルブリッツ戦でもラストワンプレーでトライ、逆転コンバージョンを喫し24-25と2戦連続となる逆転負けが響きレッドカンファレンス(RC)3位に甘んじた。一方、五郎丸歩の現役ラストシーズンを初優勝で飾ろうと鼻息荒いヤマハ発動機だったが、第2節・リコーブラックラムズに22-23、第4節・キヤノンイーグルスにも32-40、V候補の神戸製鋼コベルコスティーラーズとパナソニック ワイルドナイツには完敗となり3勝4敗、まさかのホワイトカンファレンス(WC)6位に沈んだ。よって、トーナメント序盤戦からクボタ×ヤマハの好カードが実現する運びとなったのだ。4月20日にはクボタ・ヤマハ発動機の合同オンライン取材が行われた。クボタのセンター(CTB)立川理道主将、ロック(LO)大戸裕矢主将は次のように意気込みを語った。「ここまでいい準備ができている。ホームでヤマハとできるのは楽しみ。負けたら終わりという緊張感もあるが、それも楽しみたい。最後2試合負けてしまったが、7試合のリーグ戦では初キャップの選手も出て、毎試合反省しながらもチームとして成長してきた手応えがある」(立川)「負けたら終わりの中、どれだけ自分たちのフォーカスできるか、どれだけ自分たちのラグビーをできるか。6位に終わって満足している選手はひとりもいない。悔しさをプレーオフにぶつけたい。開幕前からケガ人がいる中、若手が成長した。とくにプロップ(PR)。これからのヤマハスタイルを継承する意味でもリーグ戦の意義はあった。あと12・13番も固定せずにチャレンジした。パナソニック、神戸相手にレベルアップできたのでは」(大戸)勝敗を分けるキーポイントとキーマンを問われた両主将はこのように答えた。「セットピース。ヤマハもこだわっているので、クボタとしてもセットピースを安定させてクボタらしいラグビーをしたい。(キーマンは)ひとり挙げるのは難しいが、80分間タフな試合になると思うので、ゲームをコントロールする9・10番に注目してもらえれば」(立川)「セットプレーがカギを握ると僕も思っている。(キーマンは)FW全員と言いたいが、山本幸輝かな。ヤマハがエネルギッシュにできるのは幸輝がいるから」(大戸)大戸裕矢(ヤマハ発動機ジュビロ)ヤマハ発動機ジュビロ提供スクラムの命運を握るPRのふたりも登場。クボタ・北川賢吾、ヤマハ・山本は今週末のゲームを盛り上げるべくサービス精神旺盛に挑発合戦を繰り広げた。「ヤマハと言えば代名詞が強力なスクラム。僕らも今季スクラムに力を入れてFWパックを作っているのでそこは負けられない。トイメンになるであろう幸輝さんには個人的にも負けられない」(北川)「ヤマハは絶対スクラムで負けられない。いいスタッツは出していないが、今究極のスクラムができている。試合が楽しみ。僕が近大4年の時に創部以来初めて北川選手がいた同志社大に勝った」(山本)「僕が出た試合では近大に負けた記憶はない」(北川)「(北川は)試合中ポーカーフェイス。PRには珍しく涼しい顔で組んでくるので、今回の試合では押されて“やっちまった”という顔にさせたい」(山本)「幸輝さんは1番としてはトップレベル。ただ押したら声を出す。言い方は悪いけどムカつく。今週は押させない」(北川)「俺を調子に乗らすんじゃないぞ」(山本)試合開始48時間前に発表された試合登録メンバーは以下の通り。【クボタスピアーズ】1海士広大、2マルコム・マークス、3北川賢吾、4デーヴィッド・ブルブリング、5ルアン・ボタ、6トゥパ フィナウ、7ピーター・ラピース・ラブスカフニ、8バツベイ シオネ、9井上大介、10バーナード・フォーリー、11タウモハパイ ホネティ、12立川理道、13テアウパ シオネ、14ゲラード・ファンデンヒーファー、15金秀隆、16杉本博昭、17羅官榮、18山本剣士、19青木祐樹、20末永健雄、21岡田一平、22岸岡智樹、23ライアン・クロッティ【ヤマハ発動機ジュビロ】1山本幸輝、2名嘉翔伍、3伊藤平一郎、4マリー・ダグラス、5ヘル ウヴェ、6大戸裕矢、7庄司拓馬、8クワッガ・スミス、9吉沢文洋、10清原祥、11シオネ・トゥイプロトゥ、12ヴィリアミ・タヒトゥア、13石塚弘章、14伊東力、15奥村翔、16平川隼也、17植木悠治、18大塚健太、19フレッド・ヒュートレル、20松本力哉、21篭島優輝、22中井健人、23サム・グリーンクボタ×ヤマハの翌日、同じ江戸川区陸上競技場で行われるNTTコミュニケーションズシャイニングアークス×キヤノンイーグルスに注目するファンも多いだろう。元スコットランド代表スクラムハーフ(SH)のグレイグ・レイドローが加入し、悲願のトップ4入りを目論んだNTTコムだが、試合によって波があり3勝1分3敗のRC4位、サントリーを2度優勝に導いた沢木敬介監督を迎えて上位進出を狙ったキヤノンイーグルスは日野レッドドルファンズ戦の試合中止が響き3勝3敗、WC5位に甘んじた。同じ五分の星だが、戦況は異なる。NTTコムは第7節にメンバーを落としたサントリーに31-94と大敗となったのが気になる。一方、キヤノンは3連敗スタート。神戸製鋼に10-73、パナソニックに0-47と沢木監督に代わったからと言ってすぐに結果を出すのは難しいと思われたが、第4節・ヤマハ発動機にシンビン(10分間の一時退場)を出しながら40-32で逃げ切ると、リコーには31-28と逆転勝ち、最後はNECグリーンロケッツに71-24と大勝で締めた。NEC戦後、沢木監督は「前半の入り20分、選手たちがしっかりいいパフォーマンスを出してゲームをコントロールできた。次のトーナメントに向けてチームとして成長できたゲームとなった」と手応えを口にした。重ねて言うが、惜しむらくは第6節・日野戦である。日野に新型コロナウイルス感染症陽性者が出て試合は中止、規定により両チームとも勝点2ずつを分け合った。スポーツの世界に「たられば」は意味をなさないが、もし試合が行われて下馬評通りにキヤノンが勝利していれば、勝点18となりNTTドコモレッドハリケーンズに代わってWC3位に浮上していた。プレーオフトーナメント2回戦の相手もRC6位のHonda HEATになるはずだった。NEC戦後、スタンドオフ(SO)田村優主将も「先週試合がなくなり、選手はすごく落ち込んでいた。(第6・7節で)勝点10を取りたかったので、できなかった思いを今日の試合にぶつけた。(3勝3敗という結果について、どう評価するか問われると)4勝3敗のつもりだった。先週、残念なことがあったので」と悔しさを露わにした。キヤノンフィフティーンとしては割り切れない思いもあるが、NTTコム×キヤノンの好カードが見られるファンは大歓迎だろう。NTTコムに2014年から在籍していた日本代表NO8アマナキ・レレイ・マフィが3月に退団、キヤノン入りした。第7節には今季初出場を果たし、トライも決めている。沢木監督も「力があるのは、みなさんも知っての通り。田村をはじめチームメイトが、しっかりサポートしてくれているので、彼もいい状態でゲームに臨めている。1年ぶりのゲームだったので、これからどんどん良くなっていくと思う」とフィジカルモンスターの復活に期待を寄せた。当の本人はいきなりの古巣との対戦に「がんばります」と語るのみ、秘めた思いはグラウンドで表現する。NTTコム×キヤノンと同様に東芝ブレイブルーパス×リコーも両カンファレンスの力関係を測る絶好のモノサシとなるだろう。ともに3勝4敗、東芝はRC5位、リコーはWC4位である。リコーはヤマハに23-22と逆転勝ちし、前回王者・神戸製鋼を相手に19-20と最後まで苦しめたのに対し、東芝は開幕戦こそトヨタ自動車に33-34と迫ったが、クボタに7-39、NTTコムに19-45と完敗。サントリーとの府中ダービーでは5-73というショッキングな大敗を喫している。サントリーとともに最多5回の優勝を誇る東芝の復活を願うオールドファンも多いが、結果はいかに。『ジャパンラグビー トップチャレンジリーグ2021』勢唯一の勝ち残り、近鉄ライナーズに期待するファンも決して少なくない。プレーオフトーナメント1回戦では後半早々にNO8ロロ・ファカオシレアが危険なプレーで一発退場(4月22日に以後6試合の出場停止が決定)となり、数的不利を強いられたものの、アグレッシブなディフェンスを貫き、宗像サニックスブルースに31-21と勝ち切った。次の相手はパナソニックである。トップリーグ4度の優勝を誇り、鉄壁のディフェンスでホワイトカンファレンスを1位突破したパナソニック絶対有利は揺るがない。両軍の戦力、今季の戦いぶりを比較すれば、ワンサイドゲームになることも濃厚だが、それでも、ホーム花園で大一番に挑む近鉄に期待を寄せずにはいられない。「パナソニックはチャンピオンだが、同じ人間に変わりない。彼らを倒して自分たちの目標を達成したい」というロック(LO)マイケル・ストーバーク主将の心意気もよし。SHウィル・ゲニア&SOクウェイド・クーパーの元オーストラリア代表ハーフ団の手綱捌き、4月12日発表の日本代表候補に最年少で選出されたCTBシオサイア・フィフィタの躍動に期待したい。【トップリーグ2021 プレーオフトーナメント2回戦】4月24日(土)東芝ブレイブルーパス×リコーブラックラムズパロマ瑞穂ラグビー場サントリーサンゴリアス×NECグリーンロケッツ秩父宮ラグビー場クボタスピアーズ×ヤマハ発動機ジュビロ江戸川区陸上競技場三菱重工相模原ダイナボアーズ×神戸製鋼コベルコスティーラーズ東大阪市花園ラグビー場4月25日(日)近鉄ライナーズ×パナソニック ワイルドナイツ東大阪市花園ラグビー場トヨタ自動車ヴェルブリッツ×日野レッドドルフィンズ秩父宮ラグビー場NTTコミュニケーションズシャイニングアークス×キヤノンイーグルス江戸川区陸上競技場Honda HEAT×NTTドコモレッドハリケーンズパロマ瑞穂ラグビー場『トップリーグ2021』プレーオフトーナメント2回戦のチケットは発売中(カードによっては予定枚数終了)。準々決勝のチケットは4月25日(日)午前10時~26日(月)午後11時59分まで先行抽選プレリザーブ、5月1日(土)午前10時より一般発売。チケット情報チケットぴあトップリーグ特設ページ
2021年04月23日4月25日(現地時間)に開催される世界最高峰の映画の祭典「第93回アカデミー賞授賞式」を、WOWOWではアメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアター他より独占生中継。案内役としては14回目の出演を果たすジョン・カビラ、そして初の案内役を務める宇垣美里に話を聞いた。新型コロナウイルスの影響が長引く中、開催が危ぶまれた第93回アカデミー賞授賞式は例年の2月開催から4月に延期に。映画館の閉鎖が続く現状を考慮し、インターネットを通じて配信された作品も各部門のノミネート資格を得る異例の条件が加えられた。その結果、作品賞にノミネートされた8作品は、オスカー前哨戦で強さを見せる『ノマドランド』、デヴィッド・フィンチャーがNetflixと手を組んだ『Mank/マンク』、さらに80年代、アメリカに移住した韓国人一家の過酷な運命を描く『ミナリ』など、例年以上に多種多様なラインナップに。一筋縄ではいかないのが、アカデミー賞の常ではあるが、今年は例年以上に予想が難しい。作品賞の最有力は2人そろって『ノマドランド』!――ずばり作品賞に輝くのは、どの作品だと思いますか?カビラ:日本からハリウッドを見守る僕らファンとしては、劇場公開を優先する作品がいつまで牙城を守れるか。それとも配信系の作品が、ついに栄冠に輝くか?そういう意味では『ノマドランド』と『Mank/マンク』の争いに注目ですね。振り返ると、アルフォンソ・キュアロン監督がNetflixと製作した『ROMA/ローマ』で監督賞を獲得しましたが、作品賞に及ばなかった(第91回)。うーん、でも最有力は『ノマドランド』かな。個人的には『ミナリ』に期待する部分もありますし。日本でも大ヒットしていますもんね。宇垣:私も「受賞するだろう」という意味で、劇場公開された『ノマドランド』が一番作品賞に近いと思います。実際に作品を拝見し、映像の美しさ、それに寄り添う音楽、主演を務めるフランシス・マクドーマンドの素晴らしさ…、作品としての完成度が非常に高いですよね。前哨戦でも評価されていますし、6部門ノミネートというのも強み。個人的に注目しているのは、『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア(原題)』。現代に地続きになった“Black Lives Matter”のメッセージが描かれた作品で、今回エントリー期間が延びたおかげで、候補にあがったので、どこまで伸びるのか未知数ですし。今年のアカデミー賞は“多様性の賛歌”になる!――監督賞に2人の女性(『ノマドランド』のクロエ・ジャオ、『プロミシング・ヤング・ウーマン』のエメラルド・フェネル)、主演男優賞と助演女優賞に『ミナリ』からスティーヴン・ユアン、ユン・ヨジョンがそれぞれノミネートされています。カビラ:“多様性”といかに向き合い、包括していくかはアカデミー賞にとって長年の課題だったわけで、今回のノミネーションは1つの回答だと言えますね。監督賞に韓国系アメリカ人のリー・アイザック・チョン(『ミナリ』)が名を連ねているのも快挙。単純に優劣をつけるのは難しいですが、今年のアカデミー賞が“多様性の賛歌”になるのは、間違いないと思います。宇垣:カビラさんがおっしゃる通り、多種多様な方々がノミネートされていますよね。特に俳優部門は、昨年受賞者が全員白人だったこともあり、これまでの反省をくんでいるのかなと。こういったアカデミー賞の選択は、とても前向きで素敵なことだなと思います。映画館だからこそ“没入”できる!配信の利便性に勝る魅力――近年のアカデミー賞は配信作品をどう扱うかが、大きな課題になっています。映画を観る方法もまた“多様”になる時代、おふたりにとって理想の映画体験はどんなスタイルですか?宇垣:コロナ禍で家から出られない状況が続きましたし、配信で映画を楽しむことができるのは、ありがたいことだと思います。見たいときに、何度でも見返せる利便性もありますし。一方で、私は映画館で映画を観るのが大好きなんです。やはり、あの没入感は自宅では得られませんから。カビラ:本当ですよね!同感です。暗闇で感性を研ぎ澄ませて、作品と対峙する体験は何物にも代えがたい。チケットを買って…、まあ、今はスマホで予約の時代ですけど、劇場に足を運ぶことで、映画はもちろん、出演者や作り手と“チームメイト”になれる感覚こそが、映画館の醍醐味ですから。――そういう意味で、コロナ禍では映画館で映画を鑑賞すること自体が、非常に貴重な機会となりました。カビラ:本当にそんな1年でしたよね。まだまだ先行きは不透明ですけど、もうエンターテインメントに対する渇望感は限界に来ています。不要不急っていったい何?って。心の潤いに、エンタメは絶対に必要不可欠なものですから。シアターがいかに貴重であり、必要であるか痛感しています。宇垣:私もエンターテインメントを摂取するために生きていますから、実際に緊急事態宣言が明けて、映画館に行ったときは、どれだけ自分が“この感覚”を求めていたか、そのありがたみも含めて、思い知りましたね。同じ空間で、一緒に感動を共有できる人がいることが、どれだけ私のことを支えてくれていたか…。ですから、自分なりに(エンターテインメントに対し)恩返しもしなくてはと思っています。コロナ禍での授賞式「驚きの連続をめちゃくちゃ期待」――エンターテインメントの真価が問われる現在、アカデミー賞が受賞式でどんなメッセージを発するのか大いに注目ですね。昨年の受賞式の映像を改めて見直してみると、もはや「これって夢なんじゃないか?」って思ってしまうほどで…。カビラ:超“密”じゃん!ってね(笑)。みんな普通にハグとかしていましたし。だからこそ、今年は厳しい制約の中で、どんな魔法をかけてくれるか?歌唱とかどうするんでしょうね…。それでも、スティーヴン・ソダーバーグら、プロデューサーたちが、想像を超えたマジックで魅せてくれるはず。実は、驚きの連続をめちゃくちゃ期待しているんですよ!一生に一度。もちろん(コロナ禍での授賞式は)これっきりにしてほしいですけど、だからこそ必見です。それでも夜は明ける、です!宇垣:そういう映画もありましたね(笑)。私も「魅せてくれるよね」って期待感が大きいです。いつか「第93回はいろいろ大変だったけど、良いセレモニーだった」とふり返ることができればいいなって。生中継のスタジオは、カビラさんがご一緒だから、安心して、授賞式を楽しもうと思っています。あっ、でも「ここは覚悟しておいたほうがいい」ってアドバイス、ありますか?カビラ:ないです!完全に気持ちを解放してください。ただ、僕が急に大声を出しても、驚かないでくださいね(笑)。話が脱線したら、引き戻してもらって。当日は式典の流れをある程度把握していますが、基本的には、視聴者の皆さんと同じ目線。例年通り、一緒に感動をシェアできればうれしいですね。「生中継!第93回アカデミー賞授賞式」は4月26日(月)午前8:30よりWOWOWプライムにて放送。4月26日(月)21時~WOWOWプライムにて放送。(text:Ryo Uchida/photo:Jumpei Yamada)
