奥様はコマガール (38) 夫の祖父と核家族育ちの妻
しかし、チーは僕と違う見解だった。
彼女は生粋の核家族育ちで、祖父母とは数年に一回会うか会わないかぐらいのペースで生活してきた。
だから、ご老人が身近にいて当たり前という感覚はなく、彼らと接するときはある程度の心構えを要するという。
実際、チーが僕の母方の祖父(90歳近い高齢)と接しているのを見ると、その戸惑いがよくわかる。
祖父は東京の池袋に在住しているため、同じく都内に住む僕らと会う機会も多いわけだが、いつもチーは祖父とろくに会話せず、終始ニコニコしているだけだ。
「おじいちゃんと何を話していいかわからないの」とはチーの弁だ。
無理もない。
ただでさえ老人に対する慣れがないうえ、ほんの1年前に親戚になったばかりなのだ。
「おじいちゃんって、あんなにゆっくり動くんだね! 」。
これもチーの口から出た衒いのない感想だ。
確かに祖父は、歩くスピードがめちゃくちゃ遅い。10mぐらいの距離でも、ゆっくりゆっくり1分ぐらいかけて歩く。
他にも「おじいちゃんに何か話しかけられたとき、それが聞きとれなかった場合はどうしたらいい? 」「外出先でおじいちゃんがトイレに行くとき、私も付き添ったほうがいい? 」