富士通はなぜPC事業を分社化するのか - メーカーに迫る「統合」と「分割」の選択肢
年間6,000万台規模を出荷するレノボ、5,500万台規模を出荷するヒューレット・パッカード、4,000万台を出荷するデルに対して、10分の1以下の出荷量に留まる富士通との調達価格の差は明らかで、価格競争力は打ち出しにくい。それでいて、これらの企業と同様に全方位戦略を展開しているのは明らかに不利だ。
年間1,000万台強を出荷する東芝は、ビジネス分野に特化する方向へと舵を切る一方、年間200万台規模のNECパーソナルコンピュータは、レノボ傘下でその調達力を生かしてコストを削減。その分を開発投資に回すことで国内での競争力を復活させてきた。そして、100万台以下の出荷量に留まるパナソニックやVAIOは、特定領域に特化した高付加価値モデルによって、収益確保に取り組んでいる。こうしてみると、国内PCメーカーのなかで、富士通の置かれた立場だけが最も不安定だといっていい。なにかしらの対策を講じなければ、今後は、赤字体質からの脱却が難しいという局面へと陥る可能性もあるといえよう。
富士通の田中社長は、「今の時点で、PC事業を売却するということは決めていない。
だが、長期的な観点を考えれば、いろいろな選択肢があり、状況の変化を見ていくことになる」