【エンタメCOBS】もしも科学シリーズ(10)もしもブラックホールに落ちたら
ブラックホールに吸い込まれた宇宙船が、時空を超えて再び現れる。SF映画では定番のストーリーだが、実現可能なのか?
ニール・ドグラース・タイソン博士の著書「ブラックホールで死んでみる」では、ブラックホールに落ちるのが宇宙で最も華々しく死ぬ方法と記されている。そのプロセスは残酷で、仮に録画できたとしても、とても放映できない死にざまだ。
■素粒子と化す自分
ブラックホールは、その中心に向かって強大な引力がはたらく領域だ。ホールの名から誤解されやすいが、何でも吸い込む穴ではなく、着陸したら2度と脱出できない天体と考えるとわかりやすいだろう。宇宙との境界線である「事象の地平線」の内側に入ってしまうと光すら脱出できないのがブラックの由来だ。
天体からの脱出に必要なエネルギーは、その天体の質量・重力が大きく、直径が小さいほど多くなる。計算式は省略するが、身近な天体からの脱出に必要な速度は、
・地球…11.18km/秒
・月…2.38km/秒
・太陽…618.02km/秒
だ。
秒速11.18kmはおよそ1時間で赤道を1周する速さだから、地球脱出でさえ膨大なエネルギーが必要である。この2万7千倍にも及ぶ光速(秒速30万km)