テレビ・ワンシーン考現学 (2) 「悲しいニュース」への切り替えが上手くないキャスター
シロクマの赤ちゃんが産まれた後で、残忍な殺人事件を伝える。アナウンサーが見つめるカメラのその奥では、ADが苺たっぷりのスイーツをスタンバイしている。この状況下で、瞬間的に悲しいニュースを読む顔に切り替えられる人とそうではない人が出てくる。切り替えられる人の切り替えっぷりったら見事。「赤ちゃん、かわいかったですね~。(1秒の沈黙)さて、続きまして、昨晩、東京都港区で何者かが……」と、たった1秒の沈黙で「喜」の表情を沈めるのだ。
○事務所のゴリ押しでキャスターを務めているタイプの問題点
殺人事件を伝える時、その表情が淡々と「無」になる人と、過剰に「哀」になる人とがいて、前者のほうが巧みに映る。人の悩み相談に対して、眉間に皺を寄せて首をウンウン振るだけ振って実は殆ど聞いていない人がいるが、あれと同様に、出来合いの「哀」を見せつけられるよりは、「無」の表情のほうが誠実なのだ。
事務所のゴリ押しでキャスターを務めているタイプの人は、とにかく、この表情の切り替えが下手だ。専門の訓練など受けていないのだから致し方ないのだが、自然なブレーキでスピードを緩めて進路を変えることができない。急ブレーキをかけて、強引に別の道に曲がろうとする。