映画化しても衰えない奇才/鬼才な主人公たち【TheBookNook #29】
これまで私が読んできた東野圭吾作品とはいい意味でまた違った世界観をもっていて、読後の印象が今も強く心に沁みついています。
物語はDNAからプロファイリングをするシステムと、それを巡った事件を描いたSF推理サスペンス。登場人物のキャラクターが強いなとは感じていましたが、読後、映画化を前提に書き始められた物語だと知って腑に落ちました。
ただ、原作と映画、かなり違うのです。決定的に違うのは、原作ではメインの事件が「連続婦女暴行事件」なのに対し、映画では「連続幼児誘拐事件」だということ。他にも教授の性別が変わっているなど、いくつかありますが……そう、とにかく本作品は、原作と映画でかなり違います。
でも、それでもなお、主人公の放つ力は偉大で、本を読むように映画を楽しむことができました。これは10年以上も前の作品。
時が経った現代はDNA鑑定が当たり前となっているからこそ、あと少し、もう少し先の未来では、本当に国民全員がDNAで管理される時代が来るのかもしれない……と、急に空恐ろしくなりました。ひと言で言うと、SFを感じさせないSF作品とでもいいましょうか。すべてを知り得ないから惹かれる……知ってしまえば愛は終わる。