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中国の全地球衛星航法システム「北斗」と、新型上段「遠征一号」 (2) 2020年の完成を目指す「北斗」

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中国の全地球衛星航法システム「北斗」と、新型上段「遠征一号」 (2) 2020年の完成を目指す「北斗」
第1回では、中国の全地球測位システム「北斗」の計画立ち上げから、第2世代衛星によるアジア・太平洋地域を対象にしたサーヴィス開始までの経緯について紹介した。

第2回となる今回は、2015年3月30日に打ち上げられた初の第3世代衛星「北斗三号」と、北斗の今後について紹介したい。

○北斗三号

2012年12月27日から、アジア・太平洋地域を対象にした航法サーヴィスが始まった「北斗」だが、当然その最終目標は、米国のGPSなどと同じように、全地球で航法サーヴィスを展開することにあった。そのためにはもっと多くの衛星が必要であり(例えばGPSは約24機)、北斗では静止軌道に5機、傾斜対地同期同期軌道に3機、そして中軌道に27機の衛星を打ち上げることを目指している。ただ、軌道上での予備機なども打ち上げる必要があるため、実際の数はもう少し多くなり、以前に打ち上げられた衛星が長生きすれば、軌道上での稼動数も多くなる。

しかし、北斗二号で打ち上げられた16機の衛星のうち、静止軌道には6機、傾斜対地同期軌道に5機、そして中軌道に5機が配備されており、それぞれの数に少し偏りがある。また、静止軌道や傾斜対地同期軌道も、中国上空を中心とした経度に偏っている。このことから、中国はいきなり全地球でのサーヴィス展開を狙っていたわけではなく、まず中国国内のみを対象にサーヴィス提供ができるようにし、次にその周辺のみを、という形で、堅実に構築を進めていく方針を採っていたことがわかる。


2012年の北斗衛星16号の打ち上げと、その年末のアジア・太平洋地域を対象にしたサーヴィス開始の後、北斗の打ち上げはしばらく行われなかった。しかし2015年3月30日に、第3世代機にあたる「北斗三号」の1号機、正式名称「北斗衛星17号」が打ち上げられた。

北斗三号が北斗二号からどの程度変わっているのかについては、詳しくは明らかにされていないが、おそらく搭載されている機器の性能、特に原子時計の正確さは上がっているものと思われる。また、測位の精度については従来の最大10mから、2.5mにまで改善されることが報じられている。

衛星の姿かたちは、静止軌道、傾斜対地同期軌道、中軌道ですべて変わっており、静止軌道用は新たに「東方紅三号B」バスが用いられ、さらに大きなパラボラ・アンテナが装備されている。傾斜対地同期軌道用は東方紅三号Bを使うもパラボラ・アンテナはない。中軌道用は東方紅三号Bではなく、小型の新しいバスが使われているようで、打ち上げ時の質量は800kgほどになるという。北斗二号では傾斜対地同期軌道と中軌道の衛星はほぼ同型だったと思われるが、実際の運用を通じて得られた知見から、別個の衛星にした方が良いと判断されたものと思われる。


○北斗の今後

北斗三号は今後も続々と打ち上げられ、2020年ごろに全地球での航法サーヴィスが開始される予定だ。一部報道では、これを3年早め、2017年を目標にするように変更されたとも言われているが、実際のところは不明だ。

北斗による全地球での航法サーヴィスが始まれば、中国はGPSなどに頼ることなく、またより高い精度で、地球上のどこでも自身の位置や速度、時刻がわかるようになる。例えば、中国国内はまだインフラが整っていない地域が多いため、役に立つことは間違いない。すでに2008年の四川大地震で活用されたことが報じられている。また、GPSやGLONASSなどにはない、メッセージを送受信できる機能があることが特長だ。

北斗による恩恵を一番受けるのは、やはり中国人民解放軍だろう。以前までなら、中国は民間向けのGPS信号を利用せざるを得なかったが、米国のGPSは、民間向けの暗号化されていない信号と、軍用の暗号化された信号の大きく2種類の信号を出しており、軍用の信号は民間用の信号よりも高い精度を出せるといわれている。


だが、中国が独自のシステムを持つことで、米軍が利用しているとのほぼ同じ精度での航法が可能になる。サーヴィスの対象地域が全地球へ広がれば、例えば中国海軍が外洋に出て行こうとする際には特に役立つことになろう。また衛星航法システムは武器の誘導にも使え、領土問題を抱える隣国に対して優位性を獲得することにもなる。

また、サーヴィスの対象が中国国外にも広がったことで、日本人が利用する機会も増えていくだろう。

北斗が出す信号はGPSやGLONASSなどとは互換性がなく、専用のチップを積まないと利用ができないため、今現在日本で売られているカーナビや携帯電話などは、そのままでは北斗を使うことはできない。もっとも、これはGPS専用端末ではGLONASSが利用できないとの同じで、北斗だけに限った問題ではない。ただ、北斗の信号を受信するための技術仕様は公開されているため、例えば中国製、韓国製の携帯電話などを手始めに、北斗に対応した機器が日本に入ってくることはあるだろう。ただ、現在すでにGPSとGLONASS、地上の基準局などの組み合わせで、地図案内などには十分な精度が出せており、いずれ「みちびき」システムが完成すれば、補正が入ることでより正確になる。
また欧州も「ガリレオ」航法システムの構築を進めており、いずれはガリレオに対応したカーナビや携帯電話などが売り出されることになるだろう。

中国や中国と関係が深い国以外で、北斗の信号が受信できる機器がどこまで普及するかは未知数だ。

(次回は5月1日に掲載予定です)

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