2012年10月9日 10:02
マネー小説 『Dekai! 出界!』 (6) 第1章(6)
ブラジルが米国の代わりになれば成長のメイン・エンジンになるでしょうが、まだまだその規模は小さい。
それを考えると……」柏木はそこまで言うと視線を落とし少し淋しげな顔つきになった。
自分の表情から結論を読み取って欲しいという態度に思われた。
その後も質疑応答は繰り返された。
特にユーロ圏の信用問題に時間が費やされ、柏木は丁寧に答えていった。
そして、話題は日本のことになった。
「ユーロ圏の信用問題もあって通貨では円が長期的な上昇傾向を続けていますが、ミスター・カシワギはこれについて、どのようにお考えですか?」「為替は本当に難しい。
どんな力学が通貨に働くかは永遠の謎と言っていいかもしれない。
でも、マネーのプロとしてそんなことを言ってはいられないですよね」柏木は笑いながら言ってから続けた。
「円という通貨を考えるには、逆説的な説明をしなくてはならないと考えています」一転、真剣な表情になった柏木にインタビュアーは小首を傾げた。「逆説的?」「為替、つまり国家が発行する通貨の価値が何によって決まるのか。
あるべき姿として、国力によって通貨の強弱が決まるとしましょう。
すると、円という通貨を発行している日本という国の国力は強くなり続けていることになりますね。