副作用少なく1度の治療で済む、日本発の次世代がん治療技術「BNCT」 - 2016年度末の治験開始を目指す国立がん研
一方、国立がん研では、直線型の加速器を採用。これは2.5MeVまで加速させた陽子を、Liターゲットに衝突させるというタイプのものだ。同じ直線型の加速器としては筑波大学グループのものがあるが、こちらは陽子を8MeVまで加速させており、ターゲットにはBeを採用している。
Liターゲットのデメリットとしては、約180℃というLiが持つ低い融点のため、強力な冷却システムが必要となる点があげられる。このため国立がん研のBNCT加速器では、1分間に約150リットルの流水を用いて冷却する水冷システムを採用している。また、Liターゲットが放射化し、放射性同位元素である質量数7のベリリウム7Beが生成するといった課題もある。これについては、自動洗浄システムおよびリボルバー形式のターゲット再生システムによって解決されている。
「Liターゲットが困難であるということは最初から認識していた」という伊丹氏。
それでもLiをターゲットとして採用したのには理由がある。それは、低エネルギーな陽子を利用しているということだ。この場合、発生する中性子の減速が容易で、人体に悪影響を及ぼす可能性の高い高速中性子の混在が少ないというメリットがある。