純粋でマジメに働くからこそ傷つく若者たち - 『ワーキングピュア白書 地道にマジメに働く25歳世代』
休日出勤も上司に命令されてやっていたわけではなく自主的に行っており、いま振り返ると「明るい宗教団体」のような会社だったと高山さんは回想する。
この高山さんのエピソードから、僕は「あえて立ち止まり、一歩引いて自分の今の状況を客観視する」ことの重要性を強く感じずにはいられなかった。一生懸命に何かに打ち込むことは決して悪いことえではないが、あまりにもひとつのことに囚われすぎると視野はどんどん狭くなる。本書の想定読者である「ワーキングピュア」な人たちは地道でマジメなので、特にそのような傾向が強くなってしまうのではないだろうか。高山さんが自身の体験を通して気づいた「体を壊してまで働くことはない」という事実は、すべての若者世代が忘れずに覚えておかなければならないものなのだと僕は思う。
○社会や制度のありかたを考えるきっかけにも
本書は基本的にマジメに働く若者たちにエールを送るという趣旨の本なので、現代日本の抱える労働環境の問題をどう解決していくべきか、といった提言は含まれていない。それでも本書を読めば(特にパート1を読めば)、社会や制度がこのままでよいと思う人ほとんどいないはずだ。
地道にマジメに働く若者が理不尽なことで苦しまないためには、どのような社会や制度が必要なのか、本書をきっかけに考えてみるというのもよいだろう。