テレビ・ワンシーン考現学 (2) 「悲しいニュース」への切り替えが上手くないキャスター
曲がりきれるはずがない。
○友人たちが駅で降り、1人だけ車内に残された人の顔
どうしても、さっきまでのニュースの表情が顔に残ってしまう。シロクマの赤ちゃんが産まれた喜びが、ほんの少しだけ、港区で起きた殺人事件を伝える顔に含まれてしまう。「(1秒の沈黙)さて、続きまして、」を使って切り替えなければならなかったはずが、「昨晩、東京都港区で……」くらいまで、シロクマ赤ちゃん出産モードが居残る。
電車で、自分以外の友人たちが駅でこぞって降りてしまい、1人だけ車内に残された人の顔を見るのが好きだ。ホームの友人たちが手を振っていたりするものだから表情が残りやすく、電車がしっかり加速し始めているくらいの頃になっても、まだまだ微笑んでいる。その様はちょっぴり滑稽なのだが、瞬時に無表情になり、スマホで何がしかの情報処理を始めるよりも人間的で愛おしい。
○笑い話をしていた顔を瞬時に切り替え、悲しみ直す講座
そう、人間的。
表情が残っているほうが人間的なのだ。嬉しがった後で即座に悲しがることは難しい。でも、殺人事件用の顔に切り替えられないキャスターは、アマチュアだと見なされる。となると、キャスターは人間味など不要で、常に冷静な振る舞いが求められる存在なのか。