山田裕貴、想像を超えた状況に喜びと苦悩「手に負えない(笑)」 俳優業のやりがいや転機語る
●歴史上の人物に憧れ「世界に影響していることを体感したい」
数多くの話題作に出演し、その活躍が認められ「エランドール賞新人賞」を受賞、今年も勢いが止まらない俳優・山田裕貴。元プロ野球選手・山田和利氏を父に持ち、プロ野球選手を目指していた山田が、俳優の道を目指したきっかけとは。山田にインタビューし、人生の転機や俳優業への思いを聞いた。
俳優になりたいという思いは、プロ野球選手になる夢を諦めていろいろなことを考えている中で芽生えたのだという。
「プロ野球選手になるのは無理だと諦めたときに、いろんなことを考えたんです。自分のことを考えていく中で、なんで人間ってこの時こういう風に思うのだろうと、人間の感情や思考に興味が出てきて、俳優さんっていろんな人の人生を生きる仕事だから、いろんな人間の感情や心を学べるかもしれないと思い、俳優を目指すようになりました」
高校卒業後、「ワタナベエンターテイメントカレッジ」で演技のレッスンなどを受けつつ、エキストラや裏方の仕事を手伝っていた山田。そして2010年、「D-BOYSスペシャルユニットオーディション」のD-BOYS部門でグランプリを受賞し、ワタナベエンターテインメントに所属、同年D-BOYSの弟分ユニット・D2に加入し、2011年に『海賊戦隊ゴーカイジャー』ジョー・ギブケン/ゴーカイブルー役で俳優デビューした。
「ワタナベエンターテイメントカレッジに通って、エキストラやスタッフさんの仕事をしていたら、ちょうどオーディションが開催され応募しました。
とにかくお芝居ができる場に行かなければということだけを考えて受け、喜ぶということよりやっとスタートラインに立てたという思いでした」
人間の感情や思考を学びたいと思って俳優を目指したと話していたが、実際にさまざまな役を演じることでいろんな感情や思考に触れることができているようで、「こんな感情になるんだって感じます」といろんな気づきがあるという。
そして、「このシーンはこうなるだろうなと思っていた想像を超えていく瞬間があって、台本にない言葉が出てきたり、泣こうと思ってないのに涙が出たり。そういう瞬間に出会えるときがあるので面白いです」と俳優業のやりがいを語った。
芸能界に入った当初、どんな俳優になりたいと考えていたか尋ねると、「小さい頃から教科書に載っているような人になりたいと思っていて、いいなぁ織田信長とか思っていました」と歴史上の人物への憧れを告白。「ただ楽しく過ごせればいいというのではなく、いろんな人の心を動かしたり、世界に影響していることを体感して生きていたいんです」と述べ、「どれだけ影響を及ぼすことができたかは死ぬときにわかることだと思いますが、ポジティブなエネルギーを与え続けられたらうれしい」と話した。
すでに多くの人たちの心を動かし、影響を与えていると思うが、「今、世界配信とかで簡単に世界に出られますが、僕はまだ日本だけなので弱いです」と目指すところはまだまだ遠い。かといって「世界に行きたいというわけでもないんです」と言い、「まずは目の前にいる人たちを、という感覚でいつも生きているので、ただ一生懸命生きていたらそれが大きくなっていたというのが理想です」と語った。
●役と心が通った初めての経験「あの現場は一生忘れない」
参加したすべての作品が自分にとっては欠かせないものだという山田。
その上で、ターニングポイントになった作品について話してくれた。
「皆さんがターニングポイントだと思っている作品と、僕の思うターニングポイントになった作品はもしかしたら違う」と前置きした上で、「満足のいく演技ができたという意味で自分にとってターニングポイントになった作品は、『ここは今から倫理です。』や『HiGH&LOW』、『ホームルーム』、『東京リベンジャーズ』、『ストロボ・エッジ』、これから公開される『夜、鳥たちが啼く』など。朝ドラ『なつぞら』も、こういう風に見せられたらいいなというお芝居ができたなと思います」と作品を挙げていく。
自分が納得できた作品は「役と心が通いすぎた」という感覚になれたもので、役と心が通うと「思考がいらなくなる」という。
「すべて感覚で動いているという感じ。セリフだけ覚えて、あとはその場で動いているみたいな。いつも役とのシンクロ率を上げようとしていますが、僕と役の人間性が近いからシンクロできたのか、それとも近くはないけど寄せることができたのか、そこは冷静に突き詰めるようにしています」
役と心が通じ合えたと感じた最初の作品は、廣木隆一監督の映画『ストロボ・エッジ』(2015)だったという。
「廣木監督によって強制的に絞り出されたみたいな感覚でした。同じシーンを20回くらいやって、何度も何度も『違う、もう1回』って。廣木監督と出会って、初めて役と通じ合うことができました」
引き出してくれた廣木監督にはとても感謝しているそうで、「あの現場は一生忘れないですね」と振り返る。
「例えば教室のシーンだったら、僕の演技に対して『そこ椅子座り直す?』『カバンいつ持っていくの?』とか指摘されるんですけど、僕に自由を与えてくれているわけじゃないですか。(作品によっては)このセリフのときに立ってくださいというところまで決まっていることもありますが、廣木監督は全部自由に考えさせてくれて、『違う』って言われながらですけど、『それいいじゃん』と言ってくれることもあって。だから考え続けることって大事だなってすごく思います」
