奥様はコマガール (52) 妻の言い訳に興味が湧いた夜
チーは先に布団に入っており、何やら頬を膨らませている。
おそらく僕が洗い物をしたという行為が、チーにはなんとなく厭味に映ったのだろう。
おまえが洗い物を明日に持ち越すって言うから、俺が洗うはめになったんだぞ――。
僕がそう思っていると、勝手に誤解しているに違いない。
それを証拠に、チーは突然切り出した。
「やっぱり言い訳させて! 」
「はあ? 」
「色々事情があって、洗い物ができなかったの。
それを説明させてほしい」当然、僕は却下した。
言い訳を聞くのは大嫌いだ。
それに、この時点での僕は別に怒っていないのに、言い訳を聞いているうちにだんだん腹が立ってきたら損だ。
しかし、それでもチーはしつこかった。
「お願い、言い訳させて! このままだと眠れない! 」と食い下がってくる。
だから僕は仕方なく「わかった。
今から俺が少し耳を塞ぐから、その間に言い訳を発散したらいいじゃん」と折衷案を出した。
果たして折衷案が通り、僕は耳を塞ぐことになった。
そしてその間、チーは胸の内に溜まった言い訳という名のマグマを、独り言として発散していく。
「●▼■×……」手で耳を塞いでいるだけのため、かすかにチーの声が漏れ聞こえてきた。