奥様はコマガール (58) 女にモテる優しい男とは一体なんなのか
飲みすぎないようにね」とわざわざ口に出したり、メニュー表を女性に向かって大袈裟に開きながら「俺は見えないけど、君が見えるならそれでいいから」とわざわざ口に出したり、女性のグラスの水滴をハンカチで拭きながら「手が濡れないようにね」とわざわざ口に出したり、とにかく優しさをこれでもかと言動に出して猛アピールする。
彼らの中には「真の優しさとはさりげなさの中にあるもので、決して目立たせるものではない」といった男の美学はまるでない。
しかし、そのぶん優しさの見せ方、気配りの表面化には長けているわけだ。
僕の個人的な美意識としては、そういう男性は苦手である。
奥ゆかしさや恥の精神がないように思え、なんとなく女性にモテたいがために、どこまでも貪欲な男という下品な印象すら抱いてしまう。
とはいえ、現実の恋愛社会には時間が足りないのか、男性が控えめな優しさをじっくり貫いたところで、そのほとんどは女性に伝わらず、自分の真の魅力に気づいてもらう前に、前述の優しさアピールくんに口説き落とされたりする。
そう、現代の恋愛社会にじっくりなんて言葉は似合わないのだ。
一生に一度しかない青春という短い期間、あるいは婚活という人生最大のプロジェクトの中で、大成功をおさめようと思ったら、どこまでも貪欲に自分をアピールする必要がある。