くらし情報『岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (8) 経常収支の「赤字への転落」は心配無用。ただし「円安」には要注意(前編)』

岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (8) 経常収支の「赤字への転落」は心配無用。ただし「円安」には要注意(前編)

そのうち貿易収支の黒字は1021億円、所得収支の黒字は1兆2430億円となっています。

経常収支の赤字化がなぜ難しいのか、黒字額への寄与度が大きい所得収支について、月別の推移をもう少し詳しく見てみます。

2009年というのはサブプライム危機の影響で世界経済がここ数年で最も低迷した年です。

そこから現在に至るまでの特徴ですが、平均すれば毎月1兆円単位の所得収支の受取りが計上されています。

つまり、経常収支の赤字懸念についての結論を端的に言うと、毎月この所得収支の1兆円の受取りを上回るような海外への支払いがなければ、経常収支全体の赤字達成は難しいということになります。

通年ベースの赤字ということになれば、年間12兆円以上の所得収支の支払い、あるいは貿易収支の赤字などが必要ということです。

ちなみに第二次石油危機以来31年ぶりと騒がれた2011年の年間の貿易収支の赤字は2兆4927億円でした。2011年のような極めて例外的に貿易収支の赤字幅が増加するような事態になってもなお、所得収支の年間の黒字額を全て帳消しにすることはできなかったのです。


そう考えると、今後も通年での経常赤字への転落は現段階では考えにくいのです。

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