恐ろしく素敵に騙されたい 【TheBookNook #16】
というか、身近な人がそうなったときに私は隣にいてあげられるのだろうか。“絶対的”なものなんてあるのだろうか。読後は、そんな救いようのない不安に煽られると同時に今生きている自分を抱きしめてあげたくなりました。
タイトルの“変身”が何を意味するのか、何も意味しないのか、その捉え方は三者三様ですが、それこそがこの作品の魅力であり、長く読まれている最大の理由だと感じています。
因みに新訳版では70ページに及ぶ訳者解説もあり、別角度でも楽しめます。難しい内容のように感じますが、作品自体は短く文体も読みやすいので、ぜひ。
■繰り返し読んで、本の世界のさらなる深淵へ
いかがだったでしょうか。決して万人受けするとはいえない奇妙な三作品ですが、始めは理解できなくても、ぜひ、繰り返し読んでいただきたいのです。
一度目で感じた感情と全く異なる感情が生まれて戸惑うこともあるかもしれませんが、それこそ読書の醍醐味。読めば読むほど、寄り添えば寄り添うほどに、きっと人生の大切な一冊に巡り会えると思います。
虚構と分かりながらもそこに順応していく、素敵に騙されていく、本の世界は騙されたもの勝ちです。