東大、運動による脂質代謝改善の新たな分子機構を発見
以上の結果より、運動→AMPK活性化→PPARγ1増加→LPL上昇の分子機構が明らかにされたのである。運動刺激により骨格筋はLPL分泌を上昇させ、エネルギー源となる遊離脂肪酸を細胞内に積極的に取り込む適応をしていると考えることができるという。
続いて、AMPK活性化によるPPARγ1発現上昇の分子機構の解析が行われた。その結果として興味深いことに、PPARγ1mRNAは通常およそ4時間の半減期で分解するのに対し、AMPKを活性化することで半減期が12時間程度まで延伸することが判明。ここで見られたmRNA安定化は、AMPK阻害剤により抑制された形だ。PPARγ1mRNAの「3’非翻訳領域」には、半減期の短いmRNAに特徴的な「AU-rich配列」が5カ所存在し、いずれもヒト、マウス、ラットで保存されている。この結果は、AMPKがAU-rich配列を介したmRNAの分解機構を抑制する作用を持つことを示唆しているという。今回の成果により、骨格筋における、運動→AMPK活性化→PPARγ1増加→LPL上昇の分子機構が明らかとなった。
AMPKは、運動のみならず食品に含まれる種々のポリフェノールなどによっても活性化されることが知られている。