岩本沙弓の”裏読み”世界診断 (8) 経常収支の「赤字への転落」は心配無用。ただし「円安」には要注意(前編)
2011年の貿易収支の赤字は世界的な資源価格の高騰に加え、震災の影響から化石燃料の輸入が急激に増えたためです。
そして、昨年は円が対ドルでの戦後の史上最高値を更新し、そのまましばらく円高水準にあったため、幸運にも安く輸入資源を確保できたのは以前述べた通りです。
今後も引き続き、円高水準に留まれば輸入価格が安く抑えられます。
逆に、円安に進めば輸入価格はさらに膨れ上がり、貿易収支の赤字要因となるでしょう。
その一方で、海外から受け取る利息や配当は円安で増えることになります。
完全に相殺するとは言えませんが、円高に進めば貿易収支の赤字幅が削減される効果がありますし、円安に進めば所得収支の黒字が増える効果が期待できるため、経常収支の赤字はこういった点からも難しいと言えるでしょう。非常に大ざっぱな計算になりますが、現在海外へ貸し出している資金は日本国全体で251兆円(2010年末時点の対外純資産)です。
それを4.8%で運用できたとすると1ドル=75円換算で約12兆円の所得収支の受取りとなります。
1ドル=95円になれば15.2兆円になるので、3.2兆円所得収支が増えます。
しかし、20円円安になれば輸入価格も最低2割上昇することになります。