映画化しても衰えない奇才/鬼才な主人公たち【TheBookNook #29】
東野圭吾、さすがです。余談ですが、原作のエピローグの最後が個人的には大好きです。
2. 貴志祐介『青の炎』
「問題は、自分に、そのリスクを取れるかどうか……」。2003 年に映画化された本作品。この作品は、ホラー小説家としてデビューした著者が4作目にして挑んだホラーテイストのない倒叙ミステリー作品。主人公は家族の平穏を守るために完全犯罪に手を染める17歳の青年。なぜ殺さなければならないのか、他の選択肢はなかったのか、そんな疑問をこちら側に一切もたせないほど感情移入しやすい状況を作り、私たち読者を平気で物語の奥深くに引き込んでいきます。
その面白さから映画化されるのが透けて見えるような作品で、期待していただけに残念……とはまったくならず、個人
的には映画もかなり期待以上。
主人公の彼女の性格が大きく変わっていたり、原作にない場面が映画に追加されたりもしていますが許容範囲ですし、その他はほぼ原作に忠実に描かれています。
完全犯罪と謳うくらいですから、戦略を練る場面や実行に移す場面がもちろんあるのですが、そこでの心情の描き方が原作でも映画でもお見事。読者の文字を追う、もしくは映像から受け取るスピードが、まるで主人公の鼓動の高鳴りと連動するかのように速くなっていきます。