テレビ・ワンシーン考現学 (2) 「悲しいニュース」への切り替えが上手くないキャスター
的なフレーズを定期的に継ぎ足し、どうやら偲ぶのを忘れている気配が充満する。
でも、そういう人に限って、新たな弔問客が部屋に入ってくると、「ギックリ腰になって大変だったんだよぉー」と笑い話をしていた顔を瞬時に切り替え、悲しみ直すことができる。あんなに表情を巧みに切り替えることなんてできやしないと、隅っこで静かにしているのだが、まかり間違って「こんな時だから」陣営に巻き込まれてしまうと、たちまち疲労困憊。その疲労困憊を意気消沈と勘違いした「まあまあそんなに気落ちせずに」陣営が、「こんな時だから」陣営とコラボして、一斉にこちらを気遣ってくると、いよいよ逃げ場がなくなる。
○シロクマの赤ちゃんが産まれた後で、残忍な殺人事件を伝えられるか
ワイドショーのキャスターは厄介な職務だ。なぜって、シロクマの赤ちゃんが産まれたという話をした後に、殺人事件の話をして、苺たっぷりのスイーツがいかに幸福感を与えてくれるかを挟んだ後で、モラハラで離婚を決意した芸能人の話題に移らなければいけない。喜怒哀楽を1文字ずつに分解して、喜→怒→哀→楽→哀→怒というように、その都度のニュースに合わせた表情を提供することが求められている。