2021年04月19日少年団だけど、低学年の頃はテクニックに恵まれたメンバーばかりで大会も優勝か準優勝。みんなキラキラ楽しくサッカーしていたのに、クラブチームに移籍する子が出始めてチームが崩壊。Aチームの子が退団したらBチームから補充するけど、レベル差があってAチームの子たちが受け入れられず、失敗に罵倒したり仲間同士信頼しあってない。チームに失望して去っていく人も続出......。残された者たちであと2年サッカーを楽しむために、どうすればいい?とのご相談をいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、15年以上の取材で得た知見をもとにアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<もっと真剣にサッカーして!仲間との温度差に悩む息子をどう支えるか問題<サッカーママからのご相談>はじめまして。9歳の子どもを地元の少年団に通わせています。低学年の頃は、向上心も強く、テクニック共に恵まれたメンバーばかりで、大会は優勝もしくは準優勝と、みんながキラキラと楽しくサッカーをしていたように思います。しかし、中学年になって、Jクラブの育成組織や強豪クラブチームに移籍する者が出てきたころからチームが崩壊しだしました。残された子たちで新たにチーム作りをするはずでしたが、現実は......。上手いAチームの子が抜ければ、Bチームからの補充となるのですが、今までいた子との実力差があるので、Aチームのメンバーが補充メンバーを受け入れられず。仲間を信頼し合わないサッカーとなり、失敗に対して罵声がとんだり、言われた子は萎縮して思うように動かず自信をなくし再びBに落ちる......。そんなチームになってしまいました。誰もが楽しんでサッカーをしていない状況となり、このままこのチームにいたらダメになると、チームを去って行く者が多発し、完全に崩壊してしまいました。こういう状況を作ってしまったコーチへの不信感もありますが、残された者達で残り2年間サッカーを楽しんでいくために、どう親はフォローをしていけばいいのでしょうか?<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただきありがとうございます。いただいた相談文からしか類推できないので、事実の把握が100%合致しているかはわかりません。そのあたりはお許しください。■勝つ=楽しいという価値観だと、負け始めると崩壊することもご相談文を読んで最初に思ったのは、勝利を優先してきたチームにありがちな「歪み」だということです。「低学年の頃は、向上心も強く、テクニック共に恵まれたメンバーばかりで、大会は優勝もしくは準優勝」とあるように、息子さんの学年のチームは早熟な子がたまたま集まっていて、1、2年生の大会では勝てたのでしょう。似たようなケースはよく見受けられます。お母さんが「みんながキラキラと楽しくサッカーをしていた」と書かれているように、結果としてチームは勝利することで子どもをサッカーにつなぎとめていた傾向がありそうだと感じました。もしそうであれば、選手もコーチも「勝つこと=サッカーが楽しい」という価値観なので、負け始めるといとも簡単に「負ける=サッカーが楽しくない」に移行してしまいます。■Aチーム、Bチーム同等のほうが脱落したり辞める子がいなくなる私が少年サッカーを取材する中で、上記のことを理解しているコーチの方々は、自チームが低学年の大会で優勝したり勝ってしまうと危機感を募らせていました。お母さんの息子さんのチームのようなことが起きることを経験上知っているからです。例えば、Aコーチは、中学年まではなるべくチームをA、B同等にして大会に出場させるなど工夫していました。そのほうがチームの底上げになるし、脱落したり、辞める子もいなくなるからです。彼がそのように「4年生までAB同等」にしたのは、その数年前に3年生の途中でチームを去ったB君のことがあったからです。B君は3年生のはじめに入団。少し太っていましたが、頑張り屋さんでした。ただ、多くのチームメイトが1年生からサッカーを始めていたので、止める蹴るの技術の上達が少しみんなより遅れていました。試合には、チームがリードしていれば終わりごろに少し出場させる。それでもB君は満足しているだろうとAコーチは勝手に思っていました。でも、B君は3年生の秋くらいに突然チームをやめてしまいました。「試合にはほとんど出ていないので、ユニフォームがもったいないので使ってください」と母親から返されたAコーチですが「そのときは、まあ仕方ないか、サッカーにはまらなかったんだな」と思ったそうです。■全員出場のクラブで見違えるように成長ところが3年経って、子どもたちが6年生になったある日。他市も含めたカップ戦で、子どもたちが「あれ、B君じゃないの?」と騒ぎ始めました。背が高くなり体も締まって、足も速くなっていました。見違えるようにキビキビと動くB君はセンターバックを務め、危機察知能力が高く、チームのピンチをことごとくカバー。しかも、その腕にはキャプテンマークを巻いていました。あとで聞いた話では、チームをやめたB君はスクールでサッカーを続行。半年後に転校した先で民間クラブへ入団。そのクラブは全員出場させて、とてもいい指導だという評判のクラブでした。Aコーチは打ちのめされ、指導やチームの運営方法を見直しました。■子どもは勝つための駒ではないいかがでしょうか。お母さんはこのチームのやり方しかご存じないかと思います。「上手いAチームの子が抜ければ、Bチームからの補充となる」と書いていらっしゃいますが、子どもは勝つための駒ではありません。このやり方では、「今までいた子との実力差がある」のは当然です。だから、先述のAコーチは中学年まで同じ力でチームを編成したし、そのようなことを理解しているクラブは常にチーム編成を変えるなどして底上げを図っています。全員をうまくしようと努力しているのです。■補充メンバーを受け入れられない状況にしているのは指導者の責任それなのに「Aチームのメンバーが補充メンバーを受け入れらない」状況にしてしまっているのは、やはりコーチの責任でしょう。低学年のわずか1年か2年の間で勝ったり負けたりすることに意味があるかどうかを考えなくてはならないと思います。お母さんはこの状況をおかしいと感じて、ご相談してくださったと思います。何とかしたいという思いはよくわかります。「残された者達で残り2年間サッカーを楽しんでいくために、どう親はフォローをしていけばいいのか?」と問われていますが、ピッチで起きていることは指導者と選手の問題です。酷なようですが、ギスギスした関係が続き、そのことをコーチが問題にしない状況を親御さんが改革するのは無理でしょう。できるとしたら、お母さんがそのような不安を抱えていることを、コーチの方々や他の保護者と腹を割って話すことです。より良いチームにしていきたいことを訴えてはいかがでしょうか。ただ、残念ながら「保護者に意見されて考えを変えました」とおっしゃる少年サッカーの指導者を私は知りません。この世界を取材し始めて15年以上経ちますが、世の中的にもそう多くはない現状があるように感じます。■息子さんをフォローする方法(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)息子さんをフォローする方法があるとすれば、彼にすべてを委ねることです。「他のチームでやりたいなと思ったら、いつでも力になるよ。でも、このチームで楽しくサッカーをしたいと思うんだったら、どうしたらみんなで楽しくできるか考えてみよう」と言って、話し相手になってあげてください。そこで「何のためにサッカーをしているか」を話し合ってみてください。サッカー自体が楽しいから。今の仲間といるのが好きだから。さまざま出てくるでしょう。話しているうちに「今、自分はどうしたいか」が息子さんに見えてくるといいなと思います。決して良い環境とは言えなさそうですが、あくまで「息子が選んで在籍しているチーム」だと考えましょう。ここで悩んだり、どうしようかと考えたり、決断することは、あとで考えると良い経験になるはずです。そう考えて、親御さんは見守り役に徹してください。悩むのも、解決するのも、最後に決めるのも、息子さんなのです。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2021年04月14日2008年の選手権優勝、2度のインターハイ優勝など輝かしい経験を持つ流通経済大学付属柏高校が昨年から、新たなスタートを切りました。チームの礎を築いた本田裕一郎前監督からバトンを引き継いだ榎本雅大監督は就任と共に流経大柏の伝統を残しながらも、選手と今まで以上に向き合う新たな取り組みを始めています。今回は取り組みと共に、榎本監督が考える指導者と選手の関係性について話を聞きました。(取材・文・写真:森田将義)選手たちが自ら書き始めた日誌(C)森田将義■プロに行った選手は、このチームで成り上がってやる!という気持ちが強かった榎本監督は現役時代、習志野高校と国士館大学でDFとしてプレー。大学3年生次には総理大臣杯とインカレの2冠を達成しています。当時のチームメイトにはJリーグやJFLへと進んだ選手が多く、榎本監督は「負けず嫌いで、きつい練習でも心が折れない選手が多かった」と振り返ります。流経柏にも全国大会での活躍を目指し、各地から中学時代にエースだった選手が集まります。彼らも負けず嫌いばかりですが、スタメンの座を勝ち取れる選手や大学やプロで活躍できる選手は一握りの選手だけ。榎本監督は「最初は中学までからの変化に戸惑う選手も多い。競争を勝ち上がっていけるかは、信念がどれだけあるかに尽きる。プロに行く選手は、"絶対にこのチームで成り上がってやる!"という気持ちが強かった」と口にします。中学時代は自然とボールが集まっていた選手であっても、高校では同じようには行きません。ボールを上手く引き出せるようポジショニングを意識しなければいけませんし、定位置を掴むには目に見える結果も必要になります。試合で活躍するためには自分の特徴を知ってもらう必要もあるため、榎本監督は就任と同時にコミュニケーション能力を身につける取り組みを始めました。■チームの一員として認められるためには、貢献が必要その一つが、試合ごとに榎本監督がつける振り返りのチェックシートです。目標として掲げる選手権優勝を果たすために必要な対人プレー、セットプレーといったチームプレーの評価と共に、選手個人も10点満点で評価し、全員に対してのコメントも加えています。指摘した箇所を良くするために努力して欲しいとの意味と共に、評価が違うと感じたなら自分の意見をぶつけて欲しいと考えているからです。それでも、自分の意見を言えない選手が多いため、今年に入ってからは話す機会を増やそうと1対1の面談も始めました。6人のスタッフが持ち回りで1日3人ずつ全部員との面談を実施するのですが、与えられた時間は3分間。選手が話しやすいよう「緊急事態宣言の延長について」などテーマは選手自ら決めて話すのがルールです。「言葉はフランクで良いんです。尊敬語とか謙譲語でなくて良いから、考えたことを話して欲しい。どんな内容でも失礼だとは思いません。考えたことを話さない方が、人間関係を良くしようとしていないんだから失礼にあたると伝えています。僕が怒っていたことに対して、選手が意見してくれると"そんなことを考えていたんだ"と考え方を改め直すかもしれない」また、今年は今まで以上にミーティングの回数を増やすつもりです。理由について、榎本監督はこう話します。「チームや社会の一員になるのは、組織にどう貢献できるかだと思うんです。サッカーでいえば相手選手をマークしたり、危ない場面で身体を張って防ぐことが勝利への貢献になり、チームの一員として認められる。そうした貢献が分かりやすいのがミーティングで、議題に対して何も意見しない選手は貢献していないことになるんです。何もしない選手に手を差し伸べてくれる人はいません」ミーティングの内容は誰がどんなことを話したか明確にするため、議事録として残します。何も話さない選手に対しては、「テーマに対して自分は何を考えたのか、みんなに伝えなければいけない。"みんなに合わせるよ"といった発言は貢献ではない」と問いかけるそうです。■上下関係ではなく、一人の人間として向き合いたいこうした取り組みを始めたきっかけの一つが、海外遠征です。海外の選手はコーチとフランクな関係であることに驚いたと振り返ります。コミュニケーションの量が日本とは比べ物にならないくらい多く、冗談も飛ばし合う関係性が選手の成長に繋がると考えるようになりました。選手との対話を大事にする榎本監督(C)森田将義「僕らがもっと選手に寄っていかなければいけない」と話す榎本監督は、こう続けます。「指導者と選手ではなく一人の人間として向き合いたい。卒業生を見ていると、自分より立派な人間はたくさんいる。彼らに対して立派なことばかり言っているけど、自分の方が出来ていないなって思うことがたくさんある。人間力の差に年齢差はない。僕らも学ばせて貰っている。大人と子どもが切磋琢磨しながら成長していけるのが、これからの教育の理想かなと思うんです」今年から立ち上がった下部組織であるクラブ・ドラゴンズ柏U‐12の稲垣雄也監督との関係性も榎本監督らしさを感じます。稲垣監督は榎本監督が流経大柏で指導を始めた初年度の選手ですが、「教え子なのに、そんなこと言うの?と思う時がある」と榎本監督が笑うくらい関係性はフレンドリー。「上っ面で褒めてくれるだけでなくて、悪いことまで指摘してくれる人とは人間関係が良好になっていくと思うんです。イナも僕の悪い所があれば、ちゃんと指摘してくれるから大事な存在です。『この人、凄くきっちりしているけど、裏ではどうなんだろう?』ではなく、『榎本は表裏がなく、ずっとあのままだよ』と思われる方が、人間関係ができていくと思います」■不貞腐れるなら、意見して欲しい選手との関係性も変わりません。「コーチと選手の関係になると"はい"か"いいえ"しかなくなる。不満な顔を見せる選手もいるけど、不貞腐れているくらいなら『僕はこう思っています!』と言えば良いんです。それに対してうるさいとは思いません」そうした考え方は挨拶にも反映されています。日本の部活動では選手が誰かとすれ違うと足を止め深々と挨拶をするのが美徳とされています。「形だけになっている事もあるので、本当にそれで良いのかと疑問に思う。大人の方から、『こんにちは』と声を掛ければ、子どもたちが凄いなと思い、見習うかもしれない」と考える榎本監督は自ら進んで生徒に挨拶をします。こうした新たな取り組みによって進んで自らの意見を発信できる選手が増え始め、練習の活気が溢れています。また、ピッチ外でも選手主体の取り組みも始まりました。ミーティングの機会を増やそうとしても、コロナ禍で話し合う時間を長くはとれないため、話せる選手は限られてきます。思ったことを口にできない選手が多いと感じたことから、背番号順で日誌を書き始めたのです。まだ書く内容は大人からすれば物足りないかもしれません。書き忘れる選手もいますが、流経柏の取り組みは選手が成長していくためのステップとして今後の人生に活きてくるはずです。後編では、今年から立ち上がった下部組織であるクラブ・ドラゴンズ柏U-12の稲垣雄也監督に指導する中で感じる保護者の変化と、育成の理念などを伺いましたのでお楽しみに。
