「私がおしっこする瞬間を見てほしい」 映画『娼年』が描く性的嗜好の多様性
『娼年』では丁寧に描かれたセックスシーンが続く。
夫に彼女がいる女性。
妻が他の男性とセックスする様子を見たいと望む性的に不能な男性(実は不能ではなく、「寝取られ」が趣味な男性だと判明)。
夫とセックスレスの女性……。
性的に満たされたくても満たされない女性たちの姿が描かれ、皆それぞれ性に対してしんどさを感じ、もがいているのだなと感じさせられる場面ばかりだ。
■女性がおしっこする瞬間を見届ける
ひとつとして同じセックスはない。人それぞれ性的嗜好が異なるから、すべてのセックスには個性がある。リョウはそれらを肯定も否定もすることなく、ただフラットに受け入れて、女性たちと向き合ってきた。
「放尿する瞬間を見られることでエクスタシーを感じる」という女性とも真摯にコミュニケーションを交わす。
彼女はリョウに勇気を出して打ち明けた。私がおしっこをするところを見ていてほしい、と。過去に付き合った男性に頼むと大抵引かれ、気持ち悪がられてきた。「リョウくんも引くかもしれない」という彼女の不安を打ち消すように、リョウは「見せてください」と言う。
居間に立ったまま、彼女はリョウの前で勢いよく放尿し始める。