慶大、ヒトiPS細胞由来神経幹細胞を用いて脊髄損傷マウスの運動機能を回復
慶應義塾大学(慶大)は1月18日、ヒトiPS細胞から効率的にオリゴデンドロサイト前駆細胞へと分化誘導する方法を開発し、マウス損傷脊髄の再髄鞘化に成功したと発表した。
同成果は同大医学部生理学教室(岡野栄之 教授)と同整形外科学教室(中村雅也 教授)によるもので、2015年12月24日に米科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載された。
オリゴデンドロサイトは中枢神経内に存在する細胞の1つで、細い神経の周囲を取り囲む髄鞘と呼ばれる脂質の層を形成し、神経の信号が伝わる速度を早める機能を持つ。脊髄損傷に対する神経幹細胞移植による機能回復メカニズムとして、移植細胞がオリゴデンドロサイトに分化して神経の再髄鞘化に寄与するという説が唱えられているが、ヒトiPS細胞由来神経幹細胞は主にニューロンに分化し、オリゴデンドロサイトにはあまり分化には分化しなかった。
今回の研究では、同研究グループが2014年に開発したヒトiPS細胞から効率的にオリゴデンドロサイト前駆細胞を多く含む神経幹細胞(hiPS-OPC-enriched NS/PCs)へと分化誘導する方法を用いて、マウス脊髄損傷に対しhiPS-OPC-enriched NS/PCsを移植し、その有効性を検証した。