2021年04月12日この春からお子さんがサッカーを始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。サッカーを通して身に着けてほしいものは何ですか?運動能力をアップさせることだけでなく、心も成長させてくれるサッカー。サッカーを通じて子どもがどう変わっていくか。前回に引き続き、シンキングサッカースクールのコーチたちに聞きました。サッカーをすることで身につくは自分で考える力、チャレンジする精神、それ以外にも社会に出るまでに身に着けたいスキルがたくさんあります。ぜひご覧ください。(取材・文:前田陽子)サッカーで身につくこととは(写真は少年サッカーのイメージ)<<前編:サッカーを通じて「自分で考えて動く力」が身につく理由とは?■チャレンジする力がつく親御さんが子どもに求めることのひとつにチャレンジ精神があります。菊池コーチは「サッカーはミスが多いスポーツで、ミスが起こるのはチャレンジをしているから。そして、ひとつひとつのミスにその都度落ち込んでいては練習や試合は進まないので、すぐに気持ちを立て直して次のチャレンジをする必要があります。チャレンジを続けることで得られる成功体験が次のチャレンジにつながります」とサッカーは常にチャレンジの連続であることを教えてくれました。プレイをすることは=たくさんのチャレンジをすること。そして成功をして、褒められる・認められるという経験をすると、授業などでも手を上げて発言ができる子になれるはずです。■周囲に気配りができるようになるまた、サッカーはボールのあるところ以上に、ボールを持っていない人の動きが重要です。自分がボールを持っている選手の守備をしているなら、その選手に注目しながら、反対側にいる相手選手とチームメイトの動きも考えなければなりません。彼らが何を考えどんな動きをしようとしているのかを想像することがいいプレイにつながります。「ピッチ上で日々、チームメイトや相手選手が何をしようとしているのか、何をしたいのかを考えるようになると、ビッチの外でもお友だちの思いを想像することができるようになります。それによってどう声をかけよう、どう動いてあげようという気配りが生まれます」と柏瀬コーチが子どもたちの変化を明かしてくれました。■負けず嫌いになって集中力も高まる近頃の学校生活では平等が基本で勝ち負けのシチュエーションは多くありません。けれどスポーツには勝ち負けがあり、勝ちたい、負けたくないという気持ちが自然と芽生えてきます。「大人の世界には順位があります。子どものころからサッカーを通じて勝ち負けを経験することは、いずれ必ずためになります。また、勝つためや上達のためには目標を立てる必要があります。目標に向かって何かを取り組むときの子どもの集中力や爆発力には本当にすごいもの。普通ではちょっと無理だろうと思えるほどの力が発揮されます」と菊池コーチ。普段家庭では見せない顔を、ピッチ上では見せてくれることをコーチたちは知っています。■自分の意見が言え、話の折り合いをつける力がつくまた、チームスポーツでは、自分の気持ちや意見を伝える必要があります。話し合いができるようになるには、自分に自信がつくことが必要。チャレンジをして、成功体験を積むと自分を表現できるようになります。プレイ中には、引っ張ったり、押したりという小さなトラブルもよく起きます。点を取り合うスポーツなので、理不尽と感じる場面もないとは言えません。ピッチ上にはコーチも監督もいないので、そこを話し合うのも子どもたちです。さまざまなシチュエーションを経験することで、話し合いができるようになり、折り合いの付け方がわかるようになります。サッカーはチームメイトとの話し合いを通じて、考えて意見を言う力が付きます(写真は少年サッカーのイメージ)■学校外の友達ができるスクールなどに入ることの利点として、学校とは違うコミュニティのお友だちができることもひとつです。「多少、学校でイヤなことがあってもスクールに行くことで気分転換ができたり、悩みの相談ができたりします。居心地がいいことばかりではないかもしれませんが、いろいろな価値観、いろいろな立場の人と知り合えるのは、社会に出る前の経験としてとても素晴らしいことだと思います」と菊池コーチ。■自分の意見が言え、話の折り合いをつける力がつくさらに、スポーツにはルールがあり、守ることが大原則。ルールの大切さが理解できるようになると、生活面でもルールが守れるようになります。また、あいさつをする機会も増え、自然とあいさつも出来るようになります。「子どもたちは大好きなサッカーをするために時間をどのように使うのがいいのかを考えて、実行していますね。スクールでは練習前に宿題をする子もたくさんいます。高学年になるころには、どう1日を過ごすと快適なのかを考えて、時間をコントロールする子も多いです」と菊池コーチがスクール生の様子を教えてくれました。サッカーにはプレイを通じて子どもが成長できる要素がたくさんあります。そのベースは子どもたちがサッカーを楽しむこと。そのためにコーチたちも日々切磋琢磨しています。スクール生の親御さんからは「子どもたちの扱いがとてもうまくて安心して通わせられます」という嬉しいご意見もたくさんいただいています。そんなコーチたちの元でサッカーをはじめてみませんか?考える力が身につくサッカースクール「シシンキングサッカースクール」の詳細はこちら
2021年04月09日この春からお子さんがサッカーを始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。数あるスポーツの中からサッカーを選んだ理由は何でしょう。サッカーを通して身に着けてほしいものは?それらはご家庭ごとに違うかもしれません。運動能力をアップさせることだけでなく、心も成長させてくれるサッカー。サッカーを通じて子どもがどう変わっていくかを、日々子どもたちと触れ合っているシンキングサッカースクールのコーチたちに聞きました。楽しんでプレーしたりチーム活動をするなかで体力やコミュニケーション力など、様々な力が自然と身に付くサッカーの魅力を存分にお伝えします。お子さんのサポートに役立ててください。(取材・文:前田陽子)サッカーで身につくこととは(写真は少年サッカーのイメージ)■楽しく身体を動かしながら運動能力が高まる子どもにとってのスポーツの魅力は「身体を動かすことの楽しさや勝つことの喜びなど、スポーツの楽しさが体験できること」とコーチたちは口を揃えます。その中でも「サッカーはボールひとつがあればできるスポーツ。バスケットボールのように手でボールをつくのは子どもには難しく、野球は複雑なルールがありますが、サッカーはボールが蹴れればOKというシンプルさです。遊びの延長のようにできるので、子どもの最初のスポーツにぴったりです」と黒滝コーチは言います。加えて、サッカーは身体全てを使うスポーツで、前後にはもちろん、横にも斜めにも走り、ジャンプもして、スローインでは手も使います。ボールを蹴りながら走ることを筆頭に、バックステップを踏んだり、相手を追いかけたりという非日常の動きの連続。その動きを続けることで、五感で察知したものを判断して筋肉を動かす過程をスムーズに行う、コーディネーション能力も身に付きます。■ボール遊びもままならない現代だからこそまた、暑くても寒くても一年中行うのもサッカーの特徴。持続的に運動するので自然と体力がつき、風邪などを引きにくくなります。近所の公園では遊具も限定され、ボール遊びもままなりません。スクールに入ればコーチたち大人が見守っているという安心安全な環境も得られます。外で遊ぶ時間が減っている現代だからこそ、オンラインではなく実際に人と会って一緒に運動することで得るものがたくさんあるはずです。■「ごめん」「ありがとう」が言える子になる、周りを思いやる力がつくサッカーは圧倒的にミスの多いスポーツで、誰かに補ってもらったり、誰かを助けたりしなければ成り立たちません。常にチームメイトはもちろん、対戦相手のことを考えてプレイしなければならないので、最初はひとりよがりのプレイばかりでも続けているうちに協調性が身に付きます。また、自分も仲間もミスをすることが当然なので、ありがとう、ごめんねが自然と言えるように。自分を反省して、感謝する心が育つのです。そういったことを重ねてチームメイトや周囲の人を思いやれる子になります。■常に状況が変化するスポーツだから、自分で考えて判断する力がつくサッカーは、野球のようにセットポジションに入るという場面がなく、プレイが切れるタイミングがありません。ピッチにいる間は常に状況が変化し、その場面場面で瞬時に最善の判断をしなければなりません。助言を求める時間はないので、ドリブルをするのかパスをするのか、右に行くのか左に行くのかなどを自分で判断することを繰り返し行います。「日常生活でも、朝と昼、昼と夜では状況も変わります。いつも同じ判断でいいという場面は滅多にありません。状況を判断してどうすればいいのかを常に考え、最善だと思う判断ができるようになりたいですよね。サッカーをすることで、判断力、決断力、そして行動力が身に付きますよ」と柏瀬コーチが普段の生活での変化を教えてくれました。サッカーは常に自分で考えて動くスポーツ(写真は少年サッカーのイメージ)大人になるにつれ、自分で考えて行動できることの大切さを実感する保護者の方も多いと思います。それらは、ある年齢に達したらいきなり身につくものではありません。子どもの頃から徐々に身に着けさせることが必要です。プレーが途切れず常に自分で考える事が習慣化されるサッカーを通じて、自分で決めて行動できるようになるのです。そして、ミスのスポーツなので仲間にフォローしてもらう場面も多いため、自然と「ごめん」「ありがとう」が言えるようになり、相手を思いやることができるようになります。学校でも社会でも活きる力をつけることができるスポーツなのです。お子さんの「楽しい」を応援しながら、人間的な成長をサポートしてあげる参考にしてください。考える力が身につくサッカースクール「シシンキングサッカースクール」の詳細はこちら
2021年04月07日『ジャパンラグビー トップリーグ2021』第6節でふたつの全勝対決がラインナップされた。ホワイトカンファレンスの神戸製鋼コベルコスティーラーズ×パナソニック ワイルドナイツと、レッドカンファレンスのサントリーサンゴリアス×クボタスピアーズだ。『トップリーグ』初代王者であり前回覇者でもある神戸製鋼に最多タイの優勝5回を誇るサントリー、優勝4度のパナソニックと強豪ひしめく中、クボタが堂々と名を連ねる。これまでクボタはトップ4に入ったことすらない。最高位は6位である。2011・2012年度は下部リーグでの戦いを余儀なくされた。シーズン不成立となった昨季も4勝2敗に終わっている。立川理道(クボタスピアーズ)(C)スエイシナオヨシそれが今季は開幕5連勝を飾った。第6節・サントリー戦の結果次第ではターゲットであるトップ4入り、さらには悲願である日本一も見えて来る。大一番を前にさぞや気合も入っているだろうと思われたが、3月31日・オンライン取材に出席した立川理道主将には気負いもなければ気後れもなかった。「この試合が特別な試合だとは思ってはいない。全勝対決はうれしく思う。ポイントのセットピースで強みを出していきたい。セットピースで優位に立てれば、クボタのラグビーができるのでは」決してサントリーを軽んじているわけではない。今季のレギュレーションはリーグ戦後のプレーオフトーナメントで覇権を争う。勝負の時はまだ先である。主将は目の前の試合にフォーカスする重要性を説く。「この試合はレギュラーシーズンの1試合。自分たちはまだ優勝したことがないので、プレッシャーはない。今までやって来たプロセスを信じてやるだけ。あまり先を見ずに目の前の一戦一戦を見ていくことが重要」フラン・ルディケヘッドコーチ(HC)はサントリー戦へ向けて、興奮を隠そうとはしなかった。「エキサイティングな気持ち。この試合のために36週かけてきたと言っても過言ではない。ピークを迎えられるよういい準備をしている。我々のプランもある。土曜日の試合でどれだけベストなパフォーマンスを出せるか。両チームともレベルが高く、互いに強みがある中、鍵はいかに状況に応じたプレーができるかだ」2016-2017シーズンに就任して以来、チームを強化し続けて来たHCは今季の快進撃をこのように説明した。「過去5シーズンハードワークしてきたが、今季はいいスタートを切り、コンスタントにいいパフォーマンスができている。それはメンタルの成長が大きい。あとリクルートの部分。ライアン・クロッティ、マルコム・マークス、バーナード・フォーリーが加わり、彼らがチームを助けてくれている」今季加入した南アフリカ代表33キャップのフッカー(HO)マークスについて、指揮官が「ほかのチーム、どこに行ったとしても試合に出られる選手。フロントロウにもラインアウトにも自信を植え付けている」と称せば、主将も「これまでもセットピースに自信を持っていたが、彼が入ってトップリーグトップクラスのセットピースに押し上げてくれた」と評した。ここまでMVP級のパフォーマンスを披露しているマークスもサントリー戦を楽しみにしていた。「サントリーがいいチームなのは理解しているが、まず自分たちのやるべきことにフォーカスしたい。サントリーのアタックがいいことは知っているが、自分たちのラグビーに集中したい。(セットピースでは)すごいに戦いになるだろう。サントリーはセットピースが強いが、我々もセットピースに自信を持っている」所属2年目となるニュージーランド代表48キャップのセンター(CTB)クロッティもマークスらFW陣を頼もしく感じている。「FWパックは我々の強み。デカくて強い彼らもエキサイティングな気持ちだと思う。クボタのインパクトはトップリーグでも上位だと思う。自分は自分の仕事をするのみ。ハイスタンダードで臨めば、自分たちのラグビーはできるはず」ピッチ上の仕事だけではない。今季は外国人登録の関係でフル稼働できていないが、クロッティは問題ないと語る。「私の仕事はチームをよくすること。試合に出てなくてもほかの選手の成長に貢献できることはたくさんある。現在はノンメンバーがエネルギーを持ち、アグレッシブに準備することでチームの成長につながっている。このチームがうまくいっているのはクボタのチームカルチャーがよく影響している」勝利のためにできることはすべてやる。オーストラリア代表71キャップのスタンドオフ(SO)フォーリーに、オールブラックスのチームメイトだったボーデン・バレットの弱点は伝えたとクロッティは笑う。「バレットとは代表でも長いことやってきた。『スーパーラグビー』では敵同士だったが、日本で対戦するのは楽しみ。彼のプレースタイルを考えると、ディフェンスで時間とスペースを奪うのが大切。彼のラン、パス、キックを取り除けば効果的に止められる。フォーリーはアタックで多くの役割を担っているので、バレットの秘密もすべてを話した(笑)。今自分はクボタのキャップをかぶっているので、チームのために話した」ボーデン・バレット(サントリーサンゴリアス)(C)F.SANO対するサントリーここまで一切隙を見せていない。スコアから両軍の力関係は計れないが、これまでの戦いぶりを振り返ってみたい。【第1節】クボタ43-17宗像サニックス三菱重工7-75サントリー【第2節】東芝7-39クボタHonda14-31サントリー【第3節】クボタ34-24NTTコムサントリー75-10宗像サニックス【第4節】クボタ38-7Honda東芝5-73サントリー【第5節】クボタ32-17三菱重工トヨタ自動車36-39サントリー改めて見ると、サントリーの圧勝ぶりが際立っている。しかも、前節はトヨタ自動車との接戦を制した。ブレイクダウンでトヨタが優位に立ち、前半は12-26とリードを許すも、後半に早々にテビタ・リー&中野将伍のウイング(WTB)勢の連続トライで主導権を握る。