「お金」に興味を持つという事 - セゾン投信・中野社長の半生記 (3) ”バブルの毒”がまわり、「運用で利益を稼ぐことがいちばん賢い」と信じる
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を皆が信じて疑わなかったこの時代、企業は調達資金を用いて成長し、その結果日本経済も成長を続けると信じられていたからこそ、株式は買いだったのです。
増資で株価が上がる! など成長期待が失せた今では、ほとんどあり得ないことです。
こうした成長期待に覆われた環境下での資金運用、それは容易くお金がお金を生むことでした。
この中で私も、「運用で利益を稼ぐことがいちばん賢いこと」と信じて疑わなくなっていました。
かつての友人の言葉「ものづくりはカタチあるものを世の中に届けられるから、仕事のやり甲斐を実感出来ると思うんだ。
」(第2回参照)は忘れてはいませんでしたが、それは別世界のことと感じていたわけで、まさに”バブルの毒”がまわっていたのです。
株価はなぜ上がるのか? それは本来その企業の行うビジネスが社会的需要に裏打ちされた付加価値を世の中に提供することで、売上があがり利益が積み上がる。
その集積が株式価値を高めて行くのです。
こうした当然の本質を、私はまったく考えることがありませんでした。
「営業特金」で一気に買い上げれば株価は上がり、売りを浴びせれば下がる。
そんな環境に居ると、相場の値動きでしか株式を見ることができなかったのです。