本棚に置いておくのも忌まわしい物語を想う……【TheBookNook #32】
文:八木 奈々
写真:後藤 祐樹
読んでみたはいいものの、想像以上に読後の不快感が残り、後悔した……。そんな経験はありませんか?
読後に物語の一節がやけに頭に残っていたり、忘れたい描写が色鮮やかに思い出されたり、面白いが故に恐ろしくリアルに感じてしまうホラー、ミステリー、トラウマ作品を紹介させていただきます。
もう二度と読みたくない読書体験で、一緒に後悔してみませんか…?
1. 李琴峰『生を祝う』
出産=幸せ……ではない。新しい命が誕生することは必ずしも幸せなんてことはない。
人間はこの世に生まれた時点で人生という名の無期懲役だ。誕生の意思は親ではなく子供に確認するべきだ。
“合意出生制度”。胎児に遺伝や環境などの要因から“生存難易度”が伝えられ、本当に生まれるかどうかの判断が委ねられる近未来の制度を軸に物語は進んでいきます。
もし、出生を拒んだ胎児を出産した場合、親は罪に問われる。我が子に会いたくてたまらない母親に突き付けられる出生拒否。
冷静に考えればあり得ない設定にも思えますが、技術さえ追い付いてしまえば実現してしまいそうな生々しさと説得力があり、半ば強引に物語に惹きこまれていきました。