すると、19分にスクラムハーフ(SH)流大のトライでついに同点と思われたが、長いTMOによってトライは無効となった。並のチームならばここで流れを失うのだが、サントリーは慌てず騒がず。23分にテビタ・リーがこの日2本目、リーグトップタイに並ぶ9トライ目を奪い、あっさり同点に。その後1本ずつトライとコンバージョンを決めて36-36で迎えた41分、10mラインを超えた左側からサントリーはペナルティゴール(PG)を選択。ここまで6本中3本成功とショットの精度を欠いていたバレットだが、最後の最後でポールに当てながら成功、劇的勝利となったのだ。ワンサイドゲームで圧倒するだけではなく、負けパターンでも最後に勝利を手繰り寄せる勝負強さをサントリーは見せ付けたのだ。試合後にミルトン・ヘイグ監督は「接戦となったがボールがよく動いたいいゲームだった。前半はミスが多く、トヨタにプレッシャーをかけられた。後半はフェイズをしっかり重ねることで修正できた。後半の出来には満足しているが、試合を通して自分たちのプレーを出せなかった」と反省の弁を忘れなかった。またCTBを務める中村亮土主将は苦戦する展開にも「試合前から80分でポイントを勝っていればいいというマインドセットで臨んだ。前半からプレッシャーをかけ、これが後半に効いてくると思っていたので、余裕を持ってプレーできた」と想定内だったと明かした。さらにクボタ戦へ向けて「今まで大勝の試合が続いていた中、こういうタフな接戦を経験できたのは今後2試合、トーナメントへ向けてもいい反省ができるのがよかった。次もこれまでと同じようにベストの準備をすること。メンバー・ノンメンバー含めて一体感を持っていい準備をしたい」と続けた。シビれる場面でのキックを託されたバレットも「(最後のPGは)接戦だったが、その中でも落ち着いて自分のプロセスを大事に蹴られるように常にトレーニングしている。重要なキックだと理解しているが、落ち着いてキックできた。風の向きがコロコロ変わって難しかったけど」と落ち着き払った様子だった。キックオフ48時間前に発表される試合登録メンバーは以下の通り。【サントリー】1森川由起乙、2中村駿太、3セミセ・タラカイ、4ハリー・ホッキングス、5辻雄康、6飯野晃司、7小澤直輝、8ショーン・マクマーン、9流大、10ボーデン・バレット、11テビタ・リー、12中村亮土、13中野将伍、14江見翔太、15尾崎晟也、16堀越康介、17石原慎太郎、18垣永真之介、19小林航、20西川征克、21齋藤直人、22田村煕、23サム・ケレビ【クボタ】1海士広大、2マルコム・マークス、3山本剣士、4デーヴィッド・ブルブリング、5ルアン・ボタ、6トゥパ フィナウ、7ピーター・ラピース・ラブスカフニ、8バツベイ シオネ、9井上大介、10バーナード・フォーリー、11山崎洋之、12立川理道、13テアウパ シオネ、14ゲラード・ファンデンヒーファー、15金秀隆、16杉本博昭、17羅官榮、18北川賢吾、19青木祐樹、20末永健雄、21藤原忍、22岸岡智樹、23ライアン・クロッティサントリーは中野が満を持して本職CTBで初先発、トヨタ戦でフィニッシャーの役割を担ったオーストラリア代表33キャップのサム・ケレビはベンチで戦況を見つめる。一方のクボタ、天理大を『大学選手権』初優勝に導いたSH藤原が早速メンバー入り。中野、SH齋藤との再会を「早稲田の同期のふたりがいるサントリー戦、彼らもおそらく出てくるので、自分自身もメンバーに入って勝負したい」と待ち望んでいたSO岸岡もメンバーに名を連ねた。今季もサントリーが勝利し、対クボタ12連勝をマークするのか、今季こそクボタが白星を獲得し、2004-2005季以来の勝利を飾るのか。果たして、全勝をキープするのはどっちか。『トップリーグ2021』レッドカンファレンス第6節・サントリーサンゴリアス×クボタスピアーズは4月3日(土)・秩父宮ラグビー場にてキックオフ。取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)
2021年04月02日『ジャパンラグビー トップリーグ2021』第5節で全勝対決がラインナップされた。トヨタ自動車ヴェルブリッツ×サントリーサンゴリアス。今後のレッドカンファレンス上位争いを占うのはもちろん、プレーオフトーナメントに向けて重要な試金石となる一戦である。最後の『トップリーグ』で最多優勝記録更新を目指すサントリーと、初のタイトル獲得を目論むトヨタ自動車のそれぞれの現在地がわかる80分間になるだろう。タイトルを見据える両チームだが、『トップリーグ』以降の対戦成績を見るとサントリーが15勝1分2敗と圧倒する。シーズン不成立となった昨季もサントリーが60-14で大勝している。トヨタ自動車の勝利は2010-2011季まで遡らなければならない。トップリーグ2018-2019開幕戦・トヨタ自動車×サントリーより姫野和樹(C)F.SANO通算成績は差がついたが、白熱した好ゲームを思い出すファンも多いだろう。『トップリーグ2018-2019』開幕戦では終盤までトヨタが25-20とリードするも、サントリーの怒涛の猛攻に遭う。攻めるサントリーに耐えるトヨタという構図の中、後半44分に姫野和樹主将(当時)がシンビンで一時退場……。数的不利に陥っても意地でもゴールラインを割らせないトヨタであったがとうとう後半49分、サントリーに認定トライを許し25-27の逆転負けを喫した。姫野は最後まで諦めないチームメイトの姿を見て涙を流したのだった。2017-2018季第8節では後半19分までトヨタが31-13とリード。しかしサントリーのスタンドオフ(SO)小野晃征にPGを決められて後半35分、ついに31-32と逆転された。それでもトヨタは後半41分に再逆転のチャンスを得た。ハーフウェイライン超えた地点でトヨタがPGを獲得。だがSOライオネル・クロニエのキックはわずかに届かず、サントリーが32-31の薄氷を踏む勝利を手繰り寄せたのだった。今季の両軍の戦いぶりを振り返ってみたい。トヨタ自動車は開幕戦で東芝ブレイブルーパスの猛烈な追い上げに遭うも34-33で逃げ切った。第2節では開幕戦の反省を生かし、NTTコミュニケーションズシャイニングアークスを相手に47-29ときっちりゲームを締めた。第3節・Honda HEAT戦では粘り強いディフェンスを披露、ゲームをコントロールしチャンスを決め切り45-3の完勝。3月13日の第4節・宗像サニックスブルース戦では初めてオーストラリア代表現主将のフランカー(FL)マイケル・フーパーと元ニュージーランド代表主将のNO8キアラン・リードがスタメンで揃い踏み。開始2分、FLフェツアニ・ラウタイミの先制トライを皮切りに前半の内に7トライをマークし勝負を決め最終的には61-29と大勝した。サニックス後のサイモン・クロスHCは前半の出来に満足したものの、「後半はラックなど密集でのプレーがうまくいかず、仕事をやり切れなかった。またオフロードをやり過ぎて、セットピースのチャンスを生かせず、相手に点を取られてしまった」と反省の弁を述べた。また、初めて同時出場したリード&フーパーについて、「リードはリーダーシップを体現してくれるプレーヤー。素晴らしいスキルを持ち、キャッチ&パス、キャリー、ラインアウトでリーダーシップを発揮し、チームへ付加価値を与える。フーパーはプレッシャー、キャリーで強みがある。特にセットピースでアタック・ディフェンスどちらでも細かいところでいい仕事をしてくれる。ふたりともチームにとても大きなインパクトを与えている」と評価した。マン・オブ・ザ・マッチに選出されたフーパーは「前半は非常に満足をしている。強いモールや風を強みに生かして、いい形で前半を終えることが出来た。後半に関しては、サニックスの追い返しでの自分たちのディシプリンに課題が残った。個人としてはレッグドライブ、キャリー、タックルといったところでいいパフォーマンスは出来たのかな」と振り返るとともに、「このタイミングで1週間バイウイークがあることは、本当にいいこと。4連勝からいかに進歩していくか、どこがうまくいったか、どこがうまくいかなかったか、4試合通じてレビューを重ねて、次のサントリー戦につなげたい」と第5節を睨んだ。3月23日のメディア対応にはクロンHCとラウタイミが登場。指揮官は「サントリーはすべてにおいてとても優れたチーム。どのポジションも選手層が厚く、ゲインラインを突破できる選手も多く、幅を使った鋭いアタックができる。チームとして成熟している」と分析し、「サントリーは東芝戦でも早いラックスピードからオフロードにつなげ、さらにラックスピードを上げていく攻撃を展開していた。そうさせないディフェンスが必要になってくる」と明かした。ラウタイミも「サントリーはすごくボールを動かすチームなので、それを止めることが必要。フィジカル面で勝てれば、勝機は十分あると思う」と同調した。一方のサントリーは問答無用のアタッキングラグビーで4連勝をマーク。三菱重工相模原ダイナボアーズとの開幕戦ではウイング(WTB)テビタ・リーの5トライなど計11トライを量産し75-7と大勝。第2節はHondaの魂のこもったタックル、粘り強いディフェンスに手を焼きながらも31-14ときっちりボーナスポイントも獲得した。第3節・サニックス戦もセンター(CTB)ケレビの3戦連続トライ、オールブラックスの司令塔ボーデン・バレットの1トライ10ゴールなどで75-10と圧倒。極め付けは前節だ。3月13日わずか12分での雷雨中止を受けて、20日に仕切り直しとなった東芝との第4節再試合である。サントリーは東芝が規律を乱しペナルティをおかせば、すぐさまPGで加点、バレットの3連続PGで主導権を握った。またバレットの多彩なキックで東芝の前へ出るディフェンスの出足を止めると、スピーディな連続攻撃やバレットのセンスが光るパス、中村亮土&ケレビのCTBコンビやNO8テビタ・タタフら個の能力を生かした突破で一方的にライバルを攻め立てる。ケレピの2試合連続2トライやタタフのハットトリック、バレットの24得点など府中ダービーで73-5の記録的大勝を収めたのだった。ボーデン・バレット(サントリーサンゴリアス)試合後、ミルトン・ヘイグ監督は「今日の試合結果については大変満足している。ボールを持っている時も持っていない時も、相手にいいプレッシャーをディフェンスで与え、いいターンオーバーもいくつかできた。今日はチームの総合力が出る形になった。これはノンメンバーを含めた選手たちがハードワークをしてくれた結果」と選手たちを称えた。第4節の中止・再試合によって貴重な休息がなくなった影響について問われたが、指揮官は「今週少しローディングは抑えた形でのトレーニングをした。ここからビッグマッチが続く。チーム内の競争がチームの総合力を生む。ポジションごとにしっかりチーム内の競争をした上で結果につなげていきたい」と選手層の厚さでカバーすると語った。ピッチ上で異彩を放つSOバレットが「来週はトヨタ戦があるが、しっかり自分たちのやっているシステムを信じてプレーすること。また、自分がチームに対して何か付加価値を与えられることがあれば、それをやりたい」とコメントすれば、マン・オブ・ザ・マッチに選出されたタタフも「来週の試合に向けてしっかり準備したい。相手にはインターナショナルレベルのプレーヤーがいるのでバトルに負けないようにがんばっていきたい」と前を向いた。キックオフ48時間前に発表される試合登録メンバーは以下の通り。【トヨタ自動車】1三浦昌悟、2彦坂圭克、3淺岡俊亮、4秋山大地、5マイケル・アラダイス、6吉田杏、7マイケル・フーパー、8フェツアニ ラウタイミ、9茂野海人、10ライオネル・クロニエ、11ヘンリー ジェイミー、12マレ・サウ、13ロブ・トンプソン、14高橋汰地、15ウィリー・ルルー、16加藤竜聖、17高橋洋丞、18伊尾木洋斗、19ジェイソン・ジェンキンス、20タウファ オリヴェ、21滑川剛人、22岡田優輝、23チャーリー・ローレンス【サントリー】1森川由起乙、2堀越康介、3垣永真之介、4ハリー・ホッキングス、5辻雄康、6ツイ ヘンドリック、7ショーン・マクマーン、8テビタ・タタフ、9流大、10ボーデン・バレット、11テビタ・リー、12中村亮土、13梶村祐介、14中野将伍、15尾﨑晟也、16中村駿太、17石原慎太郎、18セミセ・タラカイ、19飯野晃司、20小澤直輝、21齋藤直人、22田村煕、23サム・ケレビトヨタはリードがメンバー外となったことを受け、ラウタイミは本職のNO8でのスタメン出場となり、サントリーはCTBの先発を梶村が勝ち取り、ケレビが後半からの登場となる。果たして、トヨタ自動車がタイトルにふさわしいチームだと証明するのか、サントリーの快進撃が続くのか。全勝を守るのはどっちだ。『トップリーグ2021』レッドカンファレンス第5節・トヨタ自動車×サントリーサンゴリアスは3月27日(土)・パロマ瑞穂ラグビー場にてキックオフ。取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)
2021年03月26日メダルを目指すのであれば、避けて通れない相手である。U-24アルゼンチン代表。これまで金メダルを2度、銀メダルを2度獲得し、『東京五輪南米予選』を1位突破してきた世界トップクラスの強豪である。今回はオーバーエイジのGKヘレミアス・レデスやパワフルなFWアドルフォ・ガイチなど、フェルナンド・バティスタ監督のもと本気のメンバーが来日した。横内昭展代行監督は強豪との2連戦に向けて「アルゼンチンに対していいゲームできるようスタッフ・選手一同いい準備をしたい。もう一度このチームでやるべきことを共有したい。まず選手個々が持っているものをすべて吐き出してほしい。そうすることで初めて色んなものが見えて来る」と語り、今回のメンバーについて「各クラブでしっかりポジションを取った選手がほとんど。(2019年11月の)コロンビアの時よりも個々がかなり成長して集まっている」と期待を寄せた。3バックか4バックか問われると、指揮官はこう答えた。「このチームは3バックを長くやり、昨年末から4バックをやった。どちらでもできるよう準備している。選手を見てどちらが合っているか考えたい。あんまり3バック、4バックと言うよりも選手がどうか。今クラブで光っている選手を呼んできているので、その特徴を生かせる形でやりたい」川崎フロンターレで活躍する左ウイング三笘薫と左サイドバック旗手怜央に期待することを質問されると、このように返答した。「薫には川崎でやっているプレーをそのまま代表でも出してほしい。今回はJリーグとはまた異なる相手と対峙することになる。そういう中で彼がどんなプレーを見せるのか私も楽しみにしている。旗手もクラブで今季、非常にチームへの貢献度が高いプレーをしている。今季は運動量が伸び、もともとアタックキングゾーンでいいもの持っているし、守備もフィジカルも上がってきている。両面できる選手、期待している」出場機会が少ない欧州組のアタッカー陣・久保建英、三好康児、食野亮太郎の現状をどう見ているのか聞かれると、横内代行監督は次のようにコメントした。「その3人は所属クラブでは難しい状況に置かれている。プレー時間も少ない。彼らはこれまでの実績もあるし、今どんなコンディションにあるのか見てみたい部分もあり呼んだ。彼らもハングリーな状態で来ている。楽しみにしている。三好も思ったよりもコンディションは悪くなかった」キャプテンを務めるボランチ中山雄太はチームでまとまる重要性を説いた。「メンバーに入らないといけないという個人の野心を感じるし、僕自身も持っている。ただその野心が強く過ぎるとひとりでプレーする感覚になってしまう。その野心を同じベクトルに向ける作業をキャプテンとして促していければ。同じベクトルに向けば、組織力としてもより強くなると思うし、その働きかけを僕自身発信してきているし、まだ時間があるので向上させていければなと思っている」オランダで確固たる地位を築いているセンターバック板倉滉と右サイドバック菅原由勢は金メダルへの強い気持ちを口にした。「僕たちが目指しているのは金メダル。