2015年10月2日 13:08
世界に追いつけるか 「高度化」H-IIAロケット、ここに誕生す (3) これからがH-IIAと日本の商業打ち上げのはじまり(前編)
実は、この推力を変えられる能力も元からLE-5Bに備わっていたもので、2002年のH-IIA試験機2号機の打ち上げ時に実験もおこなわれている。ただ、今回高度化で実際に使うにあたり、あらためて開発がおこなわれ、また地上での試験もおこなわれている。
さらに、再々着火ができることで、たとえば2機の衛星を同時に打ち上げて、それぞれを高度の異なる軌道に投入するといったことも可能だ。こうした技術はすでにロシアなどで実用化されており、日本も同じ芸当をおこなうことができるようになる。
○使いやすく、やさしいロケットにするための改良
高度化ではまた、打ち上げ能力を上げるだけでなく、使いやすく、また搭載する人工衛星にとってやさしいロケットにするための改良もおこなわれている。
ひとつは、ロケットが自律して、安全に飛行できるようにすることだ。これまでは地上にあるレーダーを使って追尾し、ロケットの飛行を見守っていたが、高度化では新たに、ロケットに飛行安全用の航法センサーが搭載される。これにより、地上のレーダーが不要になり、地上設備の簡素化、そして作業員の少人数化やコストダウンにもつながる。
この改良は、今回の29号機で初めての技術実証がおこなわれることになっており、また今後も何度か試験を繰り返した後に、正式採用される予定となっている。