2015年6月18日 12:00
ロシアの「プラグリェースM-27M」補給船は、なぜ制御不能に陥ったのか (5) 新型のロケットと補給船の組み合わせが生んだ悪夢
なお、サユース2.1aと他の宇宙機との組み合わせでは、この振動問題は起きなかったとされる。
なぜ振動が発生し、最終的に異常分離に至ったのかについても、今回の発表では明らかにされていないが、大きく2つが考えられる。
ひとつは、機体の構造そのもので起こる振動によるもので、なおかつそれが姿勢制御システムなどで制御できなかった、あるいは姿勢制御システムがかえって振動を増幅してしまったことが考えられる。有名な例ではM-3SIIロケットの8号機が挙げられる。このときは、ロケットの能力の限界に近い質量の衛星を載せて打ち上げたことから振動が発生し、なおかつTVC(ロケット噴射の向きを変える機構)がそれを吸収し切れなかったばかりか、逆に振動を大きくするように働いてしまった(これを連成振動という)。このためTVCの燃料がなくなり、その後正常に飛行できなくなった結果、打ち上げは失敗に終わった。
もうひとつは、液体燃料を使うロケットで起きやすい「ポゴ振動」と呼ばれる現象だ。液体ロケットの場合、エンジン内の圧力や推進剤の流量の変動に起因して、ロケット全体が縦に振動する現象が起こることが知られており、もしこの振動が、そのロケットの持つ固有振動数と一致すれば、共振により振動は増幅され、搭載している衛星に損傷を与えたり、場合によってはロケットそのものが破壊されることさえある。