「お金」に興味を持つという事 - セゾン投信・中野社長の半生記 (3) ”バブルの毒”がまわり、「運用で利益を稼ぐことがいちばん賢い」と信じる
会社は電話のやりとりだけで驚くほど儲かっていました。
今では絶対に実現不可能なことですが、当時の資金運用の世界ではこれも常識だったのです。
無論こんな無茶苦茶な運用がいつまでも続くわけがありません。
やがて損失補てんという事実が暴かれ、証券不祥事として大きな社会問題となるのですが、大きな資金力を持ってさえいれば儲かってしまう! これがバブル経済の姿だったのです。
さて、日本株が日経平均3万9千円へと右肩上がりに上昇を続けていたこの時期、多くの上場企業が資本調達を活発に行っていました。
市場での公な資本調達、つまり増資(エクイティファイナンスと言います)です。
普通の公募増資のほか、転換社債やワラントといった派生型資本調達も盛んでした。
そして論理的には増資するということは、株式数が増えるということ。
そうすると既存の株式は希薄化といって株価が下がるはずです。
ところがこの時期は増資すると必ずといっていいほど株価が上がるのです。
証券投資理論的には成り立たないことが常識になっていました。なぜでしょう? もちろんみんなが喜んで買い上げるからにほかならないのですが、ファイナンス(増資)は買い! とされていた理由は、成長という前提があったことだと思います。