もちろんアルゼンチンは強くていいチームだと思うが、今後そういう相手を倒していかなくてはならない。短い期間でチームメイトとコミュニケーションを取ってチームをいい状態にして、アルゼンチンを倒せるようにしたい」(板倉)「このチームが始まった時から金メダルを目指してきた。海外へ行って勉強できることや学べることは学んできたつもり。より一層チームに貢献できるんじゃないかと思っている。同時に金メダルへの思いは今も昔も強いので、金メダルを取るために大事な2試合になる」(菅原)三笘薫 (c)JFA初めてコンビを組む三笘と久保は次のように抱負を語った。「僕のスタイル的に周りのサポートがなくても突破できるので、その特徴を生かしたいし、周りの選手の特徴も生かしたい。まだまだ自分は五輪代表の中では下だと思っている。スタートと言うか、今回の招集でどれだけできるか示す場。色んな人からの目も変えていくチャンス」(三笘)「個人的にと言うよりもチームとしての精度を高める時期に入ってきているので、積極的にコミュニケーションを取りながらチームとしてやりたいサッカーを統一して、完成度を高めることが一番大事。相手が格上とか格下とか関係なく、やるべきことをやっていかないといけない」(久保)また、ふたりはそれぞれコンビを組むことを楽しみにしていた。三笘が「久保選手が小学生の時にジュニアユース、ジュニアで1試合やって、小さくてうまかった印象がある。一緒にプレーしたことはないですけど、トレーニングもやったのでコミュニケーションは取りやすい。同じ前線、シャドーなので、うまく連係して力になれると思う」と言えば、久保も「三笘選手は交流があったのでコミュニケーションは取りやすい。僕がこんなこと言う立場にないが、Jリーグを見ていてもちょっと抜けている。見ていて楽しい選手。早く一緒にプレーしてみたい」と歓迎した。国内組の選手たちも自分のアピールとともにチームの勝利を誓う。「FWなので得点にこだわっていくのが一番のアピールになるかなと思う。タケ(久保)がしっかりボールを持てる選手なので任せつつ、いいところに顔を出して起点になることが自分の仕事。ゴール前に入っていってワンツーとかしっかりやっていきたい」(田川亨介)「1年ちょっとぶりの活動で、自分のよさを出してアピールしていきたいし、試合なので勝ちにもこだわっていきたい。川崎で1年プレーし、優勝もして自信になった。とくに攻撃のクオリティは上がっていると思う」(旗手怜央)「CFにデカい選手がいる。強くて速い選手と聞いている。そういった選手を抑えられることが五輪に向けても大事。しっかり止めて、自分たちの流れを作ることが重要になって来る」(渡辺剛)U-24アルゼンチン代表戦に臨むU-24日本代表メンバーは以下の通り。【GK】1大迫敬介(広島)、12沖悠哉(鹿島)、23谷晃生(湘南)【DF】4板倉滉(フローニンゲン / オランダ)、5渡辺剛(F東京)、15町田浩樹(鹿島)、19原輝綺(清水)、20古賀太陽(柏)、22瀬古歩夢(C大阪)、6菅原由勢(AZ / オランダ)、21中野伸哉(鳥栖U-18)【MF】3中山雄太(ズウォレ / オランダ)、14相馬勇紀(名古屋)、10三好康児(アントワープ / ベルギー)、7三笘薫(川崎F)、2田中駿汰(札幌)、18旗手怜央(川崎F)、17田中碧(川崎F)※、16渡辺皓太(横浜FM)、11久保建英(ヘタフェ / スペイン)【FW】8林大地(鳥栖)、9食野亮太郎(リオ・アヴェ / ポルトガル)、13田川亨介(F東京)※田中は3月26日(金)の第1戦のみ出場停止。【GK】1ヘレミアス・レデスマ(カディスCF / スペイン)、12ホアキン・ブラスケス(CAタジェレス)【DF】4エルナン・デラフエンテ(ベレス・サルスフィエルド)、3ミルトン・バレンスエラ(コロンバス・クルーSC / アメリカ)、6ナサレノ・コロンボ(エストゥディアンテス)、2ネウエン・ペレス(グラナダCF / スペイン)、15ブルーノ・アミオネ(べローナ / イタリア)、14トマス・レカンダ(リバープレート)【MF】8サンティアゴ・コロンバット(クラブ・レオン / メキシコ)、5サンティアゴ・アスカシバル(ヘルタ・ベルリン / ドイツ)、7フェルナンド・バレンスエラ(ファマリカン / ポルトガル)、10マティアス・バルガス(エスパニョール / スペイン)、16ケビン・マク・アリステル(アルヘンティノス・ジュニアーズ)、17ルーカス・ゴンザレス(インデペンディエンテ)、13アレッサンドロ・ベルナベイ(ラヌース)、20サンティアゴ・エッセ(ウラカン)【FW】18フアン・ブルネッタ(パルマ / イタリア)、9アドルフォ・ガイチ(ベネべント・カルチョ / イタリア)、21エンソ・カブレラ(ニューエルス・オールド・ボーイズ)、11ベンハミン・ロレイセル(リバープレート)、19アグスティン・ウルシ(CAバンフィエルド)『SAISON CARD CUP 2021』U-24日本代表×U-24アルゼンチン代表は本日3月26日(金)・東京スタジアム、そして29日(月)・北九州スタジアムにて開催。東京開催のチケットは発売中、北九州開催分は予定枚数終了。試合の模様は26日(金)はTBS系列、29日(月)はBS朝日にて生中継。取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)SAISON CARD CUP 2021』U-24日本代表×U-24アルゼンチン代表のチケット情報
2021年03月26日チーム内でサッカーへの意識が高い子と低い子との差がある。意識の高い息子は毎日の練習から真剣で、練習でのゲームでもあれこれ提案するも「いやだ」「うるせーなー」と言われ、上手くいかないし試合でもフォローもない。意識の低い子たちに「なんでサッカーしないの!」と憤り、練習帰りに涙することも。親としては年齢的にも意識にバラツキがあるのは当たり前だと思っているが本気でやっている息子にどんな声をかければいい?というご相談をいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、15年以上の取材で得た知見をもとにアドバイスを送ります。お子さんを伸ばしたいなら参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<サッカーは楽しいが勉強できない中2の息子をどう支えればいいのか問題<サッカーママからのご相談>9歳の息子はサッカーを始めて2年なのですが、ここ一年程ますますサッカーが好きになり、意識が高くなっています。上手くなりたい、夢はプロサッカー選手と言って毎日練習に励みチームの練習も一回一回を大切に頑張っているようですしかし当然ながら、チームの中でもサッカーへの意識が高い子とまだそうではない子との差もでてきているようです。今回はその辺に関連するご相談です。最近練習でのゲームで、コーチがチーム分けをするのですが、息子にとっては「え?これはバランスがおかしい」と思うほど差をつけたチーム分けがあるようです。もちろんコーチのやり方があり、何らかの意図があってのことなのでそこに私も息子も何も言うことはないのですが、やはりゲームになると意識の差、というか考えてプレーしている子とボーッとしている子の差が出てきてしまっているようで。息子はどうやったら皆が動けてそして勝てるのか考え、「ああすればいいんじゃない」「次はこうやってみよう」と、ポジション等、みんなと話しあうのですが、当然「そこはやりたくない」など意見がでますよね。そんなときも息子はメンバーに「大丈夫、上手いしきっとできるよ」とも伝えるのですが、なかなか上手くいかず、試合でも誰もフォローに入らない、ボールがきても動かない、ということが多くて、練習帰りに「なんで!?」と涙を流すことが多くなってきました。ゲーム中でも指示を出したりしても、「うるせーなー」など文句を言われたりするようです。本人はただ「サッカーがうまくなりたい」、「練習のゲームでも手を抜かず勝ちたい!」そんな気持ちで指示を出したりポジションを考えたりしているのに、なんでもっとみんな真剣にサッカーしないの?と思っているようです。息子にはみんながあなたと同じ気持ちではないし、あなたがしたいサッカーをするのがゲームではないと思うよと伝えたりもしますが、それは本人もわかってはいるようです。息子本人も「うまい子だけのチームでやりたいわけではない」と言っています。「チームメイトの性格の問題ではなくて、なんで動かないの!?なんでサッカーしないの!」と、サッカーへの意識の高さと低さで悩み、辛い気持ちがあるようです。サッカーしないの!の部分が分かりづらいかもしれませんが、ボールが来ても動かない(動き方が分からない、良い場所で受けようとしたり攻撃につながるような受け方をしない)ことです。私はこんなにもサッカーが好きで本気でやっている息子を尊敬しますが、この本気度の違いはまだ小学3年生にはあって当たり前だとも思います。そんな息子にかけてあげる言葉や接し方がどうしたらいいかわかりません。こんな時どうすればいいでしょうか?<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただきありがとうございます。お母さんは、息子さんが大好きなのですね。懸命にサッカーに取り組んでいる息子さんを誇らしく感じるお気持ちが伝わってきます。さて、私からのアドバイスは三つです。■仲間とぶつかったり自分の思いを伝えるトレーニング期なので、ほっといて大丈夫この問題、基本的にほっとけばいいと私は思います。小学生から高校生、ティーンエイジャーの間は、仲間とぶつかったり、温度差が違う中で相手のことをわかろうとしたり、自分の思いを伝えるトレーニングをする時期です。とても大切な成長の機会を、サッカーというスポーツの中で得ているわけです。そういった意味では、お母さんがお書きになっている「考えてプレーしている子」も、「ボーッとしている子」も、息子さんが成長する糧になってくれる大切な存在です。私は以前、保育学が専門の大学教授に「子育ては、泥だらけのじゃがいもをバケツの水の中でごろごろと一緒に洗うようなもの」と聞きました。ぶつかったり、一緒にいることで互いの泥が取れてきれいになる、というわけです。■みんなの動きが良くなるように、自分はどんなプレーをしたらいい?と聞いてみるそう考えると、もし何か親として息子さんに伝えることがあるとすれば、それは「こうしてほしいと他者を変えようとするよりも、まずは自分がみんなのために何ができるかを考えよう」ということかと思います。もちろん、小学3年生にそういった正論をいきなり投げつけるのではなく、例えば、こんなふうに問いかけます。「だったらさ、動き方がわからないチームメートに、試合中にコーチングしたり、仲間が良い場所で受けられるようにするには自分はどんなプレーをしたらいいと思う?」お子さんが話し始めたら、聞き役に徹しましょう。そして「君のプレーやパスが親切になれば、きっと周りも変わってくるよ」とぜひ励ましてあげてください。それだけ利発で自分で物事を考えられる息子さんなのですから、お母さんが伝えようとする道理にすぐ気づくのではないでしょうか?■「だめなのは向こうなのに」と言ってきたときの返し方もし、そこで「なんで僕が......」とか「だめなのは向こうなのに」と抵抗したとしても、そこは叱らずに、「そうなの。お母さんは○○(息子さん)ならできると思うよ」と肯定してあげてください。他者を変えるより、自分が変わった方が早いといった道理に気づくのはずいぶん大人になってからでもいいとは思いますが、ベクトルを他者に向けるより自分に向けることを学ばせましょう。自分がどうすればみんなのためになるのか。どうすれば、自分も仲間も楽しくプレーできるのか。自分で考えたことをまずは実践してみる。そのうえで、コーチに相談してみたり、同じように一生懸命に取り組んでいる仲間と話し合ってみることを提案してみてください。本人が乗り気でなければ、それでいい。まだそこを学ぶ時期ではなかったということととらえてください。それでも、お母さんからのアドバイスはこころに残り、いつか「あのとき、お母さんが、他人よりも自分がどうするかを考えてみたら?って言ったなあ」と思い出すかもしれません。■「かわいそうに」と同情するのではなく話し相手になること二つめは、お母さん自身が、目の前の息子さんのありように一喜一憂しないことです。仲間から文句を言われる。練習帰りに、泣くこともある。さまざま嫌な思いをするときもあります。ですが、そこで「かわいそうに」「あなたが悪いんじゃないのに」と同情するのではなく、息子さんの話し相手になってあげればいいと思います。息子さんが「大丈夫だよ、できるよ」と勧めたポジション(もしくは役割)を「嫌だ」と拒否したチームメートには、その子なりの理由があるはずです。そのことを聞いてみたら?と勧めてもいいでしょう。もしくはすでに話しましたが、コーチがいるのですから、お子さんからコーチに相談することを勧めましょう。サッカーのことは、そこにいる選手と指導者で解決するのが一番です。なるべく問いかけて、自分で考えさせてください。もう春から4年生です。そんな力はついているはずです。■親はあまり感情を揺らさず、できれば離れてしまった方がいい相談文のなかに、お母さんが「みんながあなたと同じ気持ちではないし、あなたがしたいサッカーをするのがゲームではないと思うよ」と伝えたとありますが、そんなふうに答えを言ってしまうのは少し我慢してみましょう。お母さんご自身も「それは本人もわかっているようだ」と書かれていますが、わかりきっていることはきっと聞きたくないはずです。それよりも、どうしたら楽しくみんなでサッカーできるか、ということを考えさせましょう。チーム全体のことを考える経験は、リーダーシップ力を身につけることにもつながります。お母さんご自身が場面場面でなるべく感情を揺らさず、見守ってあげましょう。「こんなときどうすればいいか」「どんな言葉をかけてあげればいいか」とありますが、お母さんが操るわけにはいきません。その都度親が出てきて何でも解決してあげれば快適かもしれませんが、それでは子どもの成長の機会を奪うことになります。子どもの世界で起きていることなので、基本的には黙ってみている。できれば、もっと離れてしまったほうがいいくらいです。■子どもを伸ばしたいなら、期待をかけるより効果的なのは......(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)三つめは、子どもに期待をかけ過ぎないこと。「こんなにもサッカーが好きで本気でやっている息子を尊敬します」と書いているように、他の子どもに比べてサッカーへの意識が高い息子さんを誇りに思う気持ちが伝わってきます。ただし、高学年になるにつれて、子どもたちは大きく変化します。身体の大きさや、足の速さの順番が変わるように、サッカーに対する意識や知識や認知度も徐々に上がってきます。たくさんの親子、少年サッカーファミリーを見てきましたが、意識が高く早熟なお子さんの場合、ここに親御さんの過度な期待が乗っかってくると、本人はしんどいです。早熟なため小さいときから結果が出てしまうので、結果を出すことをずっと期待されがちです。そこで親御さんが「ふーん。もっとできるんじゃない?」と自尊心をくすぐったり、前述したようにサッカーがチームでやるスポーツなんだと理解できた子は歩みを止めることなく伸びるようです。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2021年03月24日サッカーノートを書き始めようとしたものの、何を書けばいいのかわからない、という人は多いのではないでしょうか。この記事では、サッカーノートの書き方について解説します。どういった内容を書くのか具体的に解説しているのでぜひ参考にしてみてください。サッカーノートの概要サッカーノートとは、普段の練習や試合などの記録や自分のプレーの振り返り、課題や目標を書き込むノートのことです。その日のプレーはどうだったのか、どのようなアドバイスを受けたのか、自分で感じたことなどを書き込むのが一般的です。