東大、運動による脂質代謝改善の新たな分子機構を発見
一方、PPARγは脂肪細胞において重要な働きをしているが、骨格筋における発現量は脂肪組織の10%以下であることから、その機能については不明な点が多く残されていた。
そこで筋細胞におけるPPARγ1の機能を明らかにするため、培養筋管細胞「C2C12」にPPARγ1を過剰発現させ、種々の遺伝子発現応答の追跡が実施されたのである。その結果、LPL mRNAおよびタンパク質の突出した上昇が確認されたことから、PPARγ1がLPL発現を調節する因子であることが明らかになった。
さらに研究チームは、運動時にPPARγ1発現を上昇させる上流因子の同定を試みることにし、そこで着目した因子が運動により活性化するAMPKというわけだ。C2C12をAMPK活性化剤である「AICAR」や「メトフォルミン」、AMPKを間接的に活性化する「H2O2」を含む培地で培養すると、PPARγ1mRNAならびにタンパク質の上昇が確認された。この上昇は、同時にAMPK阻害剤を培地に加えると解除されたことから、AMPK活性化によりPPARγ1mRNAが上昇することが明らかになったのである。
さらにマウスに対して3日間にわたるAICARの投与が行われたところ、やはり骨格筋においてPPARγ1、LPL mRNAの有意な上昇が確認された。