31音にこめられた恋愛模様 21世紀の女性歌人たちがつむぎだす短歌
5・7・5・7・7の31文字で表現する、世界でいちばん短いポエム。それが、短歌です。短歌のルールは、自分の思いを31音で表現するということだけ。その決まりごとさえ守れば、何を詠むのかは自由です。
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よく、「短歌って、花鳥風月を入れるんでしょ?」ときかれます。おそらく国語の教科書に載っていた『万葉集』や『百人一首』の小むずかしいイメージが抜けないせいでしょうが、そんなことはありません。家族や恋愛、仕事や時事問題など、短歌はジャンルを問わないのです。
短編小説をよむように、絵本を開くように、簡単に楽しめる短歌の世界。
多くの短歌のなかから、21世紀を生きる女性歌人たちの相聞歌(恋愛の歌)を紹介しましょう。
■ドラマチックな展開を予想させる博物館での逢瀬
「触つてはいけないものばかりなのに博物館で会はうだなんて」山木礼子(『短歌研究』2013年9月号)
博物館に展示されている作品には、「お手を触れないでください」と書かれています。遠い昔に使用していた道具や、泥のなかから発掘され、研究対象として保管されている貴重な品々…。うっかりさわるとこわしてしまうこともあります。
そんな、「触つてはいけないものばかり」の展示室での逢瀬は、これからどのように発展していくかわからない恋愛模様を、ドラマチックに表現しています。
山木礼子は、この歌をふくめた連作30首「目覚めればあしたは」で、第56回短歌研究新人賞を受賞しました。当時25歳でした。