中村俊輔選手や本田圭佑選手といったプロ選手もサッカーノートを使用していたというエピソードもあるため、馴染みのある人も少なくないでしょう。ノートは特に決められたフォーマットがあるわけではなく、市販のノートやアプリなど、好みに応じたツールを使用して作成します。サッカーノートの書き方サッカーノートの書き方は特に決まっているわけではないため、自分の書きたいことを好きな形で書いても構いません。ここではサッカーノートに書かれることの多い内容とその書き方について解説します。参考にしてみてください。その日の練習内容を書くサッカーノートの主な使い方の一つが、練習内容の記録です。その日どのような練習を行ったのか、その練習はどういった目的をもって行われたのか、自分の出来はどうだったかと言ったことを記入します。また、練習中に受けたアドバイスも書き込んでおくと、次に同じ練習をした時に役立ちます。練習や試合の目標を書くサッカーノートは、普段の練習や試合の目標を立てる際にも利用できます。普段の練習や試合の記録をノートに書き込んでいれば、自分が今どのようなプレーを苦手としているのか、どのようなことをコーチやチームメイトから求められているのかが見えてくるはずです。そこで浮かび上がってきたことを目標として書いておき、練習の前や試合の前にチェックしておけば、課題に向き合いながら試合や練習に取り組むことができるでしょう。小学校低学年の場合小学生、特に低学年となると、自分の課題を的確に把握し目標を立てることは簡単ではありません。そのため、シンプルな目標を立ててください。目標は、後になって振り返りがしやすい形で設定するのがポイントです。例えば「今日の試合では1点取る」「今日の試合は無失点で抑える」などです。逆に「今日は頑張る」というような抽象的な目標だと、後になって振り返りが行いにくいため、注意してください。できたこと・できなかったことを書く練習や試合でできたこと、できなかったことを書くこともできます。できなかったことを書く場合は、なぜできなかったのか、次はどういった点に注意するのかなどについても書くことができれば、次回以降に自分がやるべきことが明確になるでしょう。また、自分のプレーを振り返っていると、どうしてもできなかったことばかりになってしまいますが、できたことも必ず書くようにしましょう。できなかったことばかり書き込むノートは、書いていて楽しいものではないため、ノートを書くことがネガティブなものになってしまいます。書くときの注意点サッカーノートは特に書き方にルールなどはありませんが、書く際にはいくつかの点に注意する必要があります。そこでここでは具体的な注意点を2つ紹介します。継続して書くサッカーノートは、練習や試合のたびに必ず書くようにしてください。継続して書くことで、自分の成長の過程がわかり、自分の課題や目標が明確になります。今日は面倒だから書かない、今週分は週末にまとめて書くといった形はとらず、必ずその日のうちに書くようにしましょう。書くことを保護者が強制しない小学校低学年の子どもだと、自分の意思ではなく保護者が半ば強制的にノートを書かせているケースも少なくありません。しかし、やらされる形でノートを書くと、熱心に書くわけではないため、あまり役に立たない形だけのサッカーノートになりかねません。サッカーノートは、子どもが自ら書くことが大切であるため、強制はしないようにしましょう。まとめ今回は、サッカーノートの書き方について解説しました。書き方にルールはありませんが、練習や試合の振り返りや自分の目標の確認、できたこと・できなかったことの確認などを書くのが一般的です。選手としてもっと成長したいとい人はぜひサッカーノートを取り入れてみてはいかがでしょうか。
2021年03月18日サッカー選手として成長するには、試合や練習だけでなく、日々の取り組みの振り返りをすることが大切です。その際に活用できるのがサッカーノートです。この記事では、サッカーノートの概要からノートに記載する内容まで解説します。ぜひ参考にしてみてください。サッカーノートとは?サッカーノートとは、日々の練習や試合の記録、プレーの振り返りや感じたこと、課題などを記録する日記のようなものです。練習内容やコーチからのアドバイス、個人的に感じたことなどを書き込むのが一般的となっています。チームによってはサッカーノートを書いて提出し、監督やコーチがコメントをするといったことを行っているケースもあります。また、プロとして活躍する選手たちの中でもサッカーノートを利用している人たちは少なくなく、中村俊輔選手や本田圭佑選手がサッカーノートを書いていたことは有名です。このようにプロも使用するなど、サッカーノートはサッカー選手にとって身近なものだと言えます。サッカーノートを書くメリットサッカーノートを書くと様々なメリットが得られます。ここでここでは、具体的なメリットを3つ紹介します。その日の振り返りができるサッカーノートを活用すれば、その日の練習や試合の振り返りができます。練習内容や試合結果などはその日のうちは覚えているかもしれませんが、翌日になると記憶が曖昧になっているケースが少なくありません。また、コーチやチームメイトから受けたアドバイスを正確に覚えていない、というケースもあるでしょう。練習内容やアドバイスを覚えていないと、その次以降の練習や試合で同じミスをする可能性が出てきてしまいます。そのような時にサッカーノートがあれば、練習内容やアドバイスを書き残しておけるため、忘れることなく振り返ることが可能になります。アドバイスを踏まえて練習や試合に取り組めれば、選手としての成長スピードもアップするでしょう。良いプレーの再現性も高くなるはずです。課題が明確になるサッカーノートにその日の試合や練習でできなかったことを記録しておけば、自分の課題が明確になります。できなかったこと、もっとスキルアップしたいことを記録し、練習前にチェックしておけば、その日の練習で行うべきこともはっきりとするため、練習に対する意識も高まるでしょう。自分自身の成長記録になるサッカーノートを継続して書き続けていけば、自分の試合や課題が書き残されていくため、自分自身の成長記録になります。数年前のサッカーノートを見返したとき「あの時はこんなことに悩んでいたのか」「今ではこのプレーは得意なプレーになっている」など自分の成長を確認することもできるでしょう。サッカーノートを書くときのポイントサッカーノートを書く時にはいくつかのポイントを押さえておくことが大切です。ここでは、具体的なポイントを2つ紹介します。継続して書くサッカーノートはとにかく継続して書くことが大切です。「今日は眠いから書かなくていいや」となると、ノートを見返した時に前回の練習で何ができたのか、どういったアドバイスを受け、次の練習では何を意識してプレーするのかといったことがわからなくなります。何ページもびっしりと書く必要はありませんが、練習や試合のたびに必ずノートを書くようにしてください。ネガティブな内容ばかりにならないようにサッカーノートを書いていると、ネガティブな内容が多くなることが少なくありません。もちろんできなかったことや反省点は記録しておくべきですが、その日の試合や練習でうまくできたことも少なからずあるはずです。悪いことばかりを書き込むノートになると、書くモチベーションも上がりません。ネガティブな内容だけでなくポジティブなものも書きましょう。ノートは市販のものでOKサッカーノートは決まったフォーマットがあるわけではないため、市販のノートを使用しても問題ありません。書店などにはサッカーノート用のノートが販売されていますが、必ずしもそのノートでなければサッカーノートが書けないわけではないため安心してください。メモアプリなどに書き込んでも構いません。自分のやりやすい方法で行いましょう。まとめ今回はサッカーノートの概要から具体的なメリット、作成時のポイントなどについて解説しました。日々の記録を書いておくことで、プレーの振り返りが行えます。振り返りを行い、自分の課題を把握することは選手として成長するためには欠かせないことです。ぜひサッカーノートを書く習慣を取り入れてみてください。
2021年03月17日『トップリーグ』初優勝の可能性を計るひとつの試金石と言える。トヨタ自動車ヴェルブリッツにとって『ジャパンラグビー トップリーグ 2021』第2節は重要な戦いと言える。NTTコミュニケーションズシャイニングアークスとの一戦は、レッドカンファレンスの勢力図を見る絶好のカードである。オーストラリア代表100キャップを超える超大物フランカー(FL)マイケル・フーバーが加入し、優勝をターゲットにするトヨタ自動車だが、日本一は1998年度までさかのぼらなければならない。前身の『全国社会人ラグビーフットボール大会』の時の話である。『トップリーグ』では2007年度の3位が最高位。2017-2018・2018-2019シーズンはともに4位。4位はじつに6回とトップ4の壁をなかなか超えられずにいる。シーズン不成立となった昨季は3勝3敗……。黒星を喫したのはヤマハ発動機ジュビロ、パナソニック ワイルドナイツ、サントリーサンゴリアスといずれも強豪だが、不本意な成績に終わっている。グレイグ・レイドロー(NTTコミュニケーションズシャイニングアークス)(C)スエイシナオヨシ一方、NTTコムも元スコットランド代表主将だった世界的スクラムハーフ(SH)グレイグ・レイドローを獲得し、悲願のトップ4入りへ向けて虎視眈々。昨季はサントリーとクボタスピアーズに敗れて、4勝2敗。2016-2017・2018-2019季は5位と4強入りまであと一歩に迫ってきた。ここ3試合のリーグ戦での直接対決を見ても、2018-2019第6節・Nコム36-38トヨタ、2017-2018第12節・トヨタ22-15Nコム、2016-2017第7節・Nコム19-13トヨタといずれも熱戦を繰り広げている。そう、トヨタ自動車としてはNTTコムに勝利しない限りトップ4の先は夢のまた夢、Nコムとしてもトヨタを超えない限りトップ4は見えてこないのだ。ライオネル・クロニエ(トヨタ自動車ヴェルブリッツ)(C)JRFUここでそれぞれの開幕戦を振り返りたい。2月20日『トップリーグ 2021』開幕戦でトヨタ自動車はホームにサントリーとともに最多優勝5回を誇る東芝ブレイブルーパスを迎え撃った。4分、ラインアウトからのサインプレーでウイング(WTB)ヘンリー ジェイミーが抜け出すとそのままトライ。12分には東芝に22mラインを超えたところまで攻められるも、密集でのこぼれ球を南アフリカ代表61キャップをマークするフルバック(FB)ウィリー・ルルーが拾い、70m超の独走トライを披露。26分は鮮やかなパスワークからFLフェツアニ ラウタイミが右隅へトライ。スタンドオフ(SO)ライオネル・クロニエはこの難しい角度からのコンバージョンゴール(CG)を含め3本とも成功し、21-0と早々に試合を決めにかかる。キアラン・リード(トヨタ自動車ヴェルブリッツ)(C)JRFUしかし2分後、インゴールまで10mと迫った東芝にラインアウトからドライビングモールで1本返されたが、34分にはクロニエのペナルティゴール(PG)が成功し24-7、接点で優位に立ちポゼッションをコントロールしたトヨタ自動車はしてやったりの展開で前半を終えた。だが、後半は試合内容とスコアが一変。44分にPGで27-7とするも、その後2本東芝にトライを決められたのだ。8点差に迫られたトヨタだが、慌てず騒がず。すぐさまWTB高橋汰地がトライを奪い返し、CGも決めて34-21。残り20分、どのように試合を締めるか注目される中、東芝の勢いは止まらなかった。69・75分と立て続けにトライを決められてわずか1点差に詰め寄られたのだ。だが、最後はトヨタ自動車が時間を効果的に使い、ノーサイド。34-33の薄氷を踏む勝利で白星発進した。茂野海人(トヨタ自動車ヴェルブリッツ)(C)F.SANO試合後、指揮官も共同主将も反省の弁を口にした。サイモン・クロンヘッドコーチ(HC)が「前半はかなりいい形で試合を進められた。アタックもポゼッションもよかった。後半はスキルエラーもあり、簡単に攻められてしまった」と振り返れば、SH茂野海人も「前半は自分たちのラグビーができたが、後半はポゼッションのところのミスで自分たちのラグビーはできなかった」と課題を挙げた。50分からピッチへ投入され、日本デビューを果たしたフーパーは「ハードワークだった。疲れた。とてもフィジカルで、ボールの動きも速い。スコアも最後までわからない激しいゲームだった」と口にしつつ、元ニュージーランド代表ナンバーエイト(NO8)キアラン・リードとのコンビに「リードとはたくさん試合をしてきたが、まさか一緒にプレーするとは思わなかった」と感慨深げに話した。ウィリー・ルルー(トヨタ自動車ヴェルブリッツ)(C)F.SANOまた、スプリングボクスのエースとして君臨したルルーはオールブラックス前主将リード、ワラビーズ現主将フーパーと同じチームでプレーすることについて「今までニュージーランド、オーストラリア、南アフリカと異なるチームで対戦してきたが、同じジャージを着てトレーニングしていて、彼らから学ぶことはとても多い。敵ではないことが本当にうれしい。NZ代表や豪州代表でキャプテンをしてきた彼らは、どんな状況でも冷静にチームメイトに話している」と歓迎した。フレッチャー・スミス(NTTコミュニケーションズシャイニングアークス)(C)スエイシナオヨシ対するNTTコムは2月20日にHonda HEATと激突。NTTコムはSHレイドロー、SOフレッチャー・スミスの新しいハーフ団がアタックをリードし、自らも1本ずつトライを奪いながらも風下に苦しみ、Hondaを突き離せずに19-13で前半を折り返す。後半に入り、風上に立つとNTTコムが完全にゲームを支配する。50分にレイドローのPGで先にスコアを動かしながら、57分にロック(LO)ジミー・トゥポウがシンビンで10分間の退場……。一気にスコアを縮められるピンチに陥るも、3分後にはFLリアム・ギルが逆にトライをゲット。さらに集中力切れた相手のミスや隙を逃さずに33・40分ときっちりトライに結びつけ、終わってみれば41-13の快勝スタートとなった。金正奎(NTTコミュニケーションズシャイニングアークス)(C)F.SANO試合後、ヒュー・リース・エドワードHCが「例年、初戦は苦しい展開になりがちだが、勝点5を得られ、この結果に満足している。ボーナスポイントを取りつつ、課題をたくさん見つけられた。チームにとっていい勝利となった」と喜べば、金正奎共同主将も「勝って反省できるのはいいこと。伝統的にファーストゲームを落とす、またはギリギリの状態で勝つ試合が多かったので、例年と違ったシャイニングアークスを見せることができた」と胸を張った。さらにHCは日本デビューで13点をマークしたレイドローを「彼は、誰もが認めるワールドクラスの選手であり人間。今日も球出しをうまくコントロールしていた。味方がシンビンの時は、10番としてもプレーした。すぐに求められるポジションをこなせるワールドクラスの実力があることを証明してくれた」と評価した。続いて第2節の試合登録メンバーを見てみたい。キックオフ48時間前に登録選手は以下の通り。【NTTコミュニケーションズシャイニングアークス】1上田竜太郎、2三浦嶺、3三宮累、4中島進護、5ジミー・トゥポウ、6リアム・ギル、7金正奎、8ヴィリー・ブリッツ、9グレイグ・レイドロー、10フレッチャー・スミス、11張容興、12池田悠希、13シルヴィアン・マフーザ、14石井魁、15安田卓平、16セコナイア・ポレ、17齊藤剣、18平井将太郎、19佐藤大樹、20目崎啓志、21湯本睦、22石橋拓也、23トロケ マイケル【トヨタ自動車ヴェルブリッツ】1三浦昌悟、2彦坂圭克、3淺岡俊亮、4秋山大地、5マイケル・アラダイス、6フェツアニ ラウタイミ、7佐藤穣司、8キアラン・リード、9茂野海人、10ライオネル・クロニエ、11ヘンリー ジェイミー、12マレ・サウ、13ロブ・トンプソン、14高橋汰地、15ウィリー・ルルー、16加藤竜聖、17吉田康平、18崔凌也、19タウファ オリヴェ、20マイケル・フーパー、21滑川剛人、22岡田優輝、23チャーリー・ローレンス三浦昌悟(トヨタ自動車ヴェルブリッツ/中央右手前)(C)JRFUトヨタ自動車は2月23日のオンライン記者会見を実施。指揮官、ルルー、プロップ(PR)三浦昌悟がNTTコム戦へ向けて、次のように意気込みを語った。「ポゼッションとテリトリーのコントロールをしたい。ワールドクラスのコーチがいて、パワフルなプレーが強み。相手の弱みがどこにあるか探り、自分たちの強みを出せるようプレーしたい」(クロンHC)「開幕戦でハーフがいいプレーをしていた。9・10番はキック、ラン、パスすべてでよかった。彼らのオプションにうまく対応しないといけない」(ルルー)「NTTコムはHonda戦でスクラムを修正していた。僕らも第1節はいい形で組めたが、まだ個々の強さに頼ったスクラム。8名で組んだ方向性が次の課題。もっともっと成長できるように貪欲に戦っていきたい」(三浦)果たして、トヨタ自動車が初優勝への階段を一歩ずつ進んでいくのか、NTTコムが4強入りをしっかりと視界にとらえるのか。『トップリーグ2021』第2節・NTTコム×トヨタ自動車は2月28日(日)・ユアテックスタジアム仙台にてキックオフ。チケット発売中。チケット情報トヨタ自動車ヴェルブリッツコミュニケーションズシャイニングアークストップリーグ特集ページ