また、俳優業のやりがいについて「多くの人に何かを届けることができるのはすごいなと感じます。SNSをフォローしてもらったこともわかりますし、コメントを見ればどのように思ってくれているのかわかります」とも話した。
やりがいが増していく一方で苦悩も。
「追求していけばいくほど悩むし、苦しむ」と吐露するが、「自分の表現が間違っていないか疑い続けることが大事」だと考えている。
「お芝居だなと思うお芝居と、本当の顔をしているお芝居とがある。その違いはなんだろうって研究したときに、『あ、音か!』と思ったんです。本心で話している人の音がある。今、僕が話しているのは本当の音。これがセリフでできたら完璧なんですけど、どうしてもお芝居しようとすると声を作ってしまったりする。そういうのを日々考えています」
●辞めたいと思ったことも「自分の感覚が削がれていく感覚があって」
自分をとことん追い詰めて役とのシンクロを目指しているからこそ、「辞めたいと思ったこともあります」と明かす。
「心をものすごく使う仕事だから、自分の感覚が削がれていく感覚があって。
家に帰ると何もしたくなくなるんです。僕、何がしたいんだっけ、何が楽しいんだっけって。心が動いたほうがいいはずなのに、オフになるとそっちまでオフになるから、ヤバい! 自分がいなくなるぞ! という感覚になるときがあります」
さらに、「皆さんが思っている山田裕貴と、本当の山田裕貴は、イメージ通りのところもありますが、全然違ったりもする。そうすると、皆さんのイメージに合わせて生きなきゃって思い、普段の僕じゃないってなるんです」と、世間のイメージとのギャップに悩むことも。「明るくてふざける人だって思われているから、バラエティで面白くしなきゃって頑張りすぎたりしてしまうこともある」と打ち明けた。心の疲れがたまると「僕のことを誰も知らない場所に逃げたい」という気持ちに。その思いは、昨年爆発しそうになったという。
「全部辞めて世界中を回ろうかなと思いました。
そんなお金があるかどうかは別として、絵とかやったことないのに世界中を回って絵を描きたいと。知らないことが多すぎると感じ、文化の違いや人間の違いをもっと知りたいと思って」と振り返り、「一番注目していただいた頃ですね。ものすごくありがたいことですけど、一気に僕を見る目が増えて逃げたくなってしまったのかもしれません」と分析する。
結局、休むことはせず踏みとどまった山田。「僕が1年間休んだらいろんな人に多大なご迷惑をかけることになるから、そんなことはできない。自分のためではなく人のために生きています。応援してくださっている皆さんのためにも」と述べ、「原動力というか、使命です」と表現した。
そして、「こうなりたい」と思い描いてきた想像を超えた状況になっているからこそ、この先は「わからない」という。
「僕の意思じゃないところで動いていることばかり。『今年の顔』になったのも、『え! 俺が!?』みたいな。そういうことばかりなので、もう手に負えないんです(笑)。これからどうなっていくかわからない。まだまだですけど、いつもマネージャーさんに『とんでもないことになってきたね』って話しています」
心がすり減る大変さや、人気者ゆえの苦悩も抱えつつ、山田は「僕はエキストラからやってきているので、めちゃくちゃうれしい! 夢だった『ONE PIECE』の声優が叶ったり、朝ドラや大河ドラマに出演させていただいたり、本当にありがたいなと思っています」と喜びをかみしめる。
ワタナベエンターテインメントでは現在、次世代を担う新人俳優を発掘する「WE ACTオーディション」とダンス&ボーカルグループ候補生を募集する「D-BOYS SINGオーディション」を同時開催中。山田は「やりたいことをやったほうがいいと思うので、本気でやりたいと思う方はぜひ受けてみてほしいです」と呼びかけた。
■山田裕貴
1990年9月18日生まれ、愛知県出身。2010年、「D-BOYSスペシャルユニットオーディション」のD-BOYS部門でグランプリを受賞し、ワタナベエンターテインメントに所属、同年D-BOYSの弟分ユニット・D2に加入した。2011年に『海賊戦隊ゴーカイジャー』ジョー・ギブケン/ゴーカイブルー役で俳優デビュー。以降、『特捜9』シリーズ、連続テレビ小説『なつぞら』、『ここは今から倫理です。』『志村けんとドリフの大爆笑物語』などのドラマに出演。映画では『HiGH&LOW』シリーズ、『東京リベンジャーズ』『テン・ゴーカイジャー』『燃えよ剣』『余命10年』などに出演。現在は、連続テレビ小説『ちむどんどん』に出演中。『オールナイトニッポン X(クロス)』月曜パーソナリティも担当。2023年大河ドラマ『どうする家康』への出演も決まっている。
■ワタナベエンターテインメント「D-BOYS SING」「WE ACT」Wオーディション
ダンス&ボーカルグループ候補生を募集する「D-BOYS SINGオーディション」と、次世代を担う新人俳優を発掘する「WE ACTオーディション」を同時開催。両部門とも合格者には無料でレッスンできる環境を用意。1次面接は、全国4都市(東京・愛知・大阪・福岡)で開催するほか、オンラインでの参加も可能。