『戦火の馬』スティーブン・スピルバーグ監督 インタビュー
イギリスの作家マイケル・モーパーゴの同名小説を基に、戦火に引き裂かれてしまう少年と馬の友情の行方をドラマチックに描いた『戦火の馬』。監督を務めたスティーブン・スピルバーグに、映画完成までの道のりを聞いた。
●この物語をどうやって映画として描こうと考えられましたか?あの小説(もちろん舞台版を見た時にもインスピレーションを受けていますが)から私が真っ先に採用したのは、とても厳しく容赦のない地主によって苦境に立たされている家族が、この農場を続けるためには時間が足りないというアイデアでした。酔いどれ状態の父親は農場を救おうと農耕機を引かせるための馬を買います。しかし、彼が買ったジョーイという名のウォームブラッド(アラブ馬とポニーの交配種)は農耕機を引ける状態ではなかった。あの種はそういう作業には向いていないのです。こういう肉体労働をするタイプの種類ではなかったのです。
しかし若い息子のアルバートはこの馬に強い信念を持っており、ジョーイと深い友情の絆を築きます。
そして共に力をあわせて、少なくともこの農場を救おうと、石だらけで不毛の土地を耕します。第一次世界大戦でこの馬が役畜として従軍するため戦争に送りだされて離れ離れになる頃には、相乗作用と本物の感情のこもった共同関係が彼らの間に築かれていました。だからこそ観客はその時点で、いつか必ず再会する運命の日がやってくるだろうと確信できるのです。そして少年と馬にその運命の日が訪れる。そこがこの映画のちょっとした魔力のようなものになっています。
●アンサンブル・キャストは、どのような形で進めたのですか?『戦火の馬』は少年と馬の物語だけではありません。『戦火の馬』は、数多くいる様々な人々を描いた物語なのです。私がこれまで手がけた中で、もっとも満足のいくアンサンブル・キャストの1つとなりました。
アンサンブルとは言いながらも、同じシーンで絡むことは実際にはほとんどありません。しかし全員が一緒だという印象は残るのです。あれほど多くの役者たちが、一緒に演じる機会がほとんどなかったにもかかわらず、全身全霊を投げうって取り組んでくれたことを誇りに思っています。
●フランスの農場におけるエミリーと彼女のおじいちゃんのシーンの重要性について教えてください。舞台版ではフランスの農場シーンに大きな時間を割いています。私は舞台版ほどの時間は割きたくないと思っていましたが、同時に、ジョーイとトップソーンが海外で多くの経験をする様子を描くことは必要です。それは当時実際に起こっていた事実でもありますからね。
私はフランスの農場を戦争からの逃避地と考えています。
ちょっと小休止して、戦場からはほど近い場所であっても、観客も馬たちも一息つけるような場所ですね。また、あの少女がジョーイと結ぶ友情は、アルバートとジョーイの関係にとても似ています。ジョーイは、彼を心から世話してくれるこの小さな少女を通してアルバートを思い出しているようです。
作品情報『戦火の馬』
配給:ウォルト ディズニー スタジオ ジャパン
大ヒット公開中!
(C)DreamWorks II Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.