2015年10月1日 12:54
世界に追いつけるか 「高度化」H-IIAロケット、ここに誕生す (2) 大荷物を部屋の中まで運び入れてくれるようなロケットに
通常の静止トランスファー軌道は、遠地点高度が静止軌道と同じ約3万5800kmだが、ロケットのエンジン噴射をさらに続け、これをもっと上げ、6万kmや10万kmといった、ぐんと高い軌道に衛星を乗せる。
すると、遠地点で衛星がもつ運動エネルギーの多くが位置エネルギーに変換されるため、軌道傾斜角の変更が、通常の静止トランスファー軌道からおこなうよりも少ない燃料でできるようになる。最終的に遠地点高度を静止軌道と同じ高さまで下げる必要はあるものの、トータルで見ると燃料の消費量は少なく済む。こうした軌道のことを「スーパーシンクロナス・トランスファー軌道」と呼ぶ。
世界的に見れば、赤道の近くに発射場をもっている国のほうが少ないため、種子島と同様、あるいはさらに北に発射場をもつ米国やロシアのロケットは、スーパーシンクロナス・トランスファー軌道への打ち上げをたびたび行っている。
しかし、この方法はロケット側の負担が大きくなるため、その分打ち上げ能力が落ちてしまうという代償を伴う。現行のH-IIAでも、スーパーシンクロナス・トランスファー軌道への打ち上げは可能で、その際に必要な残りの増速量を世界標準の秒速1500mに合わせることもできるが、その場合SRB-Aを4基装着する最強の204型でも、打ち上げ能力が2トン強にまで下がってしまう。