あの有名な猫に会える!~この秋のお薦めの2大展覧会
空が高く、木々が色づき、凛とした透明感のある大気に身を任せていると、どんな都会であっても、移ろう自然の美しさに気づかないわけにいきません。日本の秋を愛でるなら、山野もいいけれど、美術館で、“心に染み入る秋”を、さらに深く感じてみませんか?
東京国立近代美術館で開催中の「
菱田春草展」は、明治時代を代表する日本画家、春草の生誕100年を記念し、100点余の作品を集めた大回顧展。世田谷美術館での「
北大路魯山人展」は、書、篆刻(てんこく)、陶芸、絵画、漆芸、そして、美食家としても著名な彼の作品が約150点、一堂に展示されています。この秋、お薦めの展覧会を二つご紹介します。
重要文化財《黒き猫》はじめ“猫作品”と《落葉》連作が勢ぞろい東京メトロ東西線の竹橋駅から地上に出ると、都会なのに広々とした空に包まれ、思わず深呼吸しながらお堀を渡ったら、そこが
東京国立近代美術館です。お目当ての一つは、近代日本画で最も有名な猫と言える、
重要文化財《黒き猫》を含む、猫作品たち。一度に会えるこの貴重な機会は、猫好きはもちろん、そうでない人にも必見です。
本展では、白、ぶち、別の黒猫なども集まり、さながら猫の集会のよう。実際に猫たちと目を合わせると、ふわふわでモフモフしたくなる毛並み、今にもピョンと動きだしそうな背中が本当にリアルで、もう目が離せません。
重要文化財《黒き猫》は、この作品がなければ、竹久夢二や速水御舟が「黒猫」を描くことはなかったかもしれないと言われるほど、後世の画家たちにインパクトを与えました。この《黒き猫》は、10月15日から(11月3日閉会まで)の限定公開です。
36歳で早逝した春草は、亡くなる少し前に眼病を患い、絵を描くことはドクター・ストップに。やっと許されて描き始めたのが、武蔵野の雑木林の
《落葉》でした。深い色合いと明るい色合い、遠近のバランスが微妙に異なる《落葉》連作からは、秋がしみじみと伝わってきて、ずっと眺めていたくなります。