本選びのすゝめ【KADOKAWA編】【TheBookNook #30】
脳の指令なのか、自分の意思なのか、自分の行動がたまに制御できなくなってしまったり、怒り、悲しみ、喜びなどの感情を読み取ることが難しく、今を生きるだけで精一杯……裁判官なのに。
そんな彼が不確かな中から真実を見抜くのです。彼だからこそ見える世界や、感じることの語彙が胸に……いや、喉に刺さります。魚の小骨のように簡単には取れてくれません。
症状が出始めると読み手であるこちら側まで鼓動が速くなりますが、周りの人たちが少しずつ味方になっていき、最後の最後には、明確ではないけれど確かに、心のどこかにポッと灯りが見えたような気がしました。不確かに、確かな灯りが。
2. 浅倉秋成『家族解散まで千キロメートル』
家の片付けの最中に、倉庫から出てきた見知らぬ仏像。ニュースで流れていた青森の神社から盗んだご神体にそっくりの“ソレ”。
父の犯行を確信した家族が千キロメートル先の青森を目指す……。
このあらすじを聞いて、今、あなたが抱いた感情、想像できた結末、それらを遥かに上回る、疑心暗鬼の恐ろしい家族ドライブが始まります……。
結婚する姉と完ぺきな夫、お金命の兄、迷惑しかかけない父、無の母。……え、この一家、普通じゃない……? 普通の家族って、なんですか?
気づかないレベルで張りめぐらされた伏線の回収や読ませる力、文字の上で転がされる感覚。