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ベネッセが介護事業に関するシンクタンクを開設する理由

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ベネッセが介護事業に関するシンクタンクを開設する理由
●進研ゼミ依存の構造からの切り札になるか
11月11日、ベネッセスタイルケアは「ベネッセ シニア・介護研究所」を開設すると発表した。奇しくも同日は、厚生労働省が定めた「介護の日」であり、今回の発表の内容も含め、ベネッセグループがいかに“介護”事業に力を入れているかを印象づけた。

この発表会で最初に登壇したベネッセホールディングス 代表取締役会長兼社長の原田永幸氏は、同グループの介護事業の位置づけについて語った。それによると「介護事業は教育事業と並ぶ重要な柱として捉え、さまざまな事業ポートフォリオの中でもきわめて大事」と語った。

というのも、ベネッセグループが主軸としてきた国内教育事業に暗雲が垂れ込んでいるからだ。少子化による教育を必要とする若年層の減少という構造的な要因に加え、ICTを活用した他企業の追随も大きくベネッセの事業に響いた。さらに、2014年7月に発覚した個人情報漏えい問題により、国内教育事業の信用は大幅に低下したことも業績に大きく影響した。

事実、2015年3月期の決算では、国内教育事業領域は販売高2,388億円だったが、前年度比約94%と苦戦した。


一方で明るいきざしもみえる。その最たるものが海外教育事業領域とシニア・介護事業領域だ。2015年3月期の発表で、前者は販売高210億円、前年度比約118%、後者は872億円、前年度比109%とほぼ2桁増の成長を果たした。原田氏も「海外展開と介護事業はグループ内でもっとも重要」と語ったとおり、“進研ゼミへの依存”からの脱却に両事業がいかに大切かをうかがわせた。

●社外への情報提供を積極的に

続いて登壇したのが新設されたベネッセ シニア・介護研究所 所長の滝山慎也氏だ。同氏はグループ内の介護事業を統括するベネッセスタイルケア 代表取締役社長であり、ベネッセホールディングスの執行役員も務める。

まず同氏は「ベネッセは介護事業に20年間携わった経験があり、その知見を社会に還元したい」と、ベネッセ シニア・介護研究所設立の意義を語った。特に強調したのが地域密着型の介護事業と、介護に携わるスタッフのケアについてだった。


まず地域密着型の例として東京・世田谷区での取り組みを紹介。同区には現在老人ホームなど29拠点をかまえており、約4割のシェアを占めているという。地域に密着し、その地区の医療機関や行政と密接に関わり情報交換することで、よりよい介護環境を整えたいと強調した。世田谷区には2016年4月に、保育園、学童施設、老人ホームを併設した複合施設を開設する予定で、より一層同地域に貢献できる体制を築きたいと語った。

また、介護に携わるスタッフのケアについては、同社に勤める人以外にもサービスを提供したいという。ベネッセスタイルケアにおいて、“自身が介護に身を置かなくてはならない理由”で同社を辞めるスタッフは、5%を占めるという。介護スタッフが自身の介護事情で業界を離れていく環境を是正したいというのがねらいだろう。

介護に関しては、年々その需要が増しているのに対し、「仕事がきつい」「報酬がわりにあわない」といった理由でスタッフが定着しないという問題が長らく提示されている。
ベネッセ シニア・介護研究所は、研究結果を広く開示するとしているが、こうした問題是正にいかに貢献できるかがカギとなりそうだ。

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