「私がおしっこする瞬間を見てほしい」 映画『娼年』が描く性的嗜好の多様性
リョウが女性に対し、どんなセックスをするのかを見て、クラブで働いてもらうかどうかを決めるのだ。
咲良は生まれつき耳が聞こえない。静香という傍観者がいる前で、リョウは戸惑いながらも、咲良を抱く。体への触れ方がときに雑だったり、痛がる咲良への配慮が足りなかったり、未熟と言ってもいいセックスだったが、なんとかギリギリ合格したリョウ。
セックス中に言葉を交わし合うという、自分が慣れ親しんだコミュニケーションができないなか、リョウは不器用ながらも咲良の反応を目で追い続けて、そこから情報を得ようとしていた。
クラブに所属するホストの一員になったリョウは、指名される度に女性客との待ち合わせ場所へ出向き、話(要望や雑談など)を聞いて、ニーズを理解した上で、一人ひとりが望む形のセックスを提供するようになる。ときどき交わされる静香との会話や女性たちとのコミュニケーションを通じて、女性という性の奥深さやセックスが単なる運動ではないと悟るのだった。
彼女たちがお金を支払ってホストと肌を合わせる理由は一人ひとり異なっていること、それぞれが性に関して悩みや悲しみを抱えていることをリョウは目の当たりにする。
そして、一人ひとりの心に優しく寄り添うのだ。