物語ってあたたかい…肌寒い季節に読みたいほっこり作品【TheBookNook #34】
そう、これは諷刺作品でもあるのです。
私も10数年ぶりくらいに再読しましたが、大人になって読むからこそわかる皮肉とユーモア、そして怠慢と無関心の恐ろしさ。冷静と興奮が隣り合わせに描かれていくのが妙にリアルで、読みながら何度も声が出てしまいました。
こんなに良くも悪くもワクワクしたのはいつぶりでしょうか。たかがチョコレート、されどチョコレート。「すべての人に、自由と正義とチョコレートを!」
3. 江國香織『とるにたらないものもの』
日常で使用する何気ない“モノ”にも自分だけの記憶や想いが潜んでいると思うと、なんだか愛おしく感じませんか……?
本作は石鹸、フレンチトースト、書斎の匂い、輪ゴム、ゆで卵など……とるにたらないけれど暮らしの中で欠かせない“モノ”への愛おしさを綴った短編エッセイ集です。
江國香織さんの特有のユーモアセンスと、読み手にも温度が伝わる有形無形の“モノ”への愛着。見慣れたものからささやかに送られるメッセージと、それに囲まれて生きる安堵感がきっと貴方にも蘇るはずです。
“エッセイ”という括りにとどめておくにはもったいないほど詩的な作品で、作中の言葉が少し古臭い感じもとても好き。