本選びのすゝめ【KADOKAWA編】【TheBookNook #30】
これぞ浅倉秋成先生。
特にこの作品では“家族”とはなんなのかという問いを私たち読者の脳裏に頼んでもいないのに深く埋め込んできます。
次々と家族を襲う事件。解決への疾走。こじれる疑念。シリアスもスリルも笑いもあり、特に前半は読みやすいのですが、後半、物語が目まぐるしく二転三転して、ようやく着地したかと思ったら……。
価値観と物語がふたつともひっくり返るダブルどんでん返しは初めての読後感でした。読み終わったら、表紙の絵にもう一度だけ目を向けてみてください。
3. 岡部えつ『怖いトモダチ』
この表紙は小説版ではなく、漫画版のものです。
「彼女はいい人?それとも……悪魔?」
この作品のテーマは自己愛性パーソナリティ障がい。その特徴は自尊心が驚かされると攻撃をする、自分を正当化するためなら嘘もつく、己を褒めて貰えるように上手く仕向ける、などなど。
あれ、もしかして、思い当たる節がありますか……?ある人はその人を崇めて、ある人はその人をサイコパスだと憎む。人によって正反対の印象をもたれる“彼女”を軸に物語はじっとりと体内に纏わりつくように進んでいきます。
作品としてわかりやすく障がいと“ソレ”を重ねていますが、本当にそれだけなのでしょうか。