2016年2月5日 14:52
なぜ「長崎の教会群」は世界遺産への"推薦取り下げ"になるのか
2月4日、2016年の世界遺産登録を目指していた「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(長崎県、熊本県)の推薦を政府が取り下げる方向で検討しているとの報道が流れた。筆者は世界遺産アカデミーの研究員としてこの遺産については各所で「まず大丈夫」と太鼓判を押してきたため、驚きをもってこのニュースを見ていた。実際、なぜ「推薦取り下げ」が検討されているのか、世界遺産登録への道筋も含めて説明したい。
○用意していた「ストーリー」への指摘
この遺産は、日本においてキリスト教がどのように伝わり、広まり、根づいていったかというプロセスを14の構成資産で示している。まず、フランシスコ・ザビエルが1549年鹿児島に上陸し、やがて平戸を拠点に日本国内での布教活動を展開。その後450年にわたり、キリシタン大名下での繁栄、秀吉に始まる取り締まり以降の激しい迫害と弾圧、各地キリシタンの潜伏と復活、という世界宗教史上まれにみる激動の歴史を重ねて来た。そのストーリーを大浦天主堂や五島列島などにある教会群、島原の乱の舞台となった原城跡などの資産で示している。
一般的に世界遺産に登録されるには、「いつの時代の誰が見ても文句なしに素晴らしい」