2021年02月27日元スペイン代表で2018年からは日本のヴィッセル神戸でプレーし昨年1月の天皇杯を最後に現役を引退したダビド・ビジャさんが、この度、著書『ダビド・ビジャのサッカー講座試合で活躍するために大切な11科目』の発売を記念し、オンラインセミナーを開催しました。引退後はプロ選手としての経験を生かした『DV7サッカーアカデミー』を設立。現在は世界7カ国で展開し、2020年から日本でも始動しています。今回のトークショーでは、これまでの選手としての経験とこのプロジェクトで日本の子どもたちと関わって感じていること、選手を伸ばすために大事なことや、親とのかかわり方など日本のサッカーキッズ&保護者に向け、 サッカーがうまくなるために大切なことを、 技術と心得の両面から率直なお話をきかせてくれました。オンラインで日本の子どもたち、保護者へのアドバイスを送ってくれたダビド・ビジャさん■身体が小さくても焦らなかったのは両親の言葉のおかげ小さいころからサッカーが大好きで、家の中でもボールや紙を丸めてボール代わりにしたものを蹴って食器を割ったりして母親に叱られたこともあるというビジャさん。子どもの頃から周囲より身体が小さかったものの、所属していたチームではずっとゴールを量産し、エースだと思っていたといいます。しかし、13~14歳ごろになると周囲が大きくなりフィジカル面で不利になり、モチベーションが下がったこともあるそう。そんな時に救ってくれたのがご両親の言葉だったといいます。「小さい選手がいつまでも小さいわけではない」と常に声をかけてくれて、焦りを感じないようにしてくれたのだそうです。それで「小さくても自分がほかの選手に勝てるものは何か」と考えてプレーするようになり、自信をつけていったのだそう。海外のクラブチームでは、毎年同じメンバーが昇格するわけではなく、何人かはふるいにかけられチームを去ることが珍しくありません。競争が激しくなるほど選手は孤独を感じるのだと語ってくれました。そして「親はグラウンドの外で支えてあげて。頑張る子どもへ愛情をかけてほしい」と保護者へのアドバイスを送りました。また、保護者がサッカーの内容に口を出すと子どもが混乱することにも言及。「指導者はサッカーを教えるためのライセンスを持ち勉強している。親はコーチより上の立場で要求しないでいただきたい」と、コーチへのリスペクトを持ってほしいと参加者たちに訴えかけました。■サッカーは自分だけではできない。ボールを持ってない時間が大事イベントの終盤では読者から事前に募集した質問に答える時間も。その中には技術に関する質問もあり、「ドリブル、パスなど個人技を身につけるためにはどうしたらいいか」という選手からの質問には「ドリブルもパスも大切なトレーニングだけど、それができるからといって試合で活躍できるかは別。試合の中ではボールを持つのは2分、あとの88分はボールがないところのアクションです。メディアではボールを持った時のアクションがフォーカスされるので、選手も父母もそれが大事だと思いがちですが、実際は88分のほうが大事だと気付くことができるか。仲間や相手の位置、ボールとの関係など複合的な動きが重要なのです」とアドバイスを送りました。FWをしている選手からの「裏に抜けるタイミングが難しい」という悩みには、「裏に抜ける動きは自分だけでどうこうできる訳ではないので一番難しい。チームメイトのパスのタイミング、相手DFの動きがある。多くの失敗を繰り返してタイミングを見つけ出すものなのです。そのためにはチームでの練習が大事です」と、サッカーは個人技の繰り返しではなく、チームでの連携が何より大事なのだと語りました。■日本の子どもは個人プレーに走りやすい日本の子どもたちの印象については、ビジャさんだけでなくこの日参加した「DV7サッカーアカデミー」のアレックスコーチも「勤勉でまじめ。指導者の指示をインプットして練習で出そうとする」と称賛。まじめで勤勉、言われたことはしっかりできるけれど、「遊び」がなく相手に読まれやすいのも日本のサッカーの課題とも言えますが、アレックスコーチは「チームプレーの理解が低く個人プレーに走りがち」なのも課題だと指摘。ビジャさんも言っているように、試合の中では一人がボールを持つのは90分中2分程度とすれば、チームメイトと連携して動ける思考や動きを身につけるよう意識するのが大事なのです。また、試合を観ることもサッカー上達につながるので、家でできるサッカー上達の習慣としてあらゆる試合をたくさん観ることだとビジャさん。チームごとに特長があるので「このプレーすごい」「このプレーは自分もできるかも」というプレーを見つけてほしい、試合を見る習慣がある選手は強い。と選手たちにアドバイスを送りました。■夢は子ども自身が叶えること。親はサポートを子ども時代にたくさん両親にサポートしてもらい感謝しているというビジャさん。現在は自身も父親として子どもをどうサポートするか、という質問には「自分は子ども時代に幸せだったので、自分の父母のようになりたい。『子ども時代、幸せだった』と思っているようにしたい」と自身のスタンスを語りました。最後に日本の保護者に向けて、日本の選手の多くが世界で活躍できるポテンシャルがあることや、子どもたちの夢は子ども自身が叶えるものであり、親は(手を出しすぎず)サポートする存在であってほしいことなどのアドバイスを送り、コロナ感染が落ちついたらまた日本に行って子どもたちと会いたい。との希望を語ってイベントを終了しました。送迎などの行動におけるサポートだけでなく、フィジカル差で負けてモチベーションが落ちたり、競争の中で孤独を感じたりしながらも大好きなサッカーを頑張り続けるわが子の心をサポートし続けたビジャさんのご両親のスタンスは、保護者の皆さんも参考にしたいものではないでしょうか。
2021年02月12日東北楽天ゴールデンイーグルスの田中将大投手が、自身の公式YouTubeチャンネル「マー君チャンネル 田中将大」で4日に公開された動画に出演。少年野球のチームメイトだった読売ジャイアンツ・坂本勇人選手について言及した。「【“田中将大”が出来るまで】少年時代の夢と教育方針・坂本勇人との思い出」と題して公開された動画で、田中は、少年野球時代の坂本について「勇人は当時から抜群にうまかった。何をやらせてもできてしまう選手だった。僕は動きも俊敏ではないしどんくさい感じだったので、全然、勇人のほうが良い選手だったと思う。当時見ていた人はみんなそう思うと思いますね」と語った。さらに田中は「バッティング練習でどっちのほうが遠くに飛ばせるのか競いながらやっていましたね。ボールをただ単純に遠くに飛ばすのだったら僕のほうが飛んでいたと思います」と回顧し、「(坂本選手が)悔しいのか、僕が大きいのを打ったら『フライ打つな!』みたいな感じで言われたのを覚えていますね」と笑った。そして坂本の性格については「こんなこと言ったらあいつに怒られるんかな? ヤンチャ坊主でしたよ。みんなわかるでしょ(笑)。僕は大人しい子でしたよ」と懐かしんだ。
2021年02月06日1年の頃からボール拾い。練習したくても一部のメニューにしか入れてもらずチームメイトからも「下手だな」と言われてきた。それが苦痛でやめようとしたことも。それでもあるきっかけで気持ちを持ち直し、上達のためにかけもちで練習を頑張って、試合にも出られるようになっていたのに、県大会でメンバー入りできなかった。それを知ったチームの子たちから暴言が始まり、泣いて帰ってきた。5年生後半だけど移籍させるべき?ほかのチームでも同じことがある?というお悩みをいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、15年以上の取材で得た知見をもとにアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<努力しないのに根拠のない自信だけはある息子に手を焼いてます問題<サッカーママからのご相談>はじめまして。5年生の息子が市内の強豪クラブチームに通っています。サッカーのレベルはBチームでベンチ頻度が高い子です。大人しくて人見知りが強く、1年生から入部しているのですが似たタイプの子としか仲良くできません。1年の頃からずっとボール拾いで、練習をしたくてもパス回しのメニューしかさせてもらえない事も多々あり、チームメイトからも「下手だな!」などと言われ続けてきました。一時はその環境が苦痛となり、辞めるように話した時期もありましたが、ちょうどそのタイミングで小学校の同級生が入部してきたことで、現在は少しずつまわりとの距離感が縮まりつつありました。今では「下手だと言ってきたみんなより上手くなりたい!」と地元のチームの練習にも行って、掛け持ちで頑張っています。いまだに、クラブチームの練習になると周りからの反応に萎縮してなかなか本来の動きができずにいますが、地元のチームでは、周りの保護者から「この子が1番うまいね」と言われるくらい動きもよくなりました。練習試合でも、Bチームですが試合に長時間出れるようになってきて、本人も自信がついてきたようにも思えました。ですが、最近あった県大会の試合にレギュラー入りできず、ユニフォームさえも与えられませんでした。県大会に選ばれなかったことを知ったクラブチームの子たちから、またもや言葉の暴力が始まったと泣いて帰ってきました。今までそれを乗り越え頑張ってきてましたが、この環境ではやはり能力が発揮できないのでは?このままではサッカーが大嫌いになってしまうのではないか?と感じています。5年生も後半になりましたが、クラブチームの移籍を検討した方が良いでしょうか?高学年だとどのチームでも似た現象があるのではないかと心配してしまい、悩んでおります。何かいいアドバイスを頂けたら大変嬉しく思います。 よろしくお願い致します。<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただきありがとうございます。ご相談文を読むと、お母さんが息子さんをどれだけ大切に思っているのかがよくわかります。また、息子さんがどのような環境でサッカーに取り組んでいたかなど、置かれた境遇は私なりに理解しました。5年生の3学期という今の時期に、クラブチームの移籍を検討した方が良いのか。まずは、この質問に答えます。■移籍するかどうかは当事者が決断すること結論から申し上げると、移籍を検討したほうがいいか、しないほうがいいのかは、私には意見できません。なぜなら、それは当事者の息子さんが決めることだからです。他人である私はもちろんのこと、お母さんが検討することではないからです。お母さんの相談文を読むと、息子さん本人が「こうしたい」「こう思っている」などと、彼が意思表明をした話が出てこないのが気になります。それをお母さんがメールに書かなかっただけで、彼が「移籍したい」「チームを移りたい」と自分の意見を述べているのであれば、一緒に考えてあげればいいと思います。■気をつけなければならないのは「移籍までのプロセス」ただし、ひとつ気をつけなければならないのは、移籍までのプロセスです。例えば、彼が移籍したいと希望する理由は、以下のものでしょうか?「試合に出たいから、出場機会を求めたい」「いじめがひどくて、もう我慢できない。いじめてくる友達にはいつも抗議しているし、コーチにも自分から話して相談したけれど、収まらない。違う環境でサッカーをしたい」「自分で移籍先も考えている。一緒に見学に行ってほしい」以上のように、自分自身で状況を打破するためにいろいろ努力していたけれど、変わらない。だから移籍したい。そんなふうに息子さんがしっかり意思を示しているのであれば、彼が率先垂範してチームを探し出してきた情報に対して、一緒に考えて意見を述べるなどして手伝ってあげればいいと思います。一方で、もし、息子さんがそういった意思を表明していないのであれば、特にお母さんが動く必要はないでしょう。あるとすれば、「あんまり辛いなら、チームを変わっていいよ。自分で探しておいで」と、環境を変える方法もあることを伝えればいいと思います。小学5年生とはいえ、最上級生の6年生はすぐそこです。コロナ禍でオンライン授業も受けているでしょう。ネットでも何でも使えるはずです。ここは、自分で道を切り拓く力をつけてほしいと考えます。したがって、お母さんは息子さんの好きにさせておけばいいのです。■今のままではお子さんがこの先嫌な経験をしたとき「お母さんのせいだ」となる可能性も私は、息子さんが移籍したほうがいいか云々よりも、お母さんが綴っている息子さんの身に起きるかもしれないことへの不安の強さが気になります。この環境ではやはり能力が発揮できないのでは?サッカーがこのままでは大嫌いになってしまうのではないか?高学年だとどのチームでも似た現象があるのではないかと心配してしまい、悩んでおります。ご自分で読んでみていかがでしょうか。「この環境」と書かれていますが、さまざまなことを他罰的にとらえてしまってはいませんか。例えば「息子がサッカーを上手くならないのはチームのせい」「楽しめないのは仲間のせい」と、こころの中で思ってはいないでしょうか。どれも、完全に息子さんのサッカーが完全に「自分事(じぶんごと)」になっていませんか。親が子どものネガティブなことに同化してしまうと、ついつい「転ばぬ先の杖」を用意してしまいます。転んでもいないのに杖を渡すので、足腰は鍛えられません。そして、親の選んだ方向にばかり引きずられると、そこで何か嫌なことが起きたときに「お母さんが移籍させたからだ」と、子どももまた"他罰的"になってしまいます。■良かれと思ってやったのちに「自分で考えさせれば良かった」と後悔する親たちサッカーの育成に関する取材を始めて15年以上経ちます。出会った何百組もの親子さんで、親御さんが先に先に杖を用意したり、道をこしらえてしまった人たちは、後でみなさん後悔していらっしゃいました。「自分で考えさせれば良かった」「選ばせればよかった」そうおっしゃるのです。その時は「良かれと思って」親が動いたことはほとんどの場合、子どものためになっていないことのほうが多いのです。子どもが何かに取り組む際のモチベーションに、「外発的動機付け」「内発的動機付け」があります。外発的動機付けは、親に言われたり、コーチに「こうやれ」と命令されること。内発的動機付けは、自分から「こうしよう」「こうしたい」と考えたものです。いわずもがなですが、内発的な動機付けのほうが、子どもは大きく成長します。息子さんのサッカーは「他人事」だと心得ましょう。彼がサッカーを大好きになれる環境はどんなものか。そんな提案をして、本人に選ばせることが重要です。そして、少しずつでいいので自分でさまざまなことを選べる人間にする。それがお母さんの役目だと思います。■子どもの不安で親が一緒に溺れないように(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)最後になりますが、前回の連載はきっと参考になると思います。『努力しないのに根拠のない自信だけはある息子に手を焼いてます問題』わが子の不安の海で、親が一緒に溺れないようにしてください。不安と戦う息子さんに「どうしたら楽しくサッカーができるか考えよう」と誘ってあげてください。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2021年01月27日本日1月27日に発売された『FOOTBALL PEOPLE 川崎フロンターレ 中村憲剛特集号』では、中村憲剛氏とつながりが深い方々にインタビュー。誌面の都合で泣く泣くカットせざるを得なかった盟友・伊藤宏樹氏(現・川崎フロンターレ強化部)との対談の未公開部分を昨日に続き掲載。後編は長年、兄と弟のような関係で切磋琢磨してきたふたりが、印象に残っている試合やゴールについて語り合う。――印象に残っているゴールを教えてください。中村憲剛(以下、中村)「俺は2007年のナビスコカップ(現・ルヴァンカップ)で、宏樹さんがアウトサイドに(巻いて)かけて、サイドネットに突き刺さったゴール。あれは、宏樹さんのゴールのなかでもすごく覚えてる」伊藤宏樹(以下、伊藤)「あれ?その試合に憲剛いたんだっけ?」中村「いましたよ」伊藤「いたか」中村「あれはいました(笑)」伊藤「憲剛はいつもカップ戦にあると、代表でいないイメージだったから」中村「あのときはいたんですよ、なぜか」伊藤「(チョン・)テセのゴール、アシストした?」中村「した、した。俺、意外と宏樹さんの生涯ゴールの半分ぐらいはアシストしていると思う。セットプレーも含めて」伊藤「少ないからな(笑)」中村「たぶん5点、6点くらいでしょ?そのうち3点ぐらいは俺がアシストしているよ」伊藤「もうちょっと(点は)多いわ!」――宏樹さんは憲剛さんのゴールで印象深いものはありますか?伊藤「ゴールでいうと、プロ1年目のアウグストからのボレー。まだ憲剛が26番のとき。引退セレモニーの『ThanksVTR』のなかでも流れていたけど」中村「あれね」伊藤「あとは、アシストは熊谷での大宮アルディージャ戦。ジュニーニョに出したロングスルーパス、かな」中村「それもう、だいたい世に出ているやつじゃないですか。……別のやつもらってもいいですか?(笑)」伊藤「じゃあ、やめようか?(笑)」中村「大丈夫、大丈夫、それでいい(笑)」伊藤「まだ、いっぱいあるけど、憲剛とジュニーニョの“翼くん・岬くんゴールデンコンビ”みたいに決めたやつも好きだけどね。あれはFC東京戦だっけ」中村「FC東京戦のやつね。あれもすごかった」伊藤「あれは本当にすごかった」中村「宏樹さん、ほとんど俺のゴールを後ろから見ているからね。確か、宏樹さんが俺と一番試合に出ていたんだよね?この間、誰かとその話をした覚えがある」伊藤「この間、タニ(谷口博之)が言っていたな」(写真左より)中村憲剛、伊藤宏樹――ふたりのなかで一番印象深い試合は?伊藤「ふたりのなかでか。俺が悲しかったのは、2004年に昇格して、2005年にいざ念願のJ1開幕戦を迎えた柏レイソル戦。憲剛が前日に熱を出して、いないという。あれは悲しかった」中村「それを挙げるのは、よくないなあ(苦笑)」伊藤「本当、そこを楽しみにめっちゃ(練習して)きていたのね。そしたら、前日のホテルで知らされて」中村「俺もそうだよ。飯を食って、部屋に戻ったらもう急に寒気がしちゃって」伊藤「39℃くらいあったよね?」中村「ああーってなった」伊藤「『何してんだよ!』と思った。あれが本当に残念だった」中村「現役最初のJ1の試合と最後のJ1の試合が柏戦で、両方とも行っていないという……(苦笑)」――なるほど。中村「実は2005年にJ1に昇格したときの試合日程が柏、続いて浦和レッズだったんです」伊藤「ああ」中村「しかもアウェイ柏、ホーム浦和で。それで、自分の現役最後のリーグ戦は、ホーム浦和、アウェイ柏!」伊藤「すごい偶然だね」中村「2020年のスケジュールが出たときにもう、ゾゾゾってなったよ。それで始まって、それで終わるの?という日程だったので。だからその2試合は絶対に出なきゃいけないって思ってた」伊藤「でも、最後、出ていないからちょうど良かったのかもしれないね(笑)」中村「というか、(伊藤が挙げた)一番悔しかった試合、印象に残っている試合に、俺がいないことが問題です(笑)」伊藤「印象に残っている試合……他は……」中村「何ですかね。もう、あり過ぎて…」伊藤「個人的にはあれかもしれない。俺の引退試合になった(2013年の)横浜F・マリノス戦。あの試合は憲剛がめっちゃめちゃパフォーマンスが良かったから。あれにはびっくりしましたよ」中村「俺ね、最初で最後だと思う。人のために頑張ったの」伊藤「結構、神がかっていた」中村「神がかっていましたね。『宏樹さんの等々力ラストゲームを負けて見送るわけには、絶対にダメだ』と思っていた」伊藤「しかも、相手は優勝のかかっていた大きな試合。大舞台ですよ」中村「あの試合は、もう本当に心震えましたね。それにこの人、引退すると言ったのが、その週の初めなんですよ。F・マリノス戦の週のオフの日に、電話がかかってきて、あり得ないよ、本当に」伊藤「(笑)」中村「それもあったから、俺は2カ月前に言ったんです。だって、さみしい。1週間前に言われて、気持ちの整理がつかないじゃないですか。だから自分は、引退するときは絶対に先に言いたいと思っていたんです。そうしたら、たまたまチームの調子も良くて言いやすかった。やっぱり、唐突なお別れになっちゃうのはダメだなというのは、宏樹さんから学びました(笑)」伊藤「あはは(笑)」中村「残される方はさみしいからね。俺、今回は去っていくほうの気持ちが初めてわかったけど、意外と去っていくほうは、さっぱりいけるんですよ」伊藤「うん」中村「ただ残された方は、キツいから」伊藤「俺の場合は、フロンターレだけで、憲剛の場合は背負っているものが違うから。俺はあれで良かったんだよ」中村「いやいや、そんなことないでしょ」伊藤「でも、改めて、憲剛のこの終わり方は本当にすごいよね。リーグ優勝を決めたことを考えても、最後に天皇杯決勝の舞台まで整ったことも含めて。普通のスポーツ選手では、なかなかできないことだと思います」取材・文:林遼平撮影:佐野美樹FOOTBALL PEOPLE 川崎フロンターレ 中村憲剛特集号FOOTBALL PEOPLE 川崎フロンターレ 中村憲剛特集号川崎フロンターレとサッカー人生を歩んできた中村憲剛のバンディエラの矜持に迫ります。1万文字にもおよぶ本人のロングインタビューはもちろん、ピッチの外から見届けた天皇杯決勝のラストゲームにも密着。小林悠、家長昭博、大島僚太、谷口彰悟、登里亨平らチームメイト、恩師、クラブスタッフにもインタビュー。サッカー漫画『GIANT KILLING』の漫画家・ツジトモによる中村憲剛の描き下ろしイラストやスキマスイッチ・常田真太郎からのメッセージ、よき理解者である伊藤宏樹との対談も掲載。タイトル:FOOTBALL PEOPLE 川崎フロンターレ 中村憲剛特集号発行:ぴあ株式会社発売:2021年1月27日定価:1,500円(本体1,364円)判型:B5判・96ページAmazon: 楽天ブックス: 書店、ほかネット書店にて詳細はこちら:
2021年01月27日明日1月27日(水)に発売される『FOOTBALL PEOPLE 川崎フロンターレ 中村憲剛特集号』では、中村憲剛氏とつながりが深い方々にインタビュー。その企画のひとつとして行われた、かつてのチームメイトである伊藤宏樹氏(現・川崎フロンターレ強化部)との対談は関係性の深いふたりの歩みがわかる貴重なトークとなっている。今回、誌面の都合により、本誌ではカットせざるを得なかった未公開部分を特別に掲載。兄弟のように強い絆で結ばれたふたりのクロストークをお楽しみあれ。――ふたりがチームメイトだったときは、どんな話をすることが多かったのですか?中村憲剛(以下、中村)「本当にずっとしゃべっていたよね。だから、いつ、とかではなく常に、だよね」伊藤宏樹(以下、伊藤)「うん、何をしゃべっていたかが分からないくらいに(笑)」中村「アウェイのときに宿泊するホテルでも、普通に部屋に行って話していた。今はあり得ないけど、本当にずっとベッタリだった」伊藤「ね。でも、試合になれば、いつも喧嘩していた」中村「そうそう。ちなみに俺ら、仲良くはないんですよ?(笑)」伊藤「憲剛は俺しか文句を言える人がいないから、こっちにばっかり言ってくる」中村「みんな先輩だったから(笑)」伊藤「当時、ボランチなのに、まあ守備はしないし、ポジショニングはめちゃくちゃで(笑)。だからこっちも言うけど、でも、それがたまにいいチャンスになるし、(当時監督だった)関塚(隆)さんもそれを褒めるんですよ。それで憲剛は伸び伸びやっているから、こっちは(守備面などの)文句を言って、喧嘩をするわけです。そうしたら、だんだん憲剛が成長してくるにつれて、賢いから的確なことを言うんですよ。すると、こっちも言い返せなくなって、グーってなって、とりあえず『うるせえ!』となる(笑)。そういったやり取りが多かったかな。でも、昔はそんなことがおもしろかったけどね」中村「こっちとしても言い負かしているというか。この人ね、リアクションはそんなに多くないんですよ。我慢して、我慢して、最後に『うるせえ!』と言う。あとは『取れよ!』とか。まあまあな口を……」伊藤「そんな言い方ですよ。もう、昔は(笑)」中村「こっちも『宏樹っ!』とか、呼び捨てにしていて(笑)。だからシーズン最初のキャンプのときに、それをやると新加入(の選手)が『えっ?』ってなっていたよね(笑)。普段にしても好きなものや趣味も全部、違うからね。馴れ合うような仲の良さじゃない」伊藤「うん」――それなのにアウェイのホテルなどでも一緒にいられる理由とは?伊藤「何だろうね、あれ。バスや新幹線でも隣だったし」中村「居心地がいいから。何を言っても大丈夫という安心感。たぶん。失礼な後輩ですよ。今、思えば」伊藤「失礼極まりない後輩だよ(笑)」中村「極まりない(笑)。だけど、昔からのフロンターレのサポーターは結構、知っているよね」伊藤「ふたりのつながりで言うと、僕が(2013年に)引退するときに、憲剛は二人組(の練習相手)や隣に座る人がいなくなってさみしいんだろうなという話をしていたんだけど、この間、憲剛が引退するときに、(小林)悠が全く同じ話をしていたから『ああ、歴史っておもしろいな』というのは、個人的には思ったね」中村「だって大変だったよ。“宏樹ロス”……」伊藤「長くやったら、そうなるんですよ。やっぱり悠も憲剛と長く一緒にやって、そういう関係になった。それでまた、何年後かに悠が何を言うんだろう、というのは思います」中村「宏樹さんの引退VTRを、当時、妻とずっと見ていてふたりで泣いていましたもん(笑)」伊藤「あはは(笑)」中村「うう……いなくなるって……。だから結構、大変だった。2014年から悠がそういう存在になるまでは本当に。要は、宏樹さんがやっていた役割を俺がやって、俺がやっていたことを悠がやらなくてはいけなくなったから。本当はタサ(田坂祐介)だったんですけどね、俺のなかでは。宏樹さん、俺、タサで、いつも3人一緒だった。だから、つなげていこうと。だけど、あいつ(田坂)はドイツに行ってしまった(笑)」伊藤「そう」中村「だから、後継者を探さなきゃいけなくなってしまった。タサは今も仲がいいし、俺と宏樹さんみたいな感じだけど、でも、いなくなっちゃったから、当時は慌てましたよね」伊藤「あれは慌てたね(笑)」中村「せっかく宏樹さんがフロンターレの先輩から受け継いできたものを、俺もちゃんと受け継いで、それをタサにつないで、(その次は)悠と決めていたのに、いなくなったから結構大変だったよね」(写真左より)中村憲剛、伊藤宏樹――確かに、考えると中村選手と小林選手の間が、世代的にも少し空いている感じはあります。伊藤「年齢的にね」中村「タサやタニ(谷口博之)だったんだけど、間にいた選手は全員、菊地(光将)も横山(知伸)も移籍しやがった(笑)」伊藤「しやがったって(笑)」中村「だから俺が頑張んなきゃいけなかったんですよ。宏樹さんがいなくなって、いかに宏樹さんが、あらゆる日陰の仕事をやっていたかがわかったから」伊藤「それ、もうちょっと大きな声で言ったほうがいいよ(笑)」中村「(笑)。要は、俺と宏樹さんは“表と裏”ではないけど、俺が表面をやって、宏樹さんが裏面のマネージメントというかチームの雰囲気作りを含めて、いろいろなところに目を届かせてくれていたことに初めて気付いた」伊藤「俺らはチームキャプテン・ゲームキャプテンみたいな感じで別れていて、ふたり(の間)では『ふたりで一人前だな』みたいな自覚があった。お互いにないところを補いながらね。そういうのも含めて、僕が引退してからの憲剛には注目していましたけど、そこからの憲剛の歩みは成績にも出ていますけど、周りに伝えることを含めて後輩たちを育ててきたところがあるし、今のチームを作り上げるためにすごく貢献したと思います。本当にすごいと思いますよ」――“世代をつなげていく”話は、昔からそういうふうに話していたんですか?中村「昔からですね。『そこの木の“幹”をちゃんと太くしていかないと』という話はずっとしていた。だけど、自分ひとりではできないから、育つのを待つしかなかった」――宏樹さんは自身の引退後のことはどう考えていたんですか?伊藤「あまり考えてはいなかったですけど、自分の引退は関係なしに、ターニングポイントとしては、風間(八宏)さんが2012年に(川崎フロンターレに)来て、やるサッカーが明確になったことで、憲剛も楽しそうにしていた。そこを突き詰めたことが、今のこのスタイルになったところもあるし、そこについての心配はしていなかったです」中村「サッカー的なところはね」伊藤「うん」中村「振り返れば、最初は、サッカー自体も風間さんになって『大丈夫か?』みたいになっていた。でも、最初のサンフレッチェ広島戦で、俺のアシストから宏樹さんが先制点を取ったんですよ。不慣れな右SBで宏樹さんが珍しくいい動きをしていてさ」伊藤「あれ、面白いよね。本当に最初の試合で、みんな(従来の)ポジションと違うところをやっていて。ある意味、今までのフロンターレの概念みたいなものを壊して、一つでもいいプレーができればみたいな感じでやった試合だった。それで、あの得点が取れた」中村「あの1点は、今のフロンターレのベースの本当に第一歩になったから。あのゴールを俺と宏樹さんで取ったというのは、歴史的には非常に大きかったんじゃないかなと、改めて思いますけどね。……うれしそうだな、おい宏樹っ!(笑)」伊藤「『何で、お前があそこにいんねん!』みたいな感じだったんですけどね(笑)」中村「本当にそういうゴールだった。連戦がスタートするなか、風間さんになってからの新たな船出。『大丈夫かな、フロンターレ?』となっているときの1試合目。その試合はボッコボコにされるんですけど(笑)、それでもあの1点を俺と宏樹さんで取ったというのは『あ、これでやっていける』みたいな思いはありましたからね」(明日1月27日(水)7:00配信の未公開記事後編に続く)取材・文:林遼平撮影:佐野美樹FOOTBALL PEOPLE 川崎フロンターレ 中村憲剛特集号FOOTBALL PEOPLE 川崎フロンターレ 中村憲剛特集号川崎フロンターレとサッカー人生を歩んできた中村憲剛のバンディエラの矜持に迫ります。1万文字にもおよぶ本人のロングインタビューはもちろん、ピッチの外から見届けた天皇杯決勝のラストゲームにも密着。小林悠、家長昭博、大島僚太、谷口彰悟、登里亨平らチームメイト、恩師、クラブスタッフにもインタビュー。サッカー漫画『GIANT KILLING』の漫画家・ツジトモによる中村憲剛の描き下ろしイラストやスキマスイッチ・常田真太郎からのメッセージ、よき理解者である伊藤宏樹との対談も掲載。タイトル:FOOTBALL PEOPLE 川崎フロンターレ 中村憲剛特集号発行:ぴあ株式会社発売:2021年1月27日定価:1,500円(本体1,364円)判型:B5判・96ページAmazon: 楽天ブックス: 書店、ほかネット書店にて詳細はこちら:
2